【第十九話】DESPAIR

 ルカさんの胸に堂々と突き刺さる、長剣。

 噴き出す、鮮血。

 言葉にできない痛みに、歪む彼女の顔。

 「……く…は……っ」

 桃色の髪を靡かせながら、前のめりに倒れる。

 「ルカさん!!!!」

 「ルカ!!!!!」

 グミさん、メイコさん、レン、そして私。
みんなが、敵であるルカさんに駆け寄る。

 「なんでだ…」

 みんなが状況に凄惨さに絶句する中、ひとり呟いたのはグミさん。

 「―――は………が……はぁっ……」

 ルカさんの口からは、そんな荒い息しか聞こえない。

 「なんでだ……?」

 またグミさんが、つぶやく。

 そしてゆらりと立ち上がる。

 「なんで…、おまえはいつもそうなんだ…よぉ……ミク…………。仲間まで殺すことないだろ…。どうしてだよ……。―――――――教えろ」

 光が全く宿らない瞳で、さっきルカさんが倒れていたところに平然と立っているミクさんを睨む。

 「うーん…。だって面白くないしぃ、ルカってば私を裏切ったし―、どっち道あのままじゃ使い物にならないしさーあ?」

 「使いモンになるかならないかの問題かよ?この状況作っておいてそんなこと言えるなあ。てか、さっきルカに使ったの、【禁忌魔術】だろ…。しかも仲間を―――…【紅雲】って―――!!」


 そういえばさっき…、ミクさんが【紅雲】って呟いていた。
それに【禁忌魔術】?

 「レン、【紅雲】って?あと…、【禁忌魔術】って?」

 「お前なぁ、―――【紅雲】っていうのは、雲のようにした武器を相手の体に忍び込ませて、合図とともに相手の体内から突き破って、紅く染めるっていう魔術だ。近未来魔術が開発されてから、人の為にならないもの、必要以上の殺傷能力を兼ね備えたもの、人を殺すために開発されたものは、【禁忌】とされてるんだ。【紅雲】はその【禁忌魔術】に入る」

 「それで―――ルカさんは――」

 「ああ。皮肉だけど、見事に突き破られた」

 ルカさんは今も、胸を貫かれた痛みで、もだえ苦しんでいる。

 「どうにかできないの……」

 「…カイトがいればなあ……」

 胸が痛む。

 今カイトさんは、ルカさんの隣で深い眠りについている。
もう二度と醒めない眠りに。

 私は簪をぎゅっと握りしめた。

 「んもう、いつからそんな生意気になっちゃったんだって!!昔はもっと―――」

 ミクさんとグミさんはまだ対立している。

 「―――違うね、最初から生意気だったのかな?」

 「なっ!!?」

 「みんなが真実を知ったらどうなるかなー??きっとリーダーとして見てくれないよぉ?だってグミ。アンタは―――」

 「やめろっ!!!」

 ミクさんは楽しそうに笑いながら、グミさんに近づいた。
一瞬にして。

 そして、私たちにも聞こえるくらいの声で呟いた。

 

 「―――人殺しでしょう―――?」




 「え…?」

 「人…殺し……?」

 「そんなはず…」


 グミさんは、悔しそうに下を向いている。

 「く…っ……そぉ……!!!」




 そんな…。


 
 「く……は…あ………っ」



 ルカさんが、苦しそうな声を上げた。

 ミクさんがちらっとそっちを見る。


 「うるさいなあ…」


 パチッ、と。
指を鳴らす。

 とたんルカさんから苦しみが消え、声も出なくなった。


 そして、動かなくなった。

 「ルカさん…?」

 まさかこれは…。


 そ、と。

 ルカさんの口元に手をかざした。


 息は―――無い。



 血の気が引くのがわかった。

 ルカさんは、もう目覚めない。

 なんてことだろう。

 ミクさんは人じゃない。
人の皮を被った―――怪物だ。



 「ミクさ……!!??」


 「うるさいわよ、リン。そんなくだらないことは置いておいて、昔話でもしましょうか。みんな疲れてるでしょ?」

 「ミク!!やめろって、言ってんだ…」

 
 ―――とさ…。

 と、グミさんが力が抜けたように、倒れた。


 「大丈夫よ?ちょっと眠ってもらっただけ。昔話の邪魔になっちゃうからね?じゃあ――」




 ミクさんはもう一度、嗤った。


 誰も何も言えない。

 逆らえない。


 私たちの隣には、この戦いを終わらせる為自ら死んだ青髪の青年と、胸に剣が突き刺さって血塗れのまま安らかに眠る桃色の髪の女性が横たわっている。


 異常な状況。

 絶句。

 絶望。


 



 

 「―――はじめましょうか―――」











 

 

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

CrossOVER NoIsE.

グミさんの過去を書く予定です。

ミクさんの人でなし。
残酷すぎる。

て言うかこの表現大丈夫か?

閲覧数:176

投稿日:2012/08/19 14:53:48

文字数:1,934文字

カテゴリ:小説

  • コメント2

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  • しるる

    しるる

    ご意見・ご感想

    ルカさんにチャンスはなかった!?
    いい人になるチャンス~

    グミの過去編、そこにミクの過去も含まれているのかな……

    2012/11/24 19:23:49

    • イズミ草

      イズミ草

      全開でちょっといい人になりましたよ!
      カイトさんとのところでww
      根はいい人なんですよう><

      うーん、ちょっとですかね??

      2012/11/24 19:25:52

  • Turndog~ターンドッグ~

    Turndog~ターンドッグ~

    ご意見・ご感想

    …ぞわり…

    怪物だ。このミクは化け物だ。
    …否、これは「ミク」なんかこれっぽっちも残しちゃいない。
    そうだ、これはおそらくミクの着ぐるみを来た地獄の悪魔なんだ…。

    …悪い意味で言ってんじゃないですよ、残酷表現が素晴らしすぎるって意味で言ってんですからねwww
    残酷表現は苦手なんだよな…。やろうとすると絶対引っかかるぐらいやっちゃうからwww

    人殺し・・・もしかして…それが理由ではじき出されて…?

    2012/08/26 20:22:43

    • イズミ草

      イズミ草

      そうですね、自分でもびっくりしてます…。
      無邪気な狂気って、こんな怖いんだなって…。
      小悪魔じゃないですよねwwもう正真正銘悪魔です。

      残酷表現がうまいって、喜んでいいんですかね…ww

      ほんとはもっと、血まみれにしたいですが…。

      2012/08/27 11:07:25

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