ソニカさんは、自分が勤めるゼロジー文具で、新しく作る商品「ミク人形グッズ」の話をするため、
郊外にある、テトさんのお店「つんでれ」にやってきた。
おもちゃ屋のキディディ・ランドで見た、手作りのぬいぐるみを気に入り、商品化することにしたのだ。
カイくんに書いてもらった地図を頼りに歩くと、静かな住宅地の中にテトさんのお店があった。

お店には、フィンランドやノルウェーなどの北欧の雑貨や、手作り小物がいろいろ並んでいる。
小さなカフェ・コーナーのテーブルに座って、ソニカさんとテトさんは打ち合わせを始めた。

「みなさんが作ったぬいぐるみはとっても可愛いから、きっと人気が出ると思うわ」
「そうだとうれしいわ」
テトさんは笑った。
「ぬいぐるみをそのまま写真にとって、それを商品デザインに使おうと思うの。文具やパスケース、で」
ソニカさんは、商品の企画書を見せた。
「わかりました。柄のデザインやレイアウトはデフォ子さんにしてもらいます。そして、材料の質感や商品の名前、手作りっぽいイメージ作りとかを私がやります」
と、テトさんは言った。

●ゆっくりお茶を飲んで打合せ

テーブルの上に置いてあるミク人形のぬいぐるみ。
その頭をなでながら、
「もし文具と小物の人気が出たら、ぬいぐるみのシンプル・バージョンを量産品として、うちの会社で出せたらいいなと思ってます」とソニカさんが言った。
「まぁ、そうですか」
“自分たちの作品が、商品として世の中にたくさん出回るのは嬉しいな”
テトさんは思った。
「そうなるとライセンス商品だから、コピーライツ(まるCマーク)はテトさん、デフォ子さん、あとミクちゃんということになります」と、ソニカさんは説明した。

その時、2人のいるテーブルへコーヒーを運んでくれた子がいる。
“わぁ、背が高い子”とソニカさんは思った。
「ありがとう、ルコ坊」
テトさんの言葉に、その子はにっこりと笑った。
ルコ坊は、お店の近所に住む小学校6年生で、学校が終わると、ときどきお店を手伝ってくれる。
ちょっと変わった雰囲気の子だが、笑顔がかわいいなとソニカさんは思った。

出されたコーヒーを一口すすって
「わあ、おいしい」
思わず、ソニカさんは声に出した。
ルコ坊の淹れるコーヒーはおいしいと、お客さんたちに評判だ。
テトさんはカフェ・コーナーのメニューにもいれている。

ソニカさんとテトさんとルコ坊の3人は、テーブルでゆっくりとコーヒーを飲んだ。

●礼儀正しいソニカさん

「そうだ。ソニカさんに聞こうと思ったの」
テトさんが、1枚のカードをとり出す。
こまめなソニカさんが、仕事先の相手に送った手書きのカードだ。
「これからミク人形のお仕事を一緒にやりましょう。よろしくお願いします。のし」
と書いてあった。

「この最後の“のし”って、何でしょう」
テトさんは聞いた。
「あら、インターネットで、挨拶でみんな言ってるから。“かしこ”とかと同じかと思って」
「それは、カタカナでノシと書いて、手をふる姿の絵文字なんです」
テトさんは笑って言った。
ソニカさんは日本人と英国人のハーフなので、礼儀正しいが、日本のしきたり等にはちょっとうとい。
「あらー、そうなの。これまで友達や仕事相手にもみんな“のし”って書いちゃったわ。これからはやめた方が良さそうね」

“それはやめた方が良い” ヾ(・ω・o)

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玩具屋カイくんの販売日誌 (22) テトさんたちのミク人形

みんなで作るミク人形グッズ、商品化です

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投稿日:2009/09/12 11:53:25

文字数:1,413文字

カテゴリ:小説

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