―――……あぁ…脆い…脆いよ、人なんて………。

「ハッ…ハハ…アハッ、アハハハハハハハハハハハハッッッッ……――」
笑いが止まらない、だって私の指先一つで人は息絶えるんだよ。

破壊衝動は止まらない…ううん、止められないわ…だって……楽し過ぎてさ♪

見てよ、この血の量と鮮やかな色合いを……、あぁ…綺麗…綺麗だわ……。

ねぇ…魅玖(みく)さま…見ててくださいましたか……?、私…ちゃんと【私が生きる意味】を実行出来ましたよね……?

――グチャッ……ズ…ズルズルッ……
「だ…ダ、レか……、クゥッ……タ…スケ…ッ、て…くレ……。」

ハァ………、
ウルサいなぁ~……。

―――――ドンッドンッ……ドンッ

「シニ、タ…クナッイ………シ…ニタク…、ナイ…シニタクナイッ、シッ…ニタクナ…イ、シニタクナイッ、…死にたくないよォ……」

この台詞にも、この人の声にも、……悲鳴にも………、
…もう飽きた…な…☆

――――だからさ、

「最期に……、【私が生きる意味】あなたの命で…、感じさせて、…ね♪」



―――ドンッ!!



********************



「また…同じ奴か…………」
海翔(かいと)上官はそう呟き、後ろに居た俺に視線を向けた。
「蓮(れん)、お前は見ない方がいいよ………。」
海翔上官が俺の為を思って言ってくれた言葉だが、もう今の立ち位置からでも見えてる。
赤い…いや、赤黒い何かが、肌色の物体に付着しているのが。
だから俺はそんな海翔上官を無視して歩みを進め、海翔上官の隣に立ってよりはっきりとその物体を――人間だった物を見た。
見た瞬間に嫌悪感、それを上回る程の吐き気が本来ならしなければいけない筈だ。
でも残念ながら俺には普通の人間の感情なんて無いし、必要も欲しいとすら思わない。
だから思わず反抗的な発言をしてしまった。
「こんなの見たってどうって事ないですよ…、むしろ…こんな死体(もの)見て上官は僕に何かを感じて欲しいんですか?」
海翔上官は困ったように口を噤んだ。
だが直ぐに次の言葉を形の良い唇が紡ぎ出す。
「初めての昼の任務――いや…初めての現場検証がこんなので流石の蓮も驚いて…「いいえ、別に何も感じませんよ。だって僕は人で有り、人じゃない…。それに……、いつもの任務の方が酷いものですから……。それは上官である貴方も分かるでしょう?………海翔上官?」」

挑むように海翔上官を睨みつけると、海翔上官はぐっと言いかけた言葉を飲み込み渋い顔をしながらも、その事実にためらいがちに頷くしかない。

――だって仕方ないじゃないか。僕は人じゃないから…それは永遠に揺るがない、決められた事だから。特に俺は…俺達は人の死に、人の血を恐れてはいけない。


そんな事を考えて居ると、海翔上官の声が響き渡った。
「…ハァ…言い争いをしてても仕方がないからね、遅くなったが…では……皆…始めよう。【正義の名の元に】僕達の使命を果たそうか。」
溜め息が聞こえるが、俺はあえて聞き流す。
そうしないと、自分の立場を見失うだけだから…。


―――――俺の…俺が属する組織の任務とは簡単に言えば、《殺し屋・又は殺し屋集団を粛清する(殺す)事》。
その為に子供の頃から特別な訓練を受けている。
何故なら殺し屋は殺しのプロ……すなわち正義である俺達がいつ殺されてもおかしくない。
だから対抗(粛清)する為には、殺しのプロを上回る力、技術が必要になる。

だが、訓練を受けても組織に入れるのはほんの一握りの人間だけ。
まぁ…、俺みたいな例外も稀に居るけど……。

それは俺は『人で有り、人じゃない』と言う事を示している。
この身体は元から驚異的な力を持っている。
痛みを意識的にシャットアウトする事も出来るし(後々何倍にもなって痛みを感じる羽目になるが)、身体能力は並外れている。
その上俺達は誰よりも残酷だ。
人を斬る事も、人を拷問しても、惨殺された死体を見ても決して恐怖しない。
でも感情が全く無いわけでもない、喜怒哀楽はあるし普段はホラー映画をみれば怖いし。
要はさまざまなスイッチの入れ替えが、精神面でも身体面でも自分の自由に出来るって事だ。
もちろん普通ならそんな人間はありえないが、俺は研究に研究を重ねて創られた生物。

―――通称は《殺戮人形(さつりくにんぎょう)》と呼ばれる事が多い。
そんな通称だろうと、あながち間違いではないから否定はしないし、俺達《殺戮人形》が創られた理由が理由だから何も言えない。

実際に同じ研究所で、しかも隣の装置で創られた《殺戮人形》同士が同じ戦場で戦う事もよくあるらしい。

―――――もちろん……当然のように敵同士として。

だから俺なんてかなり待遇がいい方だ。
一応人間として扱って貰っているから。
【力を持つ者、強ければ強い程正義】これは組織の暗黙の掟だ。
そんな掟のおかげで俺は今此処に人間として存在して居る。



組織が請け負う任務は、警察などの機関が表立って動けない殺人事件が主なものだ。
凶悪過ぎる事件・残忍過ぎる事件、特に殺し屋集団が関わる事件は厄介だし、国や警察としてはなるべくなら世間に知られたくない事件だから俺達組織に廻って来る。

そしてどうせ捕まえても、死刑判決がくだる犯人達は俺達の手によって死ぬ。
つまり、俺が居る組織は手を血に染める為の集団である。



―――――今回の廻って来た事件も例に漏れず酷い物だった。
被害者の人間…、――顔だけではもはや男か女かの見分けもつかない死体は頭部から始まり、身体の至る所に銃弾を受けていた。

最近この手の殺人事件が頻発していて、犯人はまだ捕まって居ない上に、犯人を見た者は一人も居ない……見たとしても次の瞬間にはただの物言わぬ屍になっているようだから。


「フゥ…、やっと出たか。」
海翔上官は少し嬉しそうに笑って言った。
ようやく犯人に繋がる物が見つかったようだ。
「………と言う事は、僕……俺の出番ですよね♪」

――――《殺戮人形》だからか、本能には抗えない。
人を自分の握る刃が斬る感触、途端に湧き上がる錆びた鉄の匂い、臓腑を引き摺り骨まで断ち切る時の感覚……、あぁ…待ちきれない…今直ぐにでも切り刻みたい、人の血肉を…。

「蓮…、顔にも言葉にも出てるよ。もう少し自分の欲望を抑えなさい。」
気づいた時には俺自身、無意識のうちに笑っていた。
「スミマセン♪だって凄く嬉し過ぎて♪」
だけど興奮は抑えられない。

―――あぁ……駄目だ…もう理性なんてかなぐり捨てたい。
誰でもいい、斬って斬って斬って斬って斬って……、美しい血の色を間近でずっと見ていたい。

自分でも呆れるくらい、海翔上官の注意をお構いなしで、そんな事ばかり考えていた。
そんな時、流石に業を煮やした海翔上官の怒声が聞こえてきた。
「蓮ッ!!」
いきなり名前を呼ばれて、俺はやっと冷静になった。
「……いい加減にしなさい。蓮は人間として今この場に居るのだろう?ならそれに見合った行動や言動を心掛けなさい。」
「………。」
「分かったのなら返事をしなさい。分からないのなら……、またあの場所に……「分かりました。分かりましたからッッ……、その先の言葉だけは…………。」」
俺は海翔上官の言葉を遮った。
続きの言葉は冗談でも聞きたくなかったから。
あの場所には…、大切なあの人を失った場所にはもう戻りたくはない。

「すまなかったね、蓮。」
突然の謝罪に俺は驚いて顔を上げた。

「分かっている…、いや、分かっているつもりだよ…蓮。
――――君があの場所をどれだけ憎み、恐怖しているか……。」

宥めるように海翔上官の手が俺の頭を撫でてくれた。


そして……、俺の中からさっきまでの興奮が嘘のようにどこかへ溶けていった。

まぁ…どうせ…嫌でも…、夜には倍になって戻ってくるのだろうけれど。


*続く?*

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

殺戮人形

小説初投稿です!!

ひとしずくPさんの『からくり卍ばーすと』を聴いてたぎって書きました。

誤字・脱字、更に設定がおかしい部分などなども、多々あると思いますが、「それでも読んでやんよ!!」と言う心が広い方がたくさんいらっしゃると嬉しいです☆

一応続く予定です(笑)


感想とかを頂けると死ぬほど嬉しいです(`・ω・´)

閲覧数:478

投稿日:2011/06/18 01:54:06

文字数:3,273文字

カテゴリ:小説

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