車の中は気まずい空気で一杯だった。

「何で俺が…。」
「全員行く訳には行かないだろ。」
「いや、俺も留守番…。」
「未来の妹の実家になるかも知れないし。」
「あぁ?!」
「やーだー!もーう!詩羽さん気が早いー!!」

この状況下で喜ぶ木徒は心底大物だと思った…。木徒…兄ちゃんは11歳も年上のひねた弟なんて嫌だよ…。

「あの…私迄着いて来てしまって良かったんでしょうか?日も浅いのにご迷惑に…。」
「香玖夜。」
「はいっ!」
「…俺の家見ても…その…引くなよ?」
「ふぇ?」

その言葉の意味を理解したのはそれから暫く走った後だった。

「…………。」
「お前等何口ポカーンとしてんだ?」
「詩羽さん…ここ…何処の大公園ですか?」
「だから実家。」
「普通の家は門からも車で進まねぇよ…。」

最早『家』では無くリゾートホテルか旅館の域では無いだろうか…?びっくりし過ぎてドン引きしてる自分が居た。入り口から会う人会う人が丁寧にお辞儀をする。

「お帰りなさいませ。」
「お帰りなさいませ。」
「急に済まないな、総帥は奥か?」
「はい。」
「あ、あの…羽鉦さん…!」
「ん?」
「わ…私…ごめんなさい…!足が…震えて…!」

香玖夜は今にも泣き出しそうな顔で俯いたままカタカタと震えていた。無理も無いだろう、正直俺も気圧されて一人では歩ける自信が無い。

「…途中までな。」
「ごめんなさい…っ!」
「良いなぁ…香玖夜ちゃん。」
「ん?俺等も繋ぐ?」
「うん!」
「お兄ちゃんもビビッてんなら未来の弟が手繋いであげようか?」
「…帰って良いか?」

怒りで緊張は解けた。有難うは言わない…。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

BeastSyndrome -88.え?…家?!-

もう嫌味すら出ません

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投稿日:2010/07/01 15:52:49

文字数:698文字

カテゴリ:小説

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