佐藤さんと言い、輝詞さんと言い、他のスタッフさん達も含めてこの企画の人達は説明する前からホイホイと話を進めないで欲しい。と、私は苛立っている若葉や動揺している他の参加者の様子を見ながら思った。私もいきなりアミダくじで自分を護ってくれる人を決められては溜まった物じゃない。佐藤さんいわく今のパートナーは最初だけの物で、後から変更しても一向に構わないらしいんだけど…。

「ん?どうかした?」
「いっ…いえっ!何でも…!」

私は思いっ切り顔を逸らしてしまった。私のパートナーはこの弭さんと言う人らしい。アミダで決まったとは言え、一時的な彼氏みたいな物だし、挨拶位しないと感じ悪いのは解ってるんだけど…。

「弭、支給の鍵と携帯、お前の分。同性の番号は最初から登録してあって、異性は自分で聞けだとさ。」
「手込んでるなぁ…あ、先輩の番号あった。掛けて良い?」
「はいはい、髪を編むな。」

さっきからずーっと旋堂さんばっかり弄ってるんだよね…。鶴村先輩じゃないけどこの二人を変な目で見てしまってしょうがない。別に仲が良いだけの人達って結構居るし、髪弄ったりなんて女の子同士ならよくある事だし、あんなに綺麗で長い髪私だって編みたいし、それにしても綺麗な人達だよね、絵になる二人と言うか、顔が近くないかなとか、いや、別に顔が近いからってスキンシップの一環でよくある事だし、取り敢えずどっちが攻めでどっちが受けですかとか考えてないです、ごめんなさい、そう言う趣味はあんまり無いけどぶっちゃけそうとしか見えませんよね、解ってやってませんか?鶴村先輩、後でその写真一枚下さい、深い意味なんて無いですよ?

「彩花ー?どうしたの?息荒いよ?」
「何でもありません…。」

落ち着け私…。

「彩花ちゃん。」
「はいぃっ!ごめんなさいぃっ!」

目の前に弭さんが身を乗り出して来て思わず裏声で謝ってしまった。吹き出して笑う弭さんに行き場の無い手と言葉が宙を彷徨った。一頻り笑った後、弭さんは支給された携帯の番号を書いてから自分の名刺を渡してくれた。

「番号間違ってないか確認して貰って良いかな?」
「あっ!は、はい!」

私は慌てて支給された携帯を操作した。自分の使っているのと機種が違って少し手間取りながら電話を掛けると、目の前で携帯が光った。

「ん、ありがと。あ、メールも番号で送れるみたいだから、何かあったら連絡して、じゃあ、宜しく。」
「よ、宜しくお願いします。」

緊張しながら頭をぺこりと下げると、持っていた携帯にメールが届いた。あれ?弭さんからだ…テストメールかな?えーっと…土曜日…。

『土曜日暇ならデートしない?返事は今下さい 弭』

顔を上げた瞬間、人差し指が僅かに唇に触れて、金色掛かった目が薄く笑って言った。

「お返事は?」
「は、はい!」
「じゃ、土曜日宜しく。」

笑顔で頭をくしゃっと撫でると、弭さんはまた旋堂さんを弄り始めた。私はしばらくの間瞬きすら忘れる勢いで固まっていた。

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いちごいちえとひめしあい-23.雉って雑食?-

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投稿日:2011/09/04 06:46:26

文字数:1,249文字

カテゴリ:小説

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