オリジナルのマスターに力を入れすぎた(ry)、なんとまたまたコラボ(2人)でお互いのマスターのお話を書けることになりました!
コラボ相手は、ハイレベルな心情描写をされるあのお方、+KKさんです!
上記の通り、私と+KKさんのオリジナルキャラ(マスター)が登場します。

おk! という方は、本編にどうぞ。


*****


予想した通り、めーちゃんとリンの喜びようはすごかった。
正確には、リンがはしゃぎ回って、俺とめーちゃんでなだめなければならなかったのだが。よそ様と組むのが初めてでない分、めーちゃんは冷静だったが、それでも楽しみでたまらないといった雰囲気はにじみ出ていた。
早くも昨日の事になったその様子を思い返しながら……俺は、社内からすっかり日の落ちた屋外へと、足を踏み出した。


Kickass Fellows
悠編 第四話


さて、回想して和んでみたのだが、それで肉体的な疲労が解消されるわけでは当然、ない。

「はああぁぁ……」

思わず出る溜め息もどこか重苦しくて、そのことにまた溜め息を吐きたくなるのをぐっと堪える。
特に嫌な事があったわけではないが、目先に楽しみにしている事があると、いつもより仕事がしんどく感じてならない。さらに今日は残業だった。
そしてその分、体感する疲れも増すわけで。

「……酒でも買って帰るか」

憂さ晴らしというより、気分を切り替える意味で、少しだけ飲もう。めーちゃんやカイトを巻き込んだり、どこかへ飲みに行ったりしたいわけでもないし、適当に缶チューハイでも買っていけば足りる。
――とまあ、こう考えているところを見ると、とんだダメな大人のようだが、流石に毎日この調子というわけではない。ただ、たまにこういう、何もなくとも飲みたくなる時があるのだ。たまたまそれが今日なのは、我ながら苦笑ものだが。
頭の隅の方で、めーちゃんの小言の対処法をあれこれ考えながら、目に入ったコンビニのドアを抜け……て、思わず足が止まった。

「……あ」
「おや」

我ながら間抜けなリアクションだと思う。
今まさに向かおうとしていた、缶のアルコール飲料の棚の前、見慣れた人影があった。

「こんなところで会うなんてめずらしいね。仕事帰りかい?」
「あー、まあな。アキラは……っと、酒買いに来たわけじゃなさそうだな」
「違うよ、スタジオ行ってたの。お酒を買うつもりなら、ちゃんと酒屋に行くよ。これはついで」

む、と少しだけ彼女が仏頂面をつくるが、缶チューハイと一緒にカゴに入っているこぢんまりとしたケーキのせいか、可愛らしいとしか思えない。
そういえばアキラが缶チューハイなんて自分から買って飲んでるところ、あまり見たことがないからな。ついでというのは本当で、ケーキ目的だったりするのだろうか。ああやばい可愛い。惚れた欲目ってこういうことか。

「……なに考えてるのさ」
「いや、別に、何も」

ぼけっと突っ立っている俺を不審に思ったか、向けられる視線が少しじとりとしたものに変わる。
多分だが、考えていることは顔には出ていなかったと思うので、バレてはいないだろうが……いや、正確には、そんな気力がないというか、表情筋の働きが少しばかり鈍いというか、まあ要するにそこまで元気がないだけなのだが。

「それにしても、なんつー顔して歩いてんの。3つは老けて見えるよ」
「そんな酷い顔してるか?」
「してる。おかげでスーツ着てるのに全然冴えない」
「……そうかよ」

全然、とつけられるとは、随分な言い種だが、ここで言い返して言葉の応酬をするほどの気力は残っていない。
適当な相槌を打つに留めて、棚の戸を開ける。ろくにラベルを見ずに、目に入った缶を2本ほど取り、ついでにすぐ近くの棚に並んでいたチー鱈もカゴに放り込む。普段はつまみは適当に家で作るが、たまにこういうのも食べたくなるのだ。

「冴えないのはまだいいとして、せめてちゃんと着なよ。ネクタイ曲がってるよ。だらしない。ボタン取れかけてるし。そういうのなんとかしなさい」
「あー、はいはい」

生返事を返すと、それまでわりと饒舌だったアキラがふと口をつぐんだ。まずい、適当に返したように聞こえても仕方なかったが、怒らせてしまったか?
ちらりと彼女の表情をうかがうと、予想に反してさほど不機嫌そうな顔はしていなかった。

「……どうかしたか?」
「いや、疲れてんなあと思って」

レジへ足を向けると、アキラも自分の分の精算がまだだった事を思い出したか、2つあるうちの、俺が向かったのとは別のレジに並んだ。
互いに支払いを済ませて、ありがとうございましたー、という心なしかやる気のない店員の声を背に、ドアへと向かう。

「ま、今日は早く家帰って休みなよ」
「……おう、そうする」

普段の調子なら、まだこの後もしばらくダメ出しされたり弄られたりするのだが、よほど俺がへばっているようにみえるのだろうか。
かけられた気遣いの言葉に、なんだか胸にじんわりとした感覚が広がる気がした。
じゃーね、と向けられた背中に、ふと、昨日の何気ない会話を思い出す。

「ああそうだ、アキラ」
「何?」

呼び止めると、わざわざ足を止めて振り返る。
知り合ったばかりの頃なら、用件は一度で済ませろとか、そんな事を言われているところだろう。
想像したら少し笑えてきた。

「……何にやけてんのさ」
「いや、すまん。何でもない。……あのさ、近いうちに飲みに行かないか? 今度2人で来いって、マスターに言われて」

俺の誘いに、アキラはきょとんとして、数瞬考え込んだ。

「おごり?」
「おごるなら来るのかよ」

ややあって問われた内容に、思わずツッコミを入れる。うん、何だかんだで彼女と話して少し調子が戻ってきたらしい。

「まあいいや、給料日近いし」
「ついでに夕飯もつけてくれると嬉しい」
「……考えとく」

家計簿の内容を思い出しつつ、ひとまず保留の返事を返した。
今月、それほど目立って散財していないから、負担はさほど大きくないとは思うが……5人も同居人がいると、食費がかさむのである。応えが遅れたのは勘弁してもらいたい。
それを相手もわかっていたのか、慌てたというより呆れたように、すぐさま言葉が続けられた。

「いや、ほんとにたかるつもりないから。本気にしないで」

俺としては別にいいんだが。お互い忙しくて、顔は合わせてもオフに会ってゆっくり話す機会がそうそうないのが現実だ。俺だってたまには彼氏らしい事をしてもいいだろうと思う。というかむしろさせてくれ。
まあここで食い下がって長く引き止めるのも悪いし、なに恥ずかしい事を言うんだと怒られそうなので、口には出さないでおく。いざ行くことになったら、会計を勝手に済ませてしまえばいい話だ。

「しかしねえ。誘うならもうちょっとマシな文句で誘いなよ、悠サン」
「悪かったな、上手い誘い方できなくて。で、いつ空いてる?」

普段のふてぶてしい表情に戻ったアキラに問うと、意外と間を置かれなかった。

「そうだねえ、あんたが給料日後の方がいいんだったら、25日とか。あ、平日だめなら次の日とか」
「おい、なんで俺の給料日知って」
「メイコさんが教えてくれたよ」
「うちでどーいう話してんだお前ら!?」

確かに、一人暮らしでなくなってからは、家計簿をつけてるのは主にめーちゃんだし、給料日はたぶんうちのVOCALOIDは5人とも知っているけれども。
うちの経済状況をどこまで握られているんだろうか……少し怖い。

「まあいいか……じゃあ25日な。仕事終わったら連絡する」
「了解。また今日みたいにへばってるのは勘弁してよ」
「努力はする」

まあ、心配はないと思うが。目先に楽しみがあると仕事がしんどいとはいえ、頑張りがいがあるというものだ。
今度こそ去っていくアキラの背中を眺めながら、そんな事を考えた。

「……さて、帰るか」

会社を出たときよりはいくらか軽くなった気分で、俺は彼女から目を逸らすと逆方向の道へと一歩踏み出した。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

【オリジナルマスター】 Kickass Fellows 第四話 【悠編】

オリジナルマスターの設定と、とある事で盛り上がっていたら、いろんな人に背中を押されて、なんとまたまたコラボで書けることになってしまった。
これまたお相手の方とそのオリキャラさんが素敵すぎて、また緊張しております……!

というわけで、わっふー! どうも、桜宮です。遅くなりました……! 一年越しって、ねえ。

悠さん、お仕事帰り、の巻。
久々に仕事帰りでへばってる悠さんを書けて個人的には楽しかったです。
あと前回に引き続きこののろけっぷりである。これでも自重してるから酷いというか……もはやいつものことってどういうことなの←


司さんの方は、何やらしんみりしているような。そちらもぜひ!


司さんの生みの親、+KKさんのページはこちら!
http://piapro.jp/slow_story

今回出演して下さった、東雲晶さんの生みの親、つんばるさんのページはこちらです。
http://piapro.jp/thmbal

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投稿日:2011/09/20 10:48:49

文字数:3,325文字

カテゴリ:小説

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