ここでファミリーレストラン『はちみつの瓶』について話しておこう。
通称『ハチミツ』のウェイトレスは皆『ネーム』というものを使っている。
全員がその名札着けていて、お客との関係性を親しみ安くしているのが、そこの店長の考えらしい。
本名をそのまま使っている娘もいれば、ぜんぜん違う『好きなキャラクター名』『好きなアイドルの名前』を使っている娘もいる。
店の公式ホームページがあり、僕はそこでいろいろなことを知った。リリスの他にも何人かのウェイトレスがいてシフト制で早番、遅番があるらしい。それぞれの娘たちが個人でブログを書いている。
お客たちは好きなウェイトレスのブログにコメントすることができる。そうやってまた親しみ安さを強化しているのであろう。
僕はリリスのブログを読んだ。
コメントをすることはなかったけど、少しだけ彼女のこと知ることができた。年齢は二十歳、誕生日は六月三十日、アニメやゲームは少しかじる程度で、そこまで詳しくはないようだ。時々、有明のテーマパークでコスプレをするのが楽しいようで何枚か写真をアップしていた。他のウェイトレスや客からは『りりしゃん』と呼ばれている。
僕はまだ恥ずかしさがあったので呼ぶことはないだろう。
五月のある日、僕はまた中山センパイに誘われ『はちみつの瓶』に行くこととなった。
またリリスに会えるのかは解らないが、自分でもそれほど『その娘』だけを見ていたわけではない。
ちなみにセンパイは『カノン』という娘が好みらしい。はじめて行った時に少しだけ話した、おとなしめなお嬢さんだ。
店の扉を開けると一人のウェイトレスが案内をしてくれた。『カノン』だった。
いつものように夕食として、いくつか注文をした。先輩とは『会社のこと』や『私生活のこと』などを話しながら酒を飲んだ。すると奥から一人の可愛らしい少女が話しかけてきた。
「あら、今日はお酒をお飲みになられるんですね?」
僕は初対面の女の子だ。だけど、なんとなく見覚えがあった。
そうだ、ホームページで一番上に写真が載せられていた女性、名前は…たしか『メルモ』とかいったかな?名札を見るとたしかに『メルモ』と書いてあった。この店のチーフウェイトレスをしているとのこと。見た目は子供っぽく見えるのだが話し方がとても大人っぽい。
「こちらは、はじめましての方かしら?わたくし『メルモ』といいますの。これからも宜しくお願いしますね」
「はい、宜しくお願いします」
僕は返事をした。
「あら、お元気なのね…ふふ」
まるで、男の子を見るように僕を見ていたメルモさんだった。なぜだろう、見た目的にはあきらかに僕の方が年上なのに『メルモさん』と言ってしまう。
その日もいつもどおり、夕食を食べて少しだけ酒を飲んで、先輩と会社の事やいろんな話をしていた。そして、帰ろうと会計を頼もうした時、少し離れたところから…
「はああぁ~」
というような、ちょっとだけ大きな声が聞こえた。
「もう帰られちゃうんですか?もっとお話したかったです。」
リリスが僕の方に向かって話しているように感じた。実際には僕たち二人に対して話していたのだろう。
「また来るよ、その時はもっと話そうね。」
僕は少し慣れた感じで、そう答えた。
「絶対ですよぉ~、また必ずいらっしゃってくださいね。お待ちしてます。」
そう言うとリリスは、かるく手を振ってくれた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【小説】地下アイドルを推しています。第一章②

小説を書いてみました。
その第一章②です。

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投稿日:2018/06/05 00:04:26

文字数:1,399文字

カテゴリ:歌詞

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