確かに寒いよ冷えてたし汗かいて
寒さも忘れるくらいエプロンでキッチンで
あんなに準備したのになんでだろうな
嘘つきの体温計とボーッとする頭

まだ片付け切れていないキッチンは
お母さんがまとめてくれたみたい
ラッピングも考えて包み込んだのに
行き場を失ってまるで私みたいだ

大人はそんなのどうだって良いって
来年もあるって簡単に笑ってるけど
私には今日しか勇気が出なかったんだ
短い人生の中なら尚のことでしょ?

情けなくて泣いてしまうどうしようもない
間の悪い事ばかり思い出して仕方がない
せめて何時間か後に熱が出ていれば
そんなこと考えてもチョコはそこにある


確かに望みは薄かったかも憧れて
立場も忘れるくらい気合い入れレシピ見て
あんなに用意したのにどうすれば良かったかな
偽りの風邪薬とトロッと甘いシロップ

まだ散らばったままの私の気持ちも
お母さんがまとめてくれないかな
ラッピングはしなくても良いからさ
どうしたって可愛くなんかならないよ

明日になったら何もかも終わって
何かに喜ぶ子と悲しむ子がいるんだ
私にはそんな権利も無くなっちゃった
短い卒業までなら尚のことでしょ?

自分に言い聞かせるほどに泣けてくる
伝えたい事ばかり思い出して仕方がない
せめて準備の前に熱が出ていれば
そんな事考えても気持ちはここにある


頭を冷やすタオルを顔にかけても
涙はポロポロこぼれてシーツに落ちる
泣き声を塞ぐために口に置いても
今日が終わるのはもう止められない

その代わり腫れた目元は少し冷えて
お父さんにあげる時は大丈夫だった
私が世界の終わりみたいな顔だから
お父さんもお母さんも少し困り顔で


夜になってベルが鳴って誰かが訪れた
聞いた事のない階段の足音がする
ノックも無しでドアが開いた瞬間
頭が真っ白になって私が飛び散る

「チョコもらいにきた」不器用に呟く
机に置いたままのラッピングを指さす
「ちゃんと渡して」促されるまま渡す
何も云わず部屋を出る真っ赤な耳たぶ


私が燃えそうに熱いのは風邪なのかな
熱で頭が混乱して夢でも見てるのかな
都合の良い夢だからきっとそうなんだ
夢で渡せただけでも良かったって思った

お母さんがお見舞いのプリン持ってきて
夢じゃないって現実を知らせてくれた
「お菓子持ってもらって帰った」って笑って
それを聞いて私はしばらく何も喋れなかった


熱が引いて次の日に会うとお礼を言われた
「あれ美味しかったありがと」を少し早口で
プリンのお礼と夢だと思ったのを云う笑った
「お返しわかんないから一緒に選んで」だって

湯気が出そうになるくらい
熱がぶり返しそうだった

そんな寒い二月中旬のお話

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

二月半ばに風邪を引く

全ての勇気に幸あれ。

閲覧数:36

投稿日:2022/02/14 20:40:10

文字数:1,130文字

カテゴリ:歌詞

クリップボードにコピーしました