好きなものに名札をつけて
棚に並べて眺めていた
奥にしまった箱の中には
埃を被ったあの日の欠片
どうしてか捨てられなくて
どうしても捨てられなくて

嫌いになったわけじゃないけれど
色褪せる思い出もあるもので
楽しさだけを心に刻んで
何が楽しかったかを忘れてしまって

セピア色した思い出は
あの日は確かに宝だった
「またね」と蓋をした箱は
二度と開かずに日の目も見ずに

好きだったよと語るには
もう記憶も知識も薄れてしまって
箱の中身を覗かなければ
そのまま鍵をかけてしまえれば
いつまでもそれはただの
ガラクタだったと
気づかないでいられるのかな


大切に磨き上げてきた物の
価値を知るのは僕だけでいい
「あんなもの」とただ捨てるには
随分そこに浸りすぎたよ


好きなものに名札をつけて
これこそが幸せだと眺めていた
棚に並んだ無機物に
温もりを与えるのは僕だけだった


随分と久しぶりになるが
奥にしまった箱を手に取る
埃をはたけば汚れた空気に
あの日の思い出がむせ返る

色褪せた僕の記憶に
幸せだったかと問いかけて
返事もない箱を抱えて
溢れた涙がきっと答えだ


棚に並ぶ夢の偶像が
僕に「幸せか」と問いかける

「今のほうがまだきっと」
それに僕はただそう応えて


新しい箱を用意した

新しい箱を用意した

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

シュレディンガー

開けなければ見なくて済むから。
結果も価値も知らずに済むから。

閲覧数:76

投稿日:2022/10/02 19:21:39

文字数:565文字

カテゴリ:歌詞

クリップボードにコピーしました