「来ましたわよレオナルド、女王陛下」

 さきに姿を現したのはイザベラであった。どうやら彼も入浴後だったそうで、自らの手で乳液を顔に塗りながら入ってきた。寝間着は筋肉質な肉体美を強調させる上下スパッツ姿へとなっており、彼が入るとラベンダーの香りが部屋のなかに漂っていた。

「女王陛下。お城勤務後にレオナルドの部屋へ我々をお呼びだとは、珍しいではないですか」

 次に入ってきたのは、シルバーフレームの角眼鏡を掛けた魔術師ダニエラである。彼はまだ、仕事用の魔導士服を着ていた。

「すまぬな2人とも。イザベラはお風呂のあとで、ダニエラは……なにかしておったのか?」

 リアーナはダニエラが職務中の姿だったので、自宅で何をしていたか気になってしまう。

「はい、女王陛下。このダニエラ、夕飯を食べたあと、ペットのエマにもゴハンをあげておりました。最近、購入した百味ラットなるアイテムを食べようね〜っとエマに語り掛けながらです」

「また、そちはエマの名をだしておるのか!」

「そうです。頭を撫でてあげながら、エマと話すのが帰宅後の楽しみなのです。あぁ〜っ、エマ……君はなんて可愛いヘビなんだ」

 ダニエラはペットのエマを溺愛していた。ヘビを相手に話すほど、ダニエラのエマへの溺愛ぶりに他の3人は引いてしまう。
 そこまでして、ダニエラがエマを大切にする理由(わけ)をイザベラは知っていた。リアーナとレオナルドの2人へ、静かな声色を使い話していく。

「女王陛下、レオナルド。ダニエラはね、魔導学校時代に付き合っていた彼女がいたの。その彼女の名前が、エマってゆう お名前なのよ……」

「ダニエラさん、危ないレベルを超えちゃってるよ」

「危ないとか言う問題ではないぞレオナルド。一歩間違えれば、あやつはストーカーじゃ!」

 女王と召使。双子の姉妹は仲間が持つ、隠れた一面に寒気がし鳥肌を立てていた。

「さあて…わたくしとダニエラを呼んだのは、モンハンが目的では……ないようね?」

 逞しい胸板の前で腕を組みながら、イザベラは質問した。三大魔術師であるミスティークたちを、召使の住む部屋に集めたことについてだ。

「ぼくから皆に説明するよ。夕方から女王の命令で、カムパネルラさんを監視してたんだ。それで夜になってから、カムパネルラさんは教会の鐘塔に居たのを見つけた。気になったから、ぼくはバルコニーの屋根に留まるカラスたちに紛れて監視を続けていると……」

「鐘塔で、君はなにかを見たってわけだね」

「そうさダニエラ。カムパネルラさんは、暗い影になったヒトと話をしていたんだ。その影はなんて言うか…存在が薄暗くてよく解らなかった。けど……その影から底の知れない恐怖をぼくは感じたんだ」

「レオナルド……それは恐らく、伝説の通りなら」

「悪意ノ闇のことじゃ、イザベラよ」

 リアーナはレオナルドが説明した暗い影の正体について、皆に悪意ノ闇であると──はっきり伝えた。

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投稿日:2020/03/01 00:58:47

文字数:1,240文字

カテゴリ:小説

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