消防車とパトカーと野次馬で辺りはざわついていた。

「ねぇ…大丈夫?顔色悪いよ?」
「ここは関係者以外立ち入り禁止ですよ~、君、入らないで。」
「バッ…啓輔は…!ここの住人は?!」
「住人の安否は判ってないよ。でもまぁこれだけ大規模な爆発じゃねぇ…。」

ぐらりと眩暈がした。ほんの半日前まで話していた、そして俺もあの部屋に居たんだ。なのにどうしてそれが今焼け落ちてるんだ?まるで実感が沸かない。夢なら…そう夢なら直ぐに醒めてくれ。

「ちょっ…大丈夫?!」
「菖蒲さん…そうだ、菖蒲さん…!ノア…!」
「お掛けになった番号は電波の届かない…。」
「何で…何でだよ…!どうしたんだよ皆!!」
「しっかりしてってば!使土君!一体どうしたの?!」
「仲間の…友達がここに…住んでて…電話が…!」

あいつならきっと無事なんだ。何があってもいつも平然としてて、時々嫌味っぽくて、皮肉屋で…だけど…いつも皆を気に掛けてくれてて…強くて…。頼む…頼むから無事で居てくれ…!



―――PiPiPiPiPiPi…PiPiPiPiPiPi…PiPiPiPiPiPi…



着信音が聞こえた。警察の押収品の中からだった。



「啓…輔…。」
「使土君!!」



その日啓輔は姿を消した。生死すら判らないまま…夜が更けて行く。

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BeastSyndrome -70.着信音-

主を失った迷い子達は何処へ行くのか

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投稿日:2010/06/22 23:58:10

文字数:559文字

カテゴリ:小説

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