暗い森を抜けると、その先には白く長い髪を黒と青のリボンで結んだ、炎のような赤眼の女性がいた。辺りは草原、いくつかの道が分かれその道の真ん中でおろおろと落ち着きなく右往左往している女性の姿は異様といえば異様なのであった。
 そして、女性はアリスに気がついて近寄ってくると、情け泣く眉を下げたままアリスに話しかけた。
「あなた、お茶は好き?」
「お茶?」
「この道の向こうでお茶会があるの。この招待状を持っていくと、出席できるわ」
 そう言ってまっさらでキレイな封筒を、アリスに渡した。蜜蝋(みつろう)で閉じられた封筒をまじまじと眺め、アリスは喜んで、と言うように微笑んで受け取った。
「よかった!あなたは命の恩人です!」
 おかしなほど喜ぶ女性を見て、アリスは笑いをこらえて、問う。
「あなた、名前は?」
「私は…」
 女性が名乗ろうとしたとき、道の向こうから声が飛んできた。
「――どうしたんだ、大丈夫か」
 その声に驚いたのか、女性は奇想天外な奇声を発した。
「うひゃぁっ!す、すみませぇぇん…。だから食べないでくださいぃ」
「食べる?」
 怪訝そうな顔をしたアリスと女性の元に歩いてきたのは、女性にも負けず劣らない銀髪の、ボサボサの前髪と後ろのほうで雑に束ねられた、赤の目つきの悪い青年だった。年は、女性と変わらないほどだろう。
「ちょっと、食べるってどういうことですか?」
 女性を庇うように前に進み出ると、アリスは強気に言った。すると、青年は呆れたような気の抜けたような、諦めたようなため息をついて女性の頭を軽く叩いて、言った。
「また変なことを!俺はオオカミじゃないと、何度言ったらわかるんだ!」
「ふぇぇん…。ごめんなさぁい…」
「わるかったな、おかしなことを言ったらしくて。えーと…」
「お、お詫びにお茶でも!ね、デルさん、それがいいと思います。招待状を今、渡したところで…」
 事情を説明すると、デルは呆れたように女性をにらみ、それからくるりと向きを変えて今来た道を戻っていった。ついて来いというように、手をひらひらと振りながら。
 すると、女性もアリスを呼びながらデルの後をついていく。
「いきませんか…?」
 不安そうなか細い声で、女性は言う。
「あ、はいっ」
 元気に飛び跳ねながら答えるアリス。
「遅い!」
 苛立ちながらも歩いていくデル。
 三人とも全く違う性質であるのにもかかわらず、どこか似た雰囲気があるように思えた…。

 お茶会場にいくと、数匹の動物たちがいて、白いテーブルクロスがかけられたテーブルを囲んで小さな椅子に座っている。テーブルの上にはティーカップとソーサーがそれぞれセットで置かれていて、その横にはケーキが一切れとクッキーが二枚ずつ皿に乗せておいてあった。そして、まるでアリスがくることを予知していたかのように三脚の大きないすが置いてあった。一つはデル、もう一つは女性の、最後の一つはアリスのものだと考えると、ぴったり数が合うのだった。勧められていすに腰掛けると、そこから何匹もの動物たちの表情を見て取ることが出来た。殆どのものは喜んで笑っていたり、そうでなければずっと雑談、井戸端会議を続けているだけだ。
「お茶です。今日はローズマリー・ハニーティーです」
 そういって一つずつティーポットから紅茶を注いでいき、それぞれ聞くこともなく相手の砂糖やミルク、レモンをつけていく。適当においているのではなく、客の好みをすべて覚えているらしく、どの動物たちも満足げである。
「あなたは、何を入れるの?」
「私、ミルクを」
「はい、どうぞ」
 小さなミルクのカップをソーサーに添えるように老いて、また別の動物たちに渡しに、歩いてまわる女性は、まるでメイドか家政婦のようだった…。
 しばらくして、隣の席に座ったのはデルだった。
「…悪かったな。あいつ、いつもああで」
 動き回る女性を見ながら、デルは目を細めた。いいながらも、出る葉彼女が頑張って働いている様子を嫌には思っていないらしく、その表情はそう暗くない。
「デルさん」
「ん?」
「もしかして、帽子屋って…」
「ああ、俺のこと。実際、帽子を売ってるわけじゃないけど」
「へぇ…」
 なら何故帽子屋なのか、とも思ったが、言わないで置いた。対して大きな問題でもないと思ったからである。
「そだ、アンタ、名前は?」
「私はアリス。よろしくね」
「ん」
 短く答えて握手もせず、立ち上がるとティーカップを持ち上げていった。
「それでは、お茶会を始めましょう!ルールは唯一つ、楽しむこと!」
 会場は一気に沸き立った。
 それから砂糖やミルクを配り終えた女性がアリスの隣に座ると、女性はアリスの手をとって、微笑んだ。
「久しぶりに人に出会った気がします!」
 しかし、そのままアリスは、女性の胸へと倒れこんでいた…。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

Fairy tale 13

こんばんは、リオンです。
段々自分が何なのか分からなくなってきました。
アリスって書こうとしたり鏡音レンって書こうとしたり、
趣味で書いてるオリジナル小説のキャラクターの名前を書こうとしたり。
さてさて、私の名前は一体何なんでしょうか。
あ、今回から帽子屋です。
帽子屋はデル君です。デルさん好きなんですよねぇ♪
性転換亜種もカイト`sもいいですけど、デルハクも可愛いですよねっ!

閲覧数:310

投稿日:2010/03/03 23:04:11

文字数:2,004文字

カテゴリ:小説

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  • 流華

    流華

    ご意見・ご感想

    帽子屋さんはデルさんですね☆
    えっと、ハクが何の役か気になります♪

    デルさんって最近知ったんです…。
    友達に画像もらってその時に「このキャラ誰?」って聞いたら「わかんない」ってかえされて………
    関係ないですね……。ごめんなさい。

    2010/03/04 00:00:15

    • リオン

      リオン

      帽子屋はデルさんですよ♪
      ハクもちゃんと役があります♪

      ああ、そうなんですか。ハクさんに比べるとデルさんは知名度低いですもんね…。
      この二人がもっと広く広く広まってくれればいいのに…。

      2010/03/04 18:15:07

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