君は碧空を見つめる 三日月を瞳に抱いて
漏刻の水銀は干上がり 時さえも止まる夜

糸を切られた星が 稲穂のように降るよ
銀の茨の鳥籠で 僕は真紅の薔薇を吐きながら 夢を見ていた

追い求めなくても幸せになれたのに
今はもうガラスの中の世界を覗くだけ

羽なんて見えないのに 飛べるって知ってた
裸の僕たちは 何よりも自由だった


翡翠で織られた草は 薄荷の味がする
宇宙の湖水を渡るのは 透明な魚の群れ

誰しもが口を利いた 虫も石も物も
口づけた指先を噛んで 君は折れた鉛筆の代わりに 血で床をなぞる

刻み出した模様は祈りにも似た画(え)
まだ君の中に生きているものの証
意味など価値など何一つ持たずに
存在を許されたこと表す抵抗

羽なんて見えないのに 飛べるって知ってた
裸の僕たちは ひたすらに無敵だった

何も鎧(よろ)わないのに 傷つけられなかった
今はただ哀れに 鍍金(めっき)の羽根をまとう


知恵より大事なことを知ってた、ねぇ
忘れられた歌をもう一度歌っておくれ

思い出せても空へは もう帰れないだろう
それならば眠りを せめて優しい夢を

羽なんて見えないのに 飛べるって知ってた
裸の僕たちは 何よりも 誰よりも 自由だった

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

Ad libitum.

――――想像力の欠如の話。

タイトルの「アド リビトゥム」は音楽記号で「自由に」の意味。“アドリブ”です。
創作に関わっていると、歳を取るたびに子供の時のような感性や想像力は死んでいくなーと余計に実感してしまいます。
そんなところへの嘆きや憧憬を詰めて書いた詩です。

閲覧数:168

投稿日:2015/12/06 20:57:44

文字数:527文字

カテゴリ:歌詞

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