「うわぁ、何だこれ。おいしいけどさ」

注文したカクテルの“ソルティ・ドッグ”を一口飲んで、霧雨さんは顔をしかめた。
グラスのふちについている塩を、もろになめてしまったのだ。

「ソルティ(塩っぽい)、だもの。辛いでしょ」
りりィさんは、それを見て笑う。

バー・タイムになった「カフェ・つんでれ」。りりィさんと、仕事仲間の霧雨さん、コヨミくんが話をしている。

「コヨミさんは、何か飲まないの?」
りりィさんに聞かれて、彼は頭をかいた。
「ええ、ボク、酒は弱いんですよ。ルート・ビアでも、もらおうかな」

「ほぉう、今売れっ子の雑貨のプロの割には、下戸とは意外ね!」

ちょっと口の悪い霧雨さんが、コヨミ君を見て笑った。


●デビちゃんと、ライバルの商品

「さて、話の続きをしましょう。新製品の“デビちゃん”、どうやって売り出していくか、よね」

りりィさんの話に、コヨミ君はうなずいた。
「そうですね。いちおう、ボク、考えたんですよ」

彼は1枚の紙を出して、ボールペンで簡単な図を描いて、話し出した。

「いま、ボクらが作る“デビちゃん”には、いくつかの“ライバル商品”があります」
言いながら、紙に名前を書きだす彼に、りりィさんと霧雨さんは、聞き入った。

「ひとつは、ヒットしてる“メグ・ハミング”。これは、大人っぽくてカワイイデザインで、よく売れてます」
「そうね」
2人はうなずいた。

「もうひとつ、要チェックなのが、“はっちゅーね”です」
彼の言葉に、霧雨さんは目を見開いて言った。
「そうね。なにか、不気味なとこあるのよ。その商品」


●悪魔のコスプレ?

「だよね。いろいろ、不思議な評判が立ってる商品です」
コヨミ君は、紙に“はっちゅーね”と書いて、○で囲んだ。

「人形なのに、心があるみたいな反応をする、っていう噂ね」
りりィさんが、モスコミュールのグラスを口に運んで、つぶやいた。

「そうです。それで、メグ・ハミングはバッグ、はっちゅーねは、人形がいまはメインです。でも、どっちもだんだん、雑貨商品をふやしていくみたいです」

「そうね。デビちゃんと、アイテムの分野でダブるわね」
霧雨さんは、ソルティ・ドッグのグラスの塩をなめながら、言った。
「コヨミ君の、冴えた雑貨の企画のアイデアを教えてよ。デビちゃんは、どう売り出していくの?」

彼は、紙におもむろに絵を描き始めた。
「ええ。いまね、ボクが考えてるのは、これですよ」

彼の腕は、悪魔の格好をしている女の子の絵を、つむぎ始めた。
「これ。コスプレ作戦、なんです」

のぞきこんだ2人は、目を丸くした。
「えー、なにこれ。テトさん…が、悪魔の格好をしてるの?」(  ゜ ▽ ゜ ;)エッ!!

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
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玩具屋カイくんの販売日誌(157)  デビちゃん、売り出し作戦開始 ~その2

「話題作り」には、いろんな方法があります。イベントに出たり。
でも、自分たちの「お店」があるのは、強いですよネ!

閲覧数:74

投稿日:2012/06/10 20:30:05

文字数:1,144文字

カテゴリ:小説

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  • enarin

    enarin

    ご意見・ご感想

    今晩は! 続き拝読させて頂きました!

    ソルティ・ドッグ、渋いですねぇ~♪ 私も1回だけ注文したことあるのですが、不思議に縁に付いている”塩”が美味しかったです。あれを舐めながら飲むんですよね。

    戦略会議、大事ですよね。企業だと、これで長々な会議とか良く聞きます。はっちゅーね、実物見てみたいものです。怖い物見たさ。

    そしてコスプレ作戦、実際、今のイベントでは、ない方がないと思うくらい、王道になりましたよね~。昔はキャンギャルくらいだったのですが。

    今回も楽しいお話、ゴチでした。

    これから梅雨ですよね、ご自愛下さいませ。

    ではでは~。

    2012/06/10 20:53:18

    • tamaonion

      tamaonion

      読んでくれて、ありがとうございます!

      そうそう、ソルティ・ドッグは、ふちにゴツゴツとつく塩が、なんだかワイルドな感じがしますよねぇ(笑)

      はっちゅーね、興味を持ってくれて?嬉しいです。
      実はまだ、自分でも姿のイメージはあんまり固まっていないんですよ。

      いつか、下手な絵でもイメージが湧いたら、ピアプロにあげてみようかなぁ(笑)

      それでは、また。

      2012/06/10 23:54:28

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