紫の夜空に大きなまぁ~るいお月様。
空のお月様と同じ金色の髪を上の所で結んだ男の子が、今日の一日分の疲れを吹き飛ばす様に、少し大きめの声で
「あー。今日は朝から忙しかったなぁ・・」
僕と双子の姉の十二歳の誕生日。朝から色々な所に顔を出しお祝いしてもらい、やっと今日、最後のルカ女王様との拝謁で忙しかった一日が終わる。
「う~ん」
少し腕を伸ばし体をほぐす様に動かしながら考え事をする。
ルカ女王様ってどんな方かな?
父上や母上からは予言の女王でピンクの髪の美しい方としか聞かされていない、本質や人柄は自分で判断しろということかな?
「レン!!」
僕が考え事に没頭しそうになった時、双子の姉のリンの呼ぶ声が聞こえた。
僕と同じ青空色の瞳。僕を見つけたからか嬉しそうな表情で、肩まで伸びたお月様色の髪を揺らしながら小走りに駆けてくる。
いつも、つけているリボンは正装用のベールに変わっていて、リンがいつものリボンじゃないから変な感じがすると言っていた。
「リン。慌てると転ぶ・・」
僕が最後まで言い切る前に足にスカートを絡ませよろける。
「きゃっ!!」
慌てて僕は、リンに走り寄り抱き止める。
「言った傍から転ぶなよ」
「えへへ。ありがとうレン」
リンが照れた様に笑う。僕はリンを立たせながら聞く
「急いでいたけど、もう拝謁の時間?」
僕はリンに確認する
「まだ、大丈夫だよ。でもね、そろそろ探しておいでってお母様に言われてね」
「そっか。じゃあ、行こう」
僕はリンを促して歩き出す。
「でも・・お母様も心配性だな。拝謁の時間には遅れないよ、なぁ?」
僕が横を歩くリンに同意を求めれば、リンがクスクスと笑いながら
「そうかな?レン、方向音痴だよね?昔からよく迷子になっていたし、お母様も心配して私を呼びに来させたんじゃないかな?」
リンが昔を思い出すように言った。
僕は慌てて
「方向音痴じゃないし。いつも、リンがなかなか帰って来ないから探しに行ったら・・なんか迷子になって・・・」
僕の声が最初は大きかったが徐々に小さくなっていく
「迷子になっているよね?」
「はい。ごめんなさい」
僕は素直に謝った。
悔しいが、僕が探しに行ったはずのリンが、いつの間にか帰って来ていて僕だけが皆に捜索される。何故だ・・・。
僕は話を変えた
「リンは余裕あるな、ルカ女王様との拝謁、緊張しないのか?」
リンが僕の言葉に、この後のルカ女王様との拝謁を思い出したのか、顔を強張らせながら答える
「そんなの・・緊張するに決まってるよ。でもレンもでしょう?」
リンが声を小さくしながら答える
「うん。まぁな・・」
「それに、私は拝謁が終わった後、女王様のお屋敷に引っ越しする事が、嫌だな・・。家族や皆に会えなくなるんだよ・・寂しいよ・・・」
リンの声がさらに小さくなる。
僕は、リンの頭を少し乱暴な手つきで撫でながら元気づける様に話かける
「大丈夫。僕が傍に居るだろう。それに修行を頑張れば、直ぐに家族や皆に会えるって」
「うん・・。レン、ありがとう。レンは私の守護騎士様だもんね、レンが傍に居てくれるんだもんね、頑張るよ」
少しは元気が戻ったかな?
リンは、僕達が産まれた時に女王様から予言がなされ、リンが次の女王候補だと告げられた、そして女王候補は、十二歳になると家族から離れ、女王の許で修行を始める。その際には身辺を守るための守護騎士を一人か二人連れて行かなくてはいけないんだ。今の所リンの守護騎士は僕、一人。
リンと話しながら歩いていたらホールの扉の前に着いた。
静かに大きな扉が開き、二人でホールに入り父と母の許に行く。
「レン。間に合ったか」
僕達と同じ色の髪と瞳を持つ父が此方を振り返る。
顔は無表情だが、僕達が拝謁に間に合ったので安心したのか雰囲気が少し柔らかくなる。
そこに僕達より少し明るい色の金の髪に明るめの緑色の瞳を持つ母が、リンにいたずらっ子見たいな表情で
「リン。レンを探して来てくれてありがとう。レンは迷子になって、いなかったかしら?」
「大丈夫だったよ」
リンが母親の許に歩きながら嬉しそうに答える。
僕も父さんに近付きながら質問する
「父さん。ルカ女王様との拝謁が始まりそうですか?」
「ああ。そろそろ・・」
僕が父さんの左側に並びリンが母さんの右隣りに並ぶと、タイミングよく声が聞こえて来た。
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