「…って、何やってんだ俺ら…」
 自分たちに引き気味に、グミヤが言った。
 建物と建物の間の狭い空間から、子供の初めてのお使いを見守るような気分で、リンとレンの二人を見つめる人影が、グミヤを入れて四つ。
「心配で…」
 とレンカは少し笑った。
「フォローしてやら無いと」
 それに合わせてリントが言った。
「親心!?」
 謎のガッツポーズでグミが訴えかけた。
「いや…、お前ら、目が爛々と輝いてるぞ…」
 せめていいわけくらいまともにつけよ…。
 グミヤが突込みを入れようとしたそのとき、物陰からリンとレンを見ていたレンカがはしゃいだ声を上げた。
「あっ、行くみたい。追いかけよう」
「おいおい…」
 また呆れ気味のグミヤの服の袖をグミがつかんで、四人はリンとレン追いかけて走っていった。

 遊園地は、親子連れであふれていた。
「流石に休日は結構込んでるんだな…」
「ホラ、早く行かないと何も乗れずに帰ることになるよー」
 リンの手に引かれ、レンはあわてて追いかけるように歩き出した。
 園内の案内図を見て、まずリンが乗りたいといったのは、ジェットコースターだった。この辺の遊園地では一番高くまで上がり、一番速いスピードで落ちる、スリルが楽しめると評判の奴で、そういえば何時かにリンがこれに乗りたいと言っていた気がする。
「いこ」
 リンが笑って手を差し出した。
「…うん」
 レンはリンの手をとって、握り返すと、まだ人が多くないジェットコースターのほうへ歩き出した。
 ジェットコースターは二人が横に並んで座り、それが数列前後に並ぶ形だった。二人は当然隣同士に座って、バーを下ろした。ふとレンがリンを見ると、リンもちらちらとこちらを見ていて、はっと目が合って、二人は同時に視線をそらした。どちらとも無く手を握った。
 心臓がドキドキしていた。
「ドキドキするね」
「う、うん…」
 ドキドキするって、あの、恐怖で? それとも、恋愛感情で?
 そんな言葉を口に出せないうちに、ジェットコースターはスタートを切っていた。

 ジェットコースターから降りると、どっと疲れが肩にのしかかってきた。
「大丈夫?」
「うん、平気。リンは?」
「もち。次は何のろっか」
「リンは絶叫物乗りたい?」
「次はレンが好きなのでいいよ」
「じゃあ…」
 案内図を見て、レンはいいものを見つけたらしく、ある一点を指差して、リンににっこりと笑った。
「ここ行こう」

 レンがさしたのは、巨大迷路だった。
 遊園地の端のほうに作られ、ジェットコースターの次に人が多く集まっている。
「へー。こんなのあったんだぁ」
「やっぱりリン、あのジェットコースターのこと以外よく知らなかったんだな…」
「まあね!」
「胸張らなくていいから…」
 今度はレンが手を差し出した。にっこりと笑ってリンがその手をとる。二人は迷路の中に入っていった。
 二人の距離、ゼロ。

 しばらく歩いて、レンは立ち止まった。
「うーん、こっちも行き止まりか…」
「レン、こっち、さっき通ったよ」
 赤レンガの壁に、雰囲気のあるつたが這い、洋館の外壁のようにも見える。
 その景観がどこか現実離れしていることから少し話題になったのだが、どうやらそれだけではなかったらしい。開始四十分、精々300メートル四方くらいの迷路で、未だ出られず。
「もう私飽きたー」
 リンはその場にしゃがみこんで、渋りだした。
「飽きたって言っても、ここで棄権はできないし」
 まっていれば遊園地の職員が見回りに来るかもしれないが、それまでここでおとなしくしているようなリンじゃない。
「大体、レンがここ入ろうって言ったんでしょ。どうにかしてよぅ」
「できたら苦労してないんだけど…」
 駄々をこね始めたリンにたじたじで、レンは困ったように笑いながらリンをあやすしかなかった。
「もうやだぁ」
 子供のように動かなくなる。
 愛想をつかしたようにレンはため息をついて両手を腰に当てて、怒ったポーズをすると、
「もう少しがんばろう」
 レンに言われ、リンは渋々立ち上がった。
「あー…。分かれ道。どっち行く?」
 まだリンはブスっとしている。
「…あっち」
 リンは分かれ道のうち、左側を指差した。すると、レンは右側を指差した。
「俺はこっちだと思う」
「…じゃあそっちいけばいいじゃん」
「え?」
「私こっちいくもん。レンはそっち行けばいいでしょ」
 この言い方には流石にレンもカチンと来たらしい。
「そう。じゃあここでお別れ。じゃあな。俺はこっち行くから!」
「フン! 後で出られなくても助けになんか来てあげないから!」
 二人はお互いを一瞥して、それぞれ別のほうへと別れていったのだった…。

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  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

Some First Loves 18

こんばんは、リオンです。
少し遅くなりました、すみません!
正直な所でいうと、レン君は最短ルートで迷路抜けられそうです。
リンちゃんはずっと同じところ回り続けそう。
二人が一緒だと、ロードローラーで整地され、ある意味最短ルートで(笑

閲覧数:261

投稿日:2011/12/27 00:13:18

文字数:1,958文字

カテゴリ:小説

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  • 美里

    美里

    ご意見・ご感想

    誕生日おめでとう!鏡音!

    レンカちゃんたち普通に楽しんでないか…?

    グミヤも何でいるんでしょう。他に突っ込むよりも自分も言い訳しろ!
    でも、やっぱり尾行wwwあの二人だったら私も尾行しますけどね。
    レン君は何かジェットコースター苦手だと勝手に思ってしまいます。怖くないけど乗った後で気持ち悪くなる人です。

    え、リンちゃん!分かれちゃダメだ!出れなくなるぞ!
    楽しみにしてます。

    2011/12/27 14:15:58

    • リオン

      リオン

      返信遅くなってすみません! おたおめ鏡音!

      レンカちゃんたちは大いに尾行をエンジョイしているご様子です。

      グミヤは自分が行かないと他の三人が暴走するから…、と建前を呟きつつ、結局好奇心で(笑
      まあ尾行しちゃいますよね。皆で鏡音尾行ツアーでもどうでしょう。
      レンは多分絶叫系苦手です。リンは物凄く楽しんでくれそうですが。

      リンは一人では出られませんね。確実に出られません。でも後先考えないリンが皆大好きです。
      次もがんばりますね^^

      2011/12/27 19:12:06

  • アストリア@生きてるよ

    デートぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!←

    リトレカ&ミヤグミwww何やってんだww
    まぁ、あの二人がデートともなれば私だって尾行しますがね!!(((爆
    レン君何か可愛い……!ヘタレ萌えか……ヘタレ萌えを狙っているのか……!!(((死
    ジェットコースターでドキドキするだなんて……!ごちそうさまです……!!←

    左右違う道を行ってしまうだなんて……!!何か凄い萌える展開……!!
    楽しみにしてます^^頑張ってください!!


    ハッピーバースデー鏡音!!!

    2011/12/27 10:36:55

    • リオン

      リオン

      おそくなってすみません、ハイ、デートなうでございます!(笑

      四人は思春期ですからね! そりゃあもう好奇心も旺盛でしょう!
      まあ誰だって尾行しちゃいますよね! 私もすると思います(蹴
      基本的に我が家のレンはヘタレです。イケレンなんて開始二行で崩れ去るのさ!←
      ジェットコースターは自分がのったことないので、正確に描写できないです。すみません^^;

      本当のこと言うと、左右違う道を行っても二人はどこかで合流するような気がします。
      電波的なものを受信しつつ(笑

      おたおめ! 鏡音!

      2011/12/27 19:05:16

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