「こんばんは、お嬢さん」

「あなたは誰?何処から入ったの?」

「おっと、そう慌てることはありませんよ。
僕はあなたを迎えに来ただけです」

「私を迎えに?」

「そう」

「その声…っ…!!わかったわ、あなた、ドロボーさんね…!!」

「ええ。その通り、僕は怪盗KAITO。
アルセーヌ・ルパンの細胞から作られた人造人間(アンドロイド)です」

「怪盗KAITO……!!」

「………」

「なんてビミョーなネーミング……!!」

「いや、驚くところはそこじゃないです」

「そうなの?」

「っていうか、普通にカッコいいと思うんですが。
『かいとう』と『カイト』を掛けてるところとか」

「…ああ、うん……」

「…適当にスルーされた…ッ…!!」

「ところで、ドロボーさん」

「はい、何でしょう」

「この部屋には指輪も、髪飾りも、ペンダントもないのよ」

「そうみたいですね」

「用がないなら出て行って。
言う事を聞かないなら、人を呼ぶわよ」

「いいえ、僕が欲しいのはそんなものではありません」

「えっ?」

「それに、あなたは少し勘違いをしておられる。
盗むだけが、怪盗の仕事ではありませんよ」

「そうなの?」

「ええ。宝石箱に閉じ込められた哀れなダイヤモンドを、
この手で自由にして差し上げることこそ、怪盗の真の務めなのです」

「……本当に?」

「信用できませんか」

「そうね、ドロボーの言葉を簡単に信じるわけにはいかないわ」

「………」

「あなたの理屈で言うと、
金庫に入れられたお金を開放するのが銀行強盗ってことになるもの」

「…まあ、そうなりますね……」

「でしょ?」

「それならば、証拠をお見せしましょう」

「証拠?」

「怪盗がただのドロボーではないという証拠です。
……この宝石に見覚えはありませんか?」

「……これは…!!……母の!!母のダイヤです……!!」

「……そう。あなたのお母様であるMEIKO様が、
パーティの夜に身に付けられていたブルーダイヤモンドですね」

「…8年前、あの男たちに奪われたはずなのに……!!
……いったいどうやって……!?」

「怪盗に不可能はない、とだけ言っておきましょうか」

「………!!」

「ああ、すみません。少し怖がらせてしまいましたね」

「…いえ、大丈夫です……」

「ふふ、可愛らしいお方だ」

「………」

「そう硬くなることはありません。
僕はこう見えても紳士なんですよ」

「…ほんと……?」

「ええ。僕はあなたの望むものなら何だって出せるんです。
ほら、こんな風に」

「わぁ……!!きれいなお花っ……!!」

「そうでしょう。まあ、あなたの可愛らしさの前では、
花も恥じらってしまうかもしれませんが」

「………」

「どうしました?」

「…なんか腹立つ……」

「ふふ、正直なご感想、ありがとうございます」

「…殴ってもいいかしら……?」

「おやおや、暴力はいけませんよ。
この美しい手に傷が付くと大変ですから」

「ちょっと!!気安く触らないで!!」

「おおっと」

「私よりもちょっぴり大人だからって、
調子に乗らないでくれる?
物事には、して良いことと悪いことがあるの。
わかるかしら?」

「落ち着いてください」

「こんな状況で落ち着けるわけないでしょ!!
ふざけてるの!?」

「ふざけてなどおりませんよ。
女性を優しくリードするのが紳士の務めですから、
それを果たしているだけのこと」

「………」

「それでは、いけませんか?」

「…別にいけないわけじゃないけど……」

「………」

「……ねえ、本当に何だって出せるの?」

「えっ?」

「さっき『あなたの望むものなら何だって出せる』って」

「…ええ、出せますよ……。大抵のものは……」

「それなら、私、ケーキが食べたいわ。
とびきり上等のケーキが。出来るかしら?」

「……ケーキですね。かしこまりました。
しばしお待ちを」

「………」

「はい、どうぞ。僕の創作したオリジナルのケーキです。
名前を『ガブリエルの休日』と申しまして、
ラ・フランスと生クリームにより天使の羽を表現した、
風味豊かな一品となっております」

「…本当に出てきた……!!何これ、マジック!?」

「僕は魔法使いですからね。
その力を少し使わせていただきました」

「いや、マジックよね」

「魔法です」

「何でそこはかたくなに言い張るの?」

「夢を与えるのが怪盗ですから」

「…そう……」

「味はいかがですか?」

「…あれっ?おいしい……!!」

「そうでしょう」

「どうして?何でこんなおいしいケーキが出せるの?」

「言った筈です。怪盗に不可能はない、と」

「…素敵…っ…!!」

「喜んでいただけて光栄です」

「…でも、ひとつ気になることが……」

「何ですか」

「その台の後ろに掛かってる黒い布は何なの?」

「………」

「さっき、そこからチラッと他の人の手が
見えたような気がするんだけど……。
もしかして、外部と繋がっ……」

「はっ!!大変です!!もう時間がありません!!
行きましょう、姫っ!!」

「えっ!?ちょっと待って!!抱えないで!!
下ろして!!下ろしてったらーー!!
いやあぁあぁぁっ!!」

「暴れないでください!!」

「でもでも!!」

「大丈夫です!!誰も見てませんから!!」

「そういう問題っ!?」

「違いますか」

「…いや、違わない…けど…!!でも……!!」

「でも?」

「…恥ずかしい…っ…!!」

「………」

「にやにやしないで!!ぶっ飛ばすわよ!!」

「どうぞ」

「いや、どうぞじゃなくて!!下ろしてよ!!」

「大丈夫です」

「えっ?」

「僕を信じてください」

「…何言って……」

「僕はあなたの味方です」

「………」

「あなたを傷付けるようなことは、
絶対にしません」

「…ほんと……?」

「ええ、本当です」

「…嘘じゃない……?」

「嘘じゃありません」

「…だけど……」

「この目を見てください。
僕が嘘をついているように見えますか?」

「…見えない…っ…」

「そうでしょう」

「…じゃあ、ひとつだけ、約束してくれる……?」

「約束?」

「私のこと、置いていったりしないって」

「………」

「出来る?」

「わかりました。約束しますよ」

「……ありがとう。私、あなたを信じる」

「………」

「どうしたの?」

「……いえ、僕はやはり泥棒なのだな、と。
それが少し、悲しくなっただけです」

「…ふうん、そう……」

「………」

「……それでも、構わないわ」

「えっ?」

「あなたがドロボーでも、悪魔でも。
私を助けてくれたっていう事実に変わりはないもの」

「………」

「そうでしょ?」

「…ありがとうございます」

「いえ、こちらこそ」

「……あなたは強い人だ」

「そんなことないわ。女の子なら、これくらい普通よ」

「……その気持ちに応えられるよう、
全身全霊をかけてお守りいたします。

そして、必ずやあなたを自由の身に……」

「ふふ、真面目すぎるのよね、あなたは。
ドロボーのくせに」

「ドロボーのくせにっていう言い方はやめてください」

「あら、ごめんなさい」

「………」

「……でも、まあ、よく知らない男の人に
お姫様だっこされてるところなんて、
お父様が見たら失神しちゃうかもしれないわね」

「…そうでしょうね……」

「……それが大人になるってことなのかしら……?」

「………」

「ねえ、どう思う?」

「……そういう側面もあるでしょうね」

「何よ、そのぼんやりした言い方っ!!」

「…すみません……」

「もうっ、やめてよね。そういうはっきりしない態度。
本当は強いくせに弱気なこと言っちゃって、
ばっかみたい」

「………」

「……ごめんなさい。今のはやつ当たりだったわね」

「いえ、お気持ちはよくわかります。
僕も今のマスターと出会うまでは、いろいろありましたからね」

「…そうだったの……」

「人造人間(アンドロイド)の僕ならまだいい。
戦うことも、傷を癒すことも、奪い返すことも出来る。

でも、あなたはこんな小さな身体で、
ずっと戦ってきたんですよね。

……さぞや、お辛かったでしょう」

「………」

「さっき、質問してくださいましたね。
『大人になる』とはどういうことか」

「…ええ……」

「……僕にもその答えはまだわかりません。
もしかしたら、それを探すために怪盗をやっているのかもしれない」

「………」

「きっと、宝探しの途中なんですよ。僕も、あなたも」

「…そうかもしれないわね……」

「………」

「いい話みたいにしてるけど、ドロボーは犯罪よ?」

「…それは言わない約束です……」

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい
  • オリジナルライセンス

【小説を書いたよ♪】怪盗KAITOとお嬢様ミクさん

久しぶりに小説を書きましたっ♪☆*ヾ(-∀・*)*+☆
楽しんでいただけたら嬉しいです♪

2015/12/01 ちょこっと修正&追記

KAITOがケーキの説明をするシーンの台詞を、
ちょっぴりシンプルな感じにしましたっ♪
よろしくお願いします♪

2015/12/11 ちょこっと修正&追記

この小説を書くときに参考にした曲のリンクを貼っておきますっ♪

「ワールドイズマイン」(初音ミク)
http://www.nicovideo.jp/watch/sm3504435

「アナザー:ワールドイズマイン」(KAITO)
http://www.nicovideo.jp/watch/sm3604990

「Sweet's Beast」(KAITO)
http://www.nicovideo.jp/watch/sm9737101

閲覧数:627

投稿日:2015/12/11 19:13:30

文字数:3,701文字

カテゴリ:小説

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  • みみこるね

    みみこるね

    ご意見・ご感想

    私はルパンはFebeで英語の『怪盗ルパン傑作短編集』を聞いただけなんですが、なんだか懐かしい気持ちになりました。カイトが珍しくかっこいい!しかしケーキは裏方疑惑アリ?

    2015/12/17 13:26:36

    • ふわふわ

      ふわふわ

      わぁーー!!感想、ありがとうございます!!
      頑張って書いたので、とっても嬉しいですっ♪(*n´ω`n*)
      私もルパンは子どものときに読んで、
      それから全然読んでいないので、自分の中にあるイメージで書きましたw
      あと、KAITO、カッコいいって言っていただけて、めちゃくちゃ嬉しいです!!
      普段はいわゆる「残念なイケメン」のイメージがあるKAITOですが、
      久しぶりに「Sweet's Beast」を聞いたら萌え死にしたので、
      その勢いで書きましたっ///大好きーっ///(/ω?*)

      2015/12/18 19:03:09

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