どれ位の間眠っていたんだろうか、目を開けるとさっきとは違う部屋に居た。手足は鎖では無く医療用の抑制帯で括られていた。身体を起こし辺りを見るがスズミの姿は無い。と、背後のドアが開き桐子が現れた。
「自分の身体より彼女を優先するなんて。連絡が無ければ死んでいたのよ?
感謝して欲しい位だわ。」
「…スズミを解放しろ。彼女は関係無い。」
「関係無い?うふふ…面白い事言うのねぇ。10年間もずっと想い続けて来た愛しの
スズミちゃん、でしょう?彼女は貴方の全て…血清の事も、精神的にも心の支え。
貴方は彼女無しでは文字通り…生きられない。」
「…スズミに何かしたら…お前を殺す。」
「あら、怖い顔。心配しないで、貴方が協力してくれるなら彼女は無傷で解放
してあげる。」
桐子は手にした書類を俺の前に差し出した。数枚に渡って公式や表が書かれている。これは…成分分析と構成式…?
「…っ!お前っ…!」
「あら、もう判った?」
霊薬、抑制剤、そして治療薬の元となる血清の分析結果、それらを全て集めて導き出したと思われるその答え。
「俺の血清を霊薬にするつもりか…。」
「ご名答。貴方の血清を合わせれば発狂衝動は無くなるし抑制剤も要らなくなるわ。」
「その変わり自我も無くなる…怪我や病気の変わりにお前の忠実な人形の完成か。」
狂ってる…そんな事をしたらBSはもう治療すら出来ない…!やっと此処まで来たのにこんな所で…!
「うふふふふふ…心配しないで、貴方だけは大切に面倒見てあげるから…。」
「…っ!触るな!」
「貴方に触れて良いのも彼女だけ?…前々から本当に目障りな子ね…何も知らないで
ヘラヘラして、貴方の事は独り占め、影で貴方に守られてるとも知らないで暢気に
ぬくぬくと愛されて…。ああ、そうだわ、彼女を貴方の目の前で殺してあげよう
かしら?愛しいあの子の死体を前に、貴方はどんな顔を見せてくれるかしら?」
「止め…止めろ!止めろスズミだけは…!」
「だからそれが気に喰わないって言ってるのよ!」
―――コツ…コツコツ…
微かな音がした。ノックでは無かった。
―――コツコツ…コツン…
窓の方を見遣ると雀が窓ガラスを突いていた。
―――コツコツコツコツ…
「何よこの雀…。」
苛立たしげに桐子が窓をカラカラと開けた時だった。
「きゃああああああああっ?!」
窓から一斉に鳥が押し寄せ桐子に集った。桐子はパニック状態で鳥を払っている。
「相楽博士!うわっ?!な、何だこの鳥?!」
「ボケッとしてないで何とかしなさいよ!」
BeastSyndrome -92.凶行と嘴-
昔こう言う映画あった様な
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