大きな家が立ち並ぶ住宅街の中で、一際大きな門が見えた。その前に数人の人影と、倒れている例の悪趣味な黒BSが見える。

「お前達…!無事か?!」
「…っ!雨音博士!」
「おい律…どう言う事だ?騎士の実家ならここにいるのは剣一おじさん…【MEM】
 の創設者である奏所長だろうが。その所長が何故こいつ等に襲撃される?」
「…判りません…しかし…。」
「啓輔君?啓輔君か…?」
「おじさん!ど、どうしたんですか?!その姿は…!!」

変わらない姿だったせいか、剣一さんは直ぐ俺に気付いてくれた。しかし一目で判る程やつれてしまっている。明らかに様子がおかしかった。

「所長…これは一体…?」
「済まない…私は…私は何も気付かなかったんだ…!ごほっ…ぐふっ…!」
「所長!一度中へ…!手を貸してくれ!」

咳き込んで倒れ込んだ剣一おじさんを抱えると慌しく家に入った。俺が小さい頃から行っていたのは当時騎士達が住んでいた別宅の方だったので、本宅に入るのは実は初めてだった。家の中はしっかりとした日本家屋でまるで旅館の様に落ち着いている。

「明らかに衰弱状態ですね、過労も見られます。」
「目が覚めてから事情を聞いた方が良いな…ただ事では無さそうだ。」
「ええ…。」
「…それにしてもよく知ってたな、此処が奏家の本宅だなんて。」
「………。」
「博士?」
「啓輔さん、少し良いですか?お話があります。」
「?ああ…。」

静かな瞳の律はそのまま躊躇い無く歩き始めた。何処へ行けば良いのか判っているのかしっかりした迷いの無い足取りで。やがてドアの前でピタリと止まり中に入った。シンプルな家具にベッドに数枚の写真…。

「…ここ…騎士の?」
「ええ…勝手に入るのは少々失礼ですが、貴方に見て欲しい物があります。」

律は本棚から少し色褪せた一冊の本を差し出した。

「…日記…?」
「はい。」

俺はその日記を手に取り、そのページを捲った。

ライセンス

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  • この作品を改変しないで下さい

BeastSyndrome -83.絆を紡ぐ者-

そして彼は知る

※0話裏、の日記帳とリンクしています。
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投稿日:2010/06/30 00:14:19

文字数:814文字

カテゴリ:小説

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