いきなり理不尽に解散宣言をされて医務室にポツンと残されてしまった。実際学校からは近いので困る訳では無かったがあからさまに杜撰な扱いされるのもいい気分はしなかった。
「大丈夫なのか?お前みたいなガキで。ま、代役なんてそんなもんか。」
ベッドの軋む音と共に聞き覚えの無い声がした。入った時に寝ていた奴だった。俺より随分背が高くて悔しいが見上げる形になった。
「急に何だよ?てか、アンタ誰?」
「調理師学科の真壁鈴夢、コードネーム『SweetsHouse』宜しくね~ボクちゃん。」
薄ら笑い且つ思いっ切り馬鹿にした口調でわしゃわしゃと頭を掻き撫でられ無性に苛立った。首を振って手を振り払うと踵を返し医務室のドアを開けた。と、背中に声が投げられた。
「あの金髪の子は気付いてたみたいだぞ?」
「はぁ…?」
金髪の子…多分に乳女…じゃない、倉式の事だろう。気付いてた?一体何の事だ?帰ろうとした足が止まっていた。憮然とした顔で向き直ると、指でちょいちょいと合図をした。ドアを閉めろと言いたいらしい。いや、普通に言えよ!
「ライオン…。」
「は?」
「ライオンが一番苦労する事って何だと思う?」
いきなりクイズ?何なんだ?馬鹿にしてるのかいちいち言い方が気に喰わない。目を逸らしたままで居るとヌッと目の前に携帯が突き出された。画面にはあのゲーム用のサイトが映し出されている。
「んなもん見せんなよ!」
「馬鹿か、よく見ろ、ほら。」
指差した場所にはサイトのアクセスカウンターがあった。と、そのスピードがまるでストップウォッチの様に上がっているのが見えた。ギョッとして数字を見ると4万を超えている。サイトが公開されたのがいつかは知らないがこんなに早く上がるのはおかしいと俺でも解った。
「ライオンが一番苦労するのは獲物を探す時だ。」
「え…?」
「10代の、しかも皆それなりに可愛い女の子が9人も写真付き公開。言わば狼の群れの中に子羊投げ込んだも同然だな。」
「ちょ…これヤバイんじゃ?!」
「だからそう言ってんだろ。ま、カウンター上がってんのは今頃サイトハッキングでも試みてる輩が居るんじゃない?」
背筋がゾワリとした。中身はどうあれ確かに9人とも見た目は悪くない。それがこんな風にネットに出ていたら確かに善悪問わず人が寄って来る事は容易に想像出来る。
「敵さん結構狡猾だよね。これであの子等も俺等も逃げられない。何せ周りの連中皆が敵になっちゃったみたいなもんだから。」
「マジかよ…。」
暑くないのに汗が一筋落ちた。
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