AM 0:00

ステージに向けられたスポットライト

響く歌声

歌姫なんて呼び名の女は、また人々を魅了していく

…誘惑なんてしてるつもりはないのよ?

フロアには大勢の客


洒落たドレスを纏ったその女は、今宵も”歌”で満たされないものを埋めていく


沢山のファンレター

幼い頃からの仕事仲間

自分の歌を好きでいてくれる客たち


沢山の幸せがあるはずなのに、何一つ満たされない気がしてしまう


歌う喜び

特別な愛情

どんなものよりも欲しい


…欲張りだ、なーんて。


今はただ、目の前の客に精一杯の歌を届けるしかない。

ピアノ、鳴って。

歌声は加速する


ふと目の前に視線を置く

同期のいかにもな女の子

この子たちは幸せなのだろう。

人並みに恋して。

人並みに愛して。

人並みに愛されて。


私はあの子のようにはなれない

だから、せめてこの時間だけでも、、、

”誰か”を虜にしたくて。

真っ赤な唇から紡ぎ出される女性的な、普段とは打って変わったその姿はまさに歌姫

この時間だけ、

少しくらい、夢を見てもいいわよね?

夢ならもっともっと長く、

魔法にかけられたシンデレラだって、そう願ったはずだ。

夢なら覚めないで

夢の中だけでもいい、私を見て

もっと夢中になって

もっと釘付けになって

私だけを見て

ナカナイ女=イイコじゃないのよ

もっとカゲキでもイイ

もっと夢中にさせたい



「ありがとうございました」

最後のお客様が帰った

AM 2:00

控え室にはたくさんの箱

…ごめんね、そんなに要らない。

退屈だ。

『お疲れ様です』

「あら、こちらこそ」

『いつも遠くから見ています。あ、これ、どうぞ』

貴方は丁寧すぎる、いろいろ。

受け取ったのはカクテルグラス

チェリーブロッサムだ

「…美味しい。」

疲れた体にチェリーの甘さが広がる

ほぼ同世代なのに、ここまでの腕を持っている貴方は本当にすごい

『気に入っていただけて光栄です、歌姫』

歌姫……

なんで、その名前で呼ぶの

いつもそうだ、もっと知りたいのに、要らない距離を置いてくる

そうやって欲しいものだけ手に入らないんだ

…じゃあ例えば、こうしたら貴方はどうするだろうか

「ねえ、歌姫だったら、愛してくれる…?」

「愛して欲しい」

かなり強引に、ストレートに、言葉を投げる

貴方が私を歌姫と呼ぶのなら、此処はまだ私のステージだ

足りないの

欲しいの

さぁ、貴方は私のステージの上でどんなアドリブを効かせてくれるの?



…でも、帰ってきたのは望まないつまらない答えで

『……貴方は私ごときに落ちてはいけない。
それに子供は寝る時間だ。』

「コドモじゃない」

『悪いけど、これで』

頬に落とされた口付け

違う、

「そんなんじゃない」

『納得してくれませんか』

「当たり前じゃない」

『仕事がまだ残ってるんで、これで』

今日も、また………

全部曖昧に返されてしまう

昔からそうだ

掴み所がなくて、優しいけれどどこか悪戯で

…それくらい、わかってる。

ここにきたときから、ずっと、

私に興味のないことくらい。

きっと今のはちょっとした遊び心なんだろう


酔いが回ってきた。


眠気が隙を突く

……まだ、カクテルは飲みかけなのに。


今夜もおあずけか。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

チェリーハント 自己解釈

えっと、luzくんの チェリーハント の 自己解釈をしてみました。
結構原作とかとかと離れてますがいいよね……?

ちなみに今日はキスの日ってことで便乗してみました←

前のバージョンで続き?ます

駄文読んでくださった方感謝!

2015 9.6 追記
ピアプロに閲覧数機能という面白い機能がついたようで…!
結構今見ると死にたくなる文章ですが、閲覧ありがとうございます!まさかこんなに見られると思ってなかったよ!

閲覧数:42,125

投稿日:2015/09/06 15:23:02

文字数:1,438文字

カテゴリ:小説

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