「なぁ、テト」
 いつになく真剣な声と表情で。
「お前――居なくなったり、しないよな?」
 もう一人のわたしが、わたしにそんなことを言ってきた。


「お前は俺にとって、太陽みたいなもんなんだ」
「俺はお前の光を反射する月だから」
「太陽が――お前が照らしてくれなきゃ、俺は輝けない。存在が、認められない」
「これは俺のエゴだって解ってる、だけど」

 頼むから――俺の前から、消えないでくれ。


 ――まったく。
「何を言っているんだ、テッド――」


 君は実に馬鹿だな。


「――君は月と太陽がどれだけ遠く離れているか、知らないのかい」
「一億五千万キロくらい、だったか?」
「……まあ、そんなところだよ」
 厳密に言えばそれは地球と太陽の距離だと思うが――大事なのは細かい数字などではなく、

「わたし達が月と太陽なら――」

 数歩歩み寄れば、その距離は僅か数十センチ――月と太陽の何百万分の一だろう。
 月と地球でさえ四十万キロも離れているのだ。ここまで近付けはしない。

「――こうやって隣に居ることも、触れることも出来ないだろう?」

 至近距離でテッドの顔を見上げて、その頬に指先で触れる。
 少し戸惑ったようにわたしを見る彼ににこりと笑ってみせて、

「わたしだって――君が居なきゃ、隣に居るのは君じゃなきゃ、駄目なんだ」



 一人で輝ける君を雁字搦めにして離さないのは、他でもないわたし。
 君に依存しているのも、君が居なければ輝けないのも、全部全部――わたしの方なのに、ね。

 なんて。
 絶対に言わないけれど。

 君の言う“わたしの光”が君自身のものだと、君が気付いていないのならそれでいいんだ。
 だって、それなら君は――わたしの前から、消えないから。


(実に馬鹿だな――わたしも)

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

月と太陽(自給自足カップル)

 連載が終わったら投稿してやろうと思ってた自給自足CPのようなもの。
 あんまりこの二人のテキストはお目に掛かれない気がします。
 なので…という訳でもありませんが、二人の一人称二人称その他口調などなど、思いっきり捏造です…

 月と太陽云々は元々オリジナルで書こうと思ってたネタなのですが、ふとテトさんの「君は実に馬鹿だな」が浮かびまして。
 で、テドテトなんだかテトテドなんだかヤンデレなんだか何なんだかよく解らないものになりました…
 …最初はツンデレ要素がどこかに入る予定だったのに。

 あと、月と太陽と地球の距離なんかは適当に調べただけなので、何か間違っててもスルーして頂ければ。

 それでは、読んで頂き有難うございました。

閲覧数:324

投稿日:2009/11/16 22:55:36

文字数:766文字

カテゴリ:小説

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