思わずお母さんを怒鳴った後私は家を飛び出していた。ちょっと感動したのに、嬉しかったのにあんなオチが付いてるなんて信じられない!

「緋織!こら風邪引くぞ、コート羽織って。」
「お礼言おうと思ったのに出て来ちゃった…鈴夢の事だって紹介したいのに…。」
「戻るか?」
「今日帰りたくない…。」

さっきとは違うテンションで同じ事を言った。感謝してない訳じゃ無いけど正直今は憤りが勝っていたから。鈴夢も察してるのかはっきり『帰れ』とは言い出し辛そうだった。

「ごめん…やっぱりちゃんと家帰るね。困らせるとか私本当に子ど…っ!」

急に抱き寄せられたと思うと噛み付く様にキスをされた。私も自分から強請るみたいに鈴夢にしがみ付いていた。最初の頃は嫌だと思ったのに抵抗出来なくて…何時の間にか嫌だとも思わなくなって…。

「今日帰りたくない…怒られても良いから鈴夢のとこ居たい…。」
「悪い子…。」

それから鈴夢は家に着くまで何も言わなかった。先生からメールが来てたから『帰らない』とだけ返したら『覚悟しとけ』って返って来た。

「明日怒られるだろうな、親父さんに殴られるかも?」
「解ってるもん…だけど今日はどうしても一緒に居たかった。」

深呼吸してから鈴夢に向き直った。

「鈴夢は本当に私で良い?」
「…何で聞くの?」
「だって私…ワガママだし、本当は一杯一杯甘えたいし、勉強よりお菓子の方が好きだし、しょっちゅう痴漢とかに遭うし…えっとえっと、それから…!」
「俺の事好きだし?」
「はい!好きです!」

条件反射で言ってからドッと汗が噴出した。鈴夢は口元を押さえて必死で笑いを堪えていた。

「好きだもん…。」
「知ってる。」
「私の方が好きだもん…。」
「そうかな?」

優しく触れる手に目を伏せて思うままに身を任せた。

「俺は1つだけあの馬鹿ゲームに感謝してるかな…。」
「え?」
「緋織がここに居るから。」
「うん…。」

それから私達テスト参加者は皆、平穏な日々を送っていた。数ヵ月後『マンネリ化しない秘訣』をテーマにしたゲーム企画書を佐藤さんが再び持って現れるとも知らずに…。

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いちごいちえとひめしあい-最終話.一期一会-

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投稿日:2012/12/24 03:45:36

文字数:896文字

カテゴリ:小説

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