五枚目:
私は死んだ。
木製の椅子と一本の太い縄を用意して自分を殺したんだ。
勿論、自業自得だよ。
自分でしたことなんだから、後悔したって意味が無い。
でもね、私の葬式の時に見ちゃったんだ。
今まで虐めてきた同級生達が、私の名前を呼びながら泣いてるの。
正直私は、反吐が出た。
だってさ、泣いてるフリして笑ってるんだよ?
命の尊さとか語り出したかと思えば、
自分には関係ないといった表情をして…
でさ、その中の一人がボソボソと呟いてるの。
「ざまぁみろ」って。
もう、何も信じれないよ。
その子はね、私の両親に友達だって話してたけど、
両親も嘘だって気づいてないんだよね。
でさ、その両親も、私に対して冷たかったんだ。
子供を子供と思っていないというか、
お前が不幸なのはお前のせいだって。
お前が変わらないからいつまでも虐めは続くんだって。
環境のせいにするなって。
逃げてるのはお前だけだって。
二言目にはお前よりも辛い人はいるってさ。
私もね、そう思ったよ。
私が全部いけないんだって。
私のせいで自分以外も不幸にしてるんだって。
頑張って…いや、私は頑張ってなんかいない。
周りはみんな、私以上に努力していて、
私の頑張りなんてどうせ大した事じゃない。
学校行って勉強したり、
バイトで稼いだお金を全額親に渡したり、
家の手伝いをしたり、
大学を諦めて就職しようかと悩んだり。
でもそれって、みんなしてる事じゃん?
知ってるよ。
私だって、私以上に苦しい思いをしている人達を無視してたもん。
朝のニュースで、私よりも歳下の子が自殺をした話が流れても、家を失くしたおじさんが公園のベンチで寝ているのを素通りした時も、
心の中で同情しつつも、
周りみたいに、見ないふりをしていた。
だからかな?
神様にまで嫌われたのは。
いや、結局それも言い訳だ。
人のせいにしているだけだ。
自分の間違いを正当化したいだけだ。
自分以外からは、そう言われるに違いない。
分かってるよ。
あぁ、私って可哀想。
そう言いたいだけだろって言われたらさ、
もう何も言い返せないじゃん。
死んだ後ね、警察が家に来たんだ。
黄色いテープの外からは、
スマホを片手に群がる野次馬達。
そして家の方を見ながら、
助ける事もなくガヤガヤと騒ぎ立てている。
当然、彼らには私を同情する気持ちなんてなく、
可哀想なんて微塵も思っていない。
あるのは自分じゃなくてよかったという安心感と、
それがもし自分だったらという恐怖。
私一人が死んだところで自分達には関係ない。
そうやって目の前の現実から目を背ける。
そして、三日もすれば綺麗さっぱり忘れる。
そして、世界は変わらず動いている。
まるで、
私という存在自体が初めからなかったかのように。
結局さ、
私って周りからしたらその程度の人間だったんだよ。
「ごめん、やっぱり私、できなかった…
自分の夢、叶えられなかった…私には、無理だったよ…」
これが私の最後の言葉だった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
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名無しの手紙(五枚目)

閲覧数:33

投稿日:2023/02/09 14:01:03

文字数:1,246文字

カテゴリ:小説

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