いきなり寮に警察が来たと思ったら訳も解らない内に連行されて数日。私はてっきり薄暗い取調室でカツ丼とか出されて尋問されると思っていたんだけど…。

「ただいまー。」
「ワンワンワンワン!」
「わぁっ?!ちょっと黒ゴマちゃん!!スリッパ散らかしたら駄目だってば!!」
「くろあめだよ。」
「どっちでも良い!」

何故か私は館林先生の家で2匹の子犬ちゃんの世話をしてる。家主の先生と響さんは朝方に着替えや荷物整理に戻って来ては直ぐに出掛けて行ってしまう。正直警察に捕まって留置場とかに居るより全然良いんだけど、これはこれで問題あると思うのよね。

「緋織ちゃんに怒られるんじゃないんですか?先生だってその…彼女さんとかに誤解されたりとか、学校にバレたりしたらまずいですよね?」
「文句なら天城君に言いなさいね、君のヘアピンだって証言したのは彼なんだから。」
「へっ?!それどう言う…じゃあ私あのバカ会長のせいで警察に捕まったんですか?!」
「だから、文句なら本人に言って。」

そう言って響さんはちょいちょいと玄関側のドアを指差すと荷物を持ってスタスタと出て行ってしまった。ドアの前にはかっちり制服を着た会長が居る。私は思わず掴みかかっていた。

「どう言うつもりよ?!私が傷害罪とか殺人未遂とか冗談じゃ済まされないわよ?!何の恨みがあって…!!」
「恨みなんて無い。」
「だったら何で…!」

引っ叩こうとした手を捕まえられて握り止められた。押しても引いても全然手が動かせない程強い力に少し言葉が詰まった。

「1人になるのが危険な状態で雉鳴さんが倒れた以上、澤田彩花を守る人間が居なくなった。」
「そうよ!だから彩花は私が…!」
「知られないで守れるのか?」

何も言えなかった。警察で雉鳴さんが刺されたって聞いて、私は何よりも先に恐怖心でいっぱいだった。自分の事しか考えられなくて、彩花の事とか他の皆の事とか全然出て来なかった。心配するからって彩花には知らせないって言われても、怖くて破裂しそうになって、きっと彩花に喋ってしまうだろう。そして彩花は病院でボロボロになるまで泣いてしまう…私のせいで彩花は泣く…。

「それに放って置いたら日向は必ず澤田を守る為に無茶をしただろう?刃物持ってる危ない奴相手に飛び出したり、寄って来る奴には子犬みたいに噛み付いた口調で威嚇して…違うか?」
「…違わない…。」
「ここなら少しは安全だから澤田の事は俺が出来るだけ守るから…少しだけ我慢して欲しい、それで許してくれるか?」

泣きそうになるのを堪えて頷いた。何よこいつ…まさかそんな事まで考えて私を警察に突き出したって言うの?彩花を傷付けない為に、私の事先生や響さんに守らせる為に?家空けさせるとか結構大変じゃないの?もしかして土下座とかしたんじゃない?ううん、絶対してそう、だってこいつバカだし。

「…バカ…。」
「…それはツンデレか?」
「いっぺん死んで来て。」

蹴っといてなんだけどお礼位素直に言わせて欲しいわたまには。

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いちごいちえとひめしあい-109.デレフラグをへし折る男-

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投稿日:2012/03/24 19:12:40

文字数:1,261文字

カテゴリ:小説

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