玄関に靴がない夢を見る
キッチンに水のない夢を見る
天井に明かりのない夢を見る
窓に光りのない夢覚める

何度開け放ってもカーテンがある
何度閉じても開く冷蔵庫がある
誰と話しても聞こえない電話がある
何を喋っても伝わらない私がいる

全員の家に押しかけたいのに
私は動けないままでいたんだ
欲しいものは玄関の靴じゃない
冷蔵庫の中のスープじゃない

完璧な完成を待つ食材に謝れ
どこまでが終わりかって
その口じゃ言えないんだろう？
誰も居なくなったリビングで


本棚に本がない夢を見る
スイッチに届かない夢を見る
階段に終わりのない夢を見る
鍵が回せない夢覚める

何度押し殺しても叫ぶ声がある
何度閉じても開くまぶたがある
誰に話しても届かない神話がある
何を送っても気付かれない私がいる

全員の耳に投げつけたいのに
私は息を吐けずにいたんだ
欲しいものは届かない本じゃない
階段の上の天国じゃない

半べそで完食を待つ素材に謝れ
どこまでがお愛想って
その口じゃ食えないんだろう？
誰も居なくなったテーブルで


犬に吠えられる夢を見る
フタが開けられない夢を見る
文字が読めなくなる夢を見る
顔が見分けられない夢を見る

花が咲かなくなる夢を見る
鳥が飛ばなくなる夢を見る
風が吹かなくなる夢を見る
月が昇らなくなる夢を見る

夢を見ることが出来なくなる
夢じゃないこれは夢じゃない
でもだっておかしいじゃない
そんなこと言ったって変だもん

もってなくちゃって誰も言うし
同じのじゃダメで違うのじゃダメで
選んでちゃダメで迷ってちゃダメで
わかんないわかんないわかんない
わかんないわかんないわかんない


夢が落ちなくなる朝を越えない
逃げる日を遠く流す果てしない
蔑む声日曜日呆れ笑い傷口
西日が折れてく心渇かしてる

あの日の珊瑚礁は卵を産みましたか？


その口じゃ言えないんだろう？
誰も居なくなったリビングで

そこに居るのは誰ですか？
ちいさなちいさなちいさな自分と