離れ離れになってしまった
魂の欠片を探してたの
刻(とき)の止まった夜の花園に
君は一人閉じ込められていた

原罪と慈愛の物語を紡いで
辿り着いた結末は永遠の冬
地上の太陽が爆発して
時計が止まったとしても それは君のせい?

空へ逃れた私は君を呼んでいる
“ひとりきりで舞うここは冷たくて怖いよ”
月に日に星に輝くこの羽が
私の足下の影を打ち消す

陽だまりの中で私は頼りなく燃えていた
明るすぎるこの世界に居場所がない
宙(そら)を舞う私を見て君は籠の中から言った
“闇夜に輝く恒星(ほし)のように君は綺麗だよ”
“その光だけが痛みを忘れさせてくれる”
それなら

白日からちぎられたこの翼を広げ
私は謳い続けるよ
輝くことで君が恐れる
無限のこの夜に光を灯せるのならば


籠を叩く私を君は迎えない
傾かない月が私を嗤う
“無駄だよ”囁いたその瞳(め)は
もう輝くことができないのだろうか

真夜中の陽(ひ)に黒い檻は際立ち
鍵のない籠を開く術がない
こぼれた私の涙でさえも
氷の茨に触れて 枷の一部となった

君を取り巻いた影が私に囁いた
“二度ト赦シハシナイ”
“コレガ罪人(ツミビト)ノ宿命(サダメ)”
君だけでは呑み込めない深い闇が
溢れて花園の氷牢(コキュートス)を作る

十字架を負わされたその背に翼はない
飛んでいた記憶だけが君を苦しめる
寂しげな微笑過ぎらせ君が籠の中から言った
“もう何も感じないよ”
“自分が生きているのか死んでいるのか分からないよ”
それなら思い出させてあげる

陽だまりの熱で君の涙が乾くなら
私は謳い続けるよ
たとえ私が輝くことで
君の影をより黒く浮かび上がらせるとしても


“光は希望で 闇は絶望”だと誰が言ったのだろう・・・


謳え、今 焦熱に翼を融(と)かされ
楽園から堕(お)とされた鳥たちのための歌
閉ざされた夜に真(まこと)の日が昇るまで
眠れない者達に光を差す太陽を

君が再び立ち上がるのなら
この羽すべて燃やしてでも
周りの闇を照らし
君の“輪郭(かげ)”を際立たせて魅(み)せよう

君の恐れるその影が
君の生きる場所を証明する


光は希望で闇が絶望なんて決まっていない
周りが同じ色になれば光だって絶望するよ
自分の存在が見つけられないことは
私たちにとって生きることを忘れるに等しい

影と光は一つにはなれない
だけど決して離れることもない
君が私の光で君を見つけたように
私も君がいなければ自分が見えないんだ

私の中にも“君”がいるんだよ


清(さや)けきかりそめの十三月がふと翳った
君が立ち上がり天(そら)に手を伸ばした
流れ出す赤い体温(ねつ)で籠と氷の枷が融けてゆく
“二度と飛べなくてももう構わない”
“僕はまだ生きている、君と共に生きる”
そうだよ!

駆ける、君 二本の足で暗い大地を走る
燃える両翼の焔(ほのお)が君と影を映し出した
“待っていて、もうすぐ行くよ”
風に交じって声が聞こえた
私の知るどんな歌よりも力強く

再び生き始めた君が迷わぬよう
私は謳い続けよう
この羽は燃えつきてもうすぐ地に落ちるとしても
それで構わないから

無限の夜、月が西に傾き
はるかな地平線が少しだけ赤く染まった
籠を抜け歩き出した君が私に追いついて
明月(あかつき)の丘の上で優しく笑っていた

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

天ヲ照ラス鳥のフォークロア

――――“光”は希望で、“闇”は絶望だと、誰が言ったのか。

前作「月読と籠鳥のロンド」と対をなす作品です。
今度は夜空を飛んでいた“君”視点。
タイトルの「天」は「そら」と読みます。

あなたのために、私は歌い続ける。
たとえ私のヒカリが、あなたの闇をより強く際立たせるとしても。

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投稿日:2013/08/21 14:38:16

文字数:1,391文字

カテゴリ:歌詞

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