<Dear My Friends!第2期 第25話 杖と魔弾銃とウォーハンマー!>

(ヤマト国 オーエド地区 セントラル区 ニンギョーチョウ ギア整備工場“カガ”内 会議室)

 次にテルは、先ほどの一件で、少しすくんでいるリンとアペンドの方に目線を向けた。

テル「次は、リン、そして、アペンド、二人の杖だ。どちらも同じ杖を錬成する」

 リンもアペンドも、かなり驚いた様子だった。二人はある意味、リン=回復治療、アペンド=攻撃、と正反対であるからだ。

リン、アペンド「え!? だって、私h」
テル「言いたいことはわかっている。しかし、これまでの事を考えると、リンもアペンドも“専門属性”で落ち着いていたために、困った事が多々あっただろう? 今回もリンの回復を頼って、アペンドはろくな回復が出来なかった。これではおそらく今後支障を来すと思っている。異論はあるかい?」

リン、アペンド「・・・ありません・・・」

 テルは深くうなずいた。そして、できる限り優しく、説明することにした。

テル「安心して欲しい。これから君たちが使っていく杖の元々の持ち主は、あの大魔導師“ワードナ”だ。攻撃にも回復治療にも長けた、とんでもない魔法使いだったと、文献には書かれていた。なんであれだけマージが“いらない”と言っていた魔導師の杖を吸収していたのかはわからないが、可能性としては、杖を入手した冒険家が、マージに喰われて、同時に杖も喰われたのだと思う。だから、お互い“短所になっていた属性”を十分補ってくれる、便利な杖となる。だから、肩の力を抜いて、受け取って欲しい」

 リンとアペンドに、安堵の表情が戻った。

リン「はい、わかりました。頑張ります!」
アペンド「あなた、ありがとうね。頑張るよ、私」

 テルにも笑顔が戻った。

テル「ありがとう。では、2本錬成するから、それぞれの杖を魔方陣の上に置いてね」

 二人はそれぞれの杖を魔方陣の上に置き、両名共に魔方陣から離れた。

テル「では、行くぞ!」

 そういうとテルは、魔方陣の中央に置かれた“2つの杖”に、蓋をあけた封素瓶からそれぞれ10滴、輝く素材を垂らした。すると、普通の杖の全体が、透き通る青色でまばゆく輝きだした! そしてテルはレンの時と同じように、手のひらを魔方陣にかざした。

テル「我、汝を支配するモノ也! “ワードナスタッフ”に由来する素材以外は、この瓶に戻れ! 該当素材は、この2本の杖を、同じ“ワードナスタッフ”として、新たに再構成せよ!!!!」

 ギュン! ギュン! ギュン! ギュン!

 すると、垂らしたそれぞれの部分から、ごくわずかのみ、瓶に戻っていき、そして、2本の杖は、それぞれ輝く球体に変わり、そしてすぐに、宙に浮く、見た目にも綺麗な、青色に輝く魔法使いの杖に変貌を遂げたのでした!

 ヒュン ヒュン ヒュン

リン、アペンド「綺麗・・・・・・・・・・」
テル「さぁ二人とも、手にとって、杖を受け取りなさい。特に杖の審判はない。安心していいよ」

 リンとアペンドは、そぉ~っと、杖の持ち手を掴むと、青色の輝きは収まり、しっかりとリンとアペンド、お互いに“なじむ”ように軽く持ち手部分が変化した。

リン、アペンド「ワードナスタッフよ! 汝と共に行かん!」

 こうして、リンとアペンドは、最強の魔法杖の入手に成功した。

***

 次にテルは、イアとルカ姫を見つめた。

イア「今度は私たちの、魔弾銃の事ですね」
ルカ姫「さーて、何にしてくれるのかなぁ」

 しかし、テルの回答は、ちょっと意外なモノだった。

テル「君たちの武器は、変わらず“魔弾銃”だ」

 イアもルカ姫も、この答えには目を丸くした。これまでの流れなら、“超魔弾銃”とか“ゴッド魔弾銃”とか凄いのになりそうなものなのに…。それでもイアは冷静だった。だが、ルカ姫は感情をあらわにして、ふくれっ面をした。

ルカ姫「ぶぅー(`Д´) なーーーーんで、私たちだけ何もないわけ~、差別だ! 差別だ! そう思うでしょ、イア!?」

 イアはどう答えようか、一瞬困った。だが、いかんせん初見のルカ姫からのイメージが最悪で、最近仲がよくなっているので、歩調を合わせることにして、慣れない表情でふくれっ面・・・・・のような表情を作った。

イア「そーだ! そーだ!」

 だが、テルは、なんか二人で遊んでいる物腰で、こう言葉を続けた。

テル「あ、いや、ごめん。実は魔弾銃のままなんだけど、マージそのものの素材を使って、凄い弾丸を『追加』することにしたんだよ」

 ルカ姫は、ふくれっ面の表情が壊れ、もの凄い“ハッピー”な顔に一瞬で変わった。

ルカ姫「やっぴー! ハッピー! テル愛してる~♪ そうでなくっちゃ!」
アペンド「むぅ (--#)」

 イアは元の無表情に戻った。

イア(まぁ、そんなところでしょう)

 テルは二人の魔弾銃を受け取った後、魔方陣の中央にその二丁を置き、前置きで説明を始めた。

テル「二人の魔弾銃に追加する弾丸は、マージの“驚異的な加速力”の素材で作った、『加速弾』。ダイヤル文字は、加速『A』(Acceleration:加速)だ。あ、今までのは、火炎『F』(Flame:火炎)、氷結『I』(Ice:氷)、電撃『E』(Electric:電気)、疾風『W』(Wind:風)。それとミクさんのみの装備だったブレイヴバレット『B』(Brave:勇敢)だったから、今のところ重複は無いね」

イア、ルカ姫「加速弾??」

 テルは珍しく大きな鼻息をして、胸を張って解説し始めた。どうやらこの“加速弾”だけは、テルが作った“オリジナル武装”らしかった。

テル「この加速弾はね、ダイヤルを合わせる事で、単に“射出したノーマル属性の弾丸の弾速が数倍に跳ね上がる”だけじゃないんだ。君たちの動きも、同じ倍率で一定時間数倍に跳ね上がる、それは凄い武器なんだよ!」

イア「あぁ、あぁ、いわゆる、加速装c」

 ルカ姫はイアの口を手で押さえた。

ルカ姫「それ以上は、だーめだめよ♪」

 テルはコホンと咳を1回して、改めて、ちゃんと説明した。

テル「まー、なんだ。その説明で全てなんだけど、ぶっちゃけ言うと相対性理論的な表現なら、君たちから相手を見ると、相手がゆっくり動いているように見えるわけだ。でもって、弾速は同じく数倍。これから、まず当たるだろ? 素人のルカ姫でm」

ルカ姫は顔に斜線が入り、不敵な笑みを浮かべて、テルを見つめた。テルも意味がわかったので、それ以上は続けなかった。

テル「えー、コホン、コホン。んじゃ、ちゃちゃっとグレードアップします!」

 そういうと、二丁の魔弾銃に、封素瓶から数滴、それぞれ素材液を垂らし、魔方陣に両手の平をかざして、いつものように錬成を始めた。

テル「では、行くぞ! 我、汝を支配するモノ也! マージの基本素材、加速に関わる素材を再構成し、この魔弾銃二丁に、ダイヤル“加速『A』”を付与し、そのダイヤルを選択することで、更に3倍の弾速を有する通常弾の弾丸発射機能と、使用者自身の3倍加速能力の機能を付与せよ!」

 ゴニョ? ゴニョ? ゴニョ?

 今回は素材そのものが、なにやら困惑しているらしく、すぐにはテルの言った通りの変化はしなかった。すると、テルの顔に影が差し、こう脅しをかけた。

テル「・・・そう、他の装備を作って、ルォを帰還させたら、残りは捨てちゃおうかなぁ~」

 すると、素材は焦ったのか、必死で理解し、テルの言う通りの機能を二丁の魔弾銃に付与した。

テル「それでいーんだよ、それで」
イア、ルカ姫「怖~」
ルカ姫「思うんだけどさ、イア」
イア「?」
ルカ姫「この怖いおにーさんだから、あの実は怒らすと怖いアペンドがペアになったんだと思うんだけど、どう思う?」
イア「・・・賛成」

 そうして、強化された魔弾銃二丁が完成したのでした。

***

 次にテルが目線を向けたのは、“りおん”、だった。

テル「りおん、キミに関してなんだが、キミは魔法全般を使えるようだけど、その杖で魔法を放った所を見たことが無い」
りおん「そうなのだ! 最近は極限硬化して、ぶったたいて破壊しているのだ!」
テル「みかけによらず、とんでもない腕力もあるようだし、魔法はまぁ、唱えて武器に付加できるとして、職業の属性を変えてみてはどうだ? あくまで提案なんだが…」

 りおんは頭の上に『?』がいっぱい出てきて、混乱していた。

りおん「つ、つまり・・・・・・どういうことだってばよ?」

 変な口調まで出てくる始末だった。

テル「あー、すまん。要するに、魔法使いじゃなくて、いっそのこと“重戦士”にジョブチェンジして、その杖をウォーハンマーに変えて、キミの得意な“破砕”で攻撃してはどうか、ってことなんだってばよ」

 テルまで変な口調になってしまった。だが、りおんは理解した後、意外にも好評な表情をなった。

りおん「あ、それいいな、と思うのだ! それにするのだ! でも魔法は唱えられるままだよ?」
テル「ああ、それでいい。では、その極限硬化したままの杖を魔方陣の上に置いてね」

 りおんは、極限硬化したままの状態の杖を魔方陣の上に置き、魔方陣から距離を置いた。

テル「実はとっておきの武器があったんだ。それで話を持ちかけたんだよ。では、行くぞ!」

 そういうとテルは、魔方陣の中央に置かれた“杖”に、蓋をあけた封素瓶からそれぞれ20滴、輝く素材を垂らした。すると、杖の全体が、透き通る赤色でまばゆく輝きだした! そしてテルはリンやアペンドの時と同じように、手のひらを魔方陣にかざした。

テル「我、汝を支配するモノ也! “雷神の鎚(つち)”である、『ミョルニル』に由来する素材以外は、この瓶に戻れ! 該当素材は、この杖を、“ミョルニル”として、新たに再構成せよ!!!!」

 ゴォォォォォォォ!!!!!

 すると、垂らしたそれぞれの部分から、ちょっとだけ瓶に戻っていき、そして、りおんの杖は輝く球体に変わり、そしてすぐに、宙に浮く、見た目にも綺麗な、赤色に輝く、いかにもごつい“雷神の鎚=ウォーハンマー”である、『ミョルニル』に変貌を遂げたのでした! そして自由落下し、魔方陣の上にドスンと落ちたのでした。

りおん「うわぁ! うわぁ! うわぁ! かっっっっっっっっこいいのだぁ!!!!!!」
テル「さぁ、手にとって、鎚を受け取りなさい。こちらも特に鎚の審判はない。安心だ」

 りおんは、もう、子供がひっつかむように、鎚の持ち手を握りしめ、ぶんぶんぶん回した!

 ブン!ブン!ブン!

レン「ちょ! 危ないよ!」
りおん「見た目と違って、軽いのだ! 最高なのだ! 気に入ったのだ!」

 イアとルカ姫は、先ほどと同じく、ひそひそ話を始めた。

イア「あのさ、ルカ姫ぇ」
ルカ姫「・・・わかってる。あれ本当は、すっっっっっごく重いんでしょ?」
イア「だって、空中から落ちたときの、落下点のテーブル、ちょっと欠けているもんね…。テルさん、必死で修復して、魔方陣、書き直しているし…」
イア、ルカ姫「りおんちゃん…なんて恐ろしい子!」

 イアもルカ姫も、意味も無く、白目になって、顔に斜線が入って、とんでもなく怖がっていたのでした。

(続く)

CAST

イア:IA-ARIA ON THE PLANETES-
ルカ姫:巡音ルカ
魔導師アペンド:初音ミクAppend
魔導師テル:氷山キヨテル
僧侶リン:鏡音リン
勇者レン:鏡音レン

異国の剣士 神威学歩:神威がくぽ
裁判官 勇気めぐみ:GUMI

ヤマト国からの旅人三人組
瑞樹(ミズキ):VY1
勇馬(ゆうま):VY2
兎眠りおん(りおん):兎眠りおん

ミゥ:Mew

欲音ルコ(ルコ):欲音ルコ

唄音ウタ(デフォ子):唄音ウタ
桃音モモ(モモ):桃音モモ
雪歌ユフ(ユフ):雪歌ユフ

義 井具蔵(ヨシ イグゾウ)(イグゾウ)):某演歌歌手

ルォ:オリジナル男性中華ボカロ(オリジナルボカロになります)
チンシャン:某女性中華ボカロ
マカ:某少年中華ボカロ
ティエンイ:某女性中華ボカロ(ルォの姉(こちらが本家“ルォ・ティエンイ”で、女性中華ボカロになります))

その他:エキストラの皆さん

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

Dear My Friends!第2期 第25話 杖と魔弾銃とウォーハンマー!

※すんません、本文中のタイトルが仮題のままでしたので、直しておきました。

☆オリジナル作品第16弾である、「Dear My Friends!第2期」の第25話です。

☆同じく6000文字以下のセクションでまとめて、話数で分けています。

☆リンとアペンドの杖、イアとルカ姫の魔弾銃、そして“りおんの杖”の3種類(計5つの武器)についでです。

☆今回はちょっとギャグを入れました。なーんか、ルカ姫とりおんが入るエピソードはギャグ路線になってしまう…。

***

私がここに投稿したボカロ小説のシリーズ目次の第1回目です。第1作目の“きのこ研究所”~第8作目の“部室棟”+番外編1作目です。
作品目次(2009/12/25時点):http://piapro.jp/t/5Qsh

同じく、目次の第2回目です。第9作目“鏡音伝”~第15作目“ルカの受難”の途中までです。
作品目次(2010年1月6日~2012年2月7日):http://piapro.jp/t/9GY1

更に、完結した『Dear My Friends! ルカの受難』のみの目次も作りました。
作品目次(Dear My Friends! ルカの受難):http://piapro.jp/t/qj6A

閲覧数:226

投稿日:2013/10/18 18:32:33

文字数:5,104文字

カテゴリ:小説

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