イラストレーターのデフォ子さんは、きょうは友だちの画家の個展にやってきた。
会場の画廊には、旅好きな友だちの、世界の風景の作品が壁に並ぶ。
一緒に来たモモさんが、 「この絵、いいわね!」と指したのは、インドの“タージ・マハール”と、うしろ姿のインド人が描かれた絵だった。

しばらく絵を見ていたモモさんは、「あれッ?」と叫んだ。横にいたデフォ子さんが、急にいなくなったのだ。
近くにはターバン姿のインド人が、驚いた顔で立っているだけだ。しかし、その人も、フッと消えてしまった。
すると隣りに、デフォ子さんが現れた。彼女は驚いた表情で、つぶやいた。「あたし、今、あのタージ・マハールの前にいたの!」

そこに、奥から画廊のオーナーが出てきた。
「この額縁のせいです、すみません」と頭をかいて、彼は、言う。
「これは、星を売る店・上海屋から借りている、入れ替えできる額縁なんですが...」

絵と額縁を指さして、困った表情で続ける。
「なかの絵ではなく、絵を見る人と絵の中の人が、入れ替わっちゃうんですヨ」

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
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玩具屋カイくんの販売日誌  <番外編 ミニ・ミステリー> 入れ替えできる額縁

本編とは別に、ショート・ショートでファンタジーというか、ライトなミステリーを書いてみました。

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投稿日:2018/09/30 19:53:04

文字数:452文字

カテゴリ:小説

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