むかしむかし笛使イの妙手　悠久の品を拵エき
曰く、風の流れだに　よき音を鳴らすめり
笛使イ　そのウツワ　生類のごとくあやつりけり
そは　まさに　魂宿す所業だった
星霜めぐり　語れる人　あやつれる人　あらずなり
制御なき中に泣く　狂イし音ばかりがマコト
甕覗く　きはの浅さに　その身の色語り云々
いまだ笛は息にさらされ　音を奏でている

使イの手よりかれし　カノ笛　今はヨロズにて
鳴き続ける　悠久のウツワ
命なきもの終ワりなし　カノ笛　今はヨロズにて
鳴き続ける　悠久のウツワ

「我、笛使イを継ぐ者なり」
告げし若者　腹にひとつの計り事
息殺す叢に　ののしるがモノのシンメンボク
うつろはぬ花　コロにはジカ　外れに咲くは狂イ花
とこしエに咲けと　花の他にいられぬは
アダバナ、徒労に他ならず

ゲに生まれし迦陵頻伽よ　坊主むしられ首切り雀
百まで踊り忘れずに　胴間声張り上げて
手折らば手折れ　ひと思いに

今を昔と呼ぶ　ゆくすエにも
この音が嗄れることはない
嗄れてしまえるあなたのノド　潰しの効かないわたしのノド
カイカイよ　こいこい　坊主むしって　赤きはニンニク
カイカイよ　こいこい　星霜めぐり　狂った調子のこの音を
チャント　キラッテ　クダサイナ

キハダに青を落とししアダバナ
自らが影となり地に伏すさま
使イの手より放たれた　カノ笛　今はカクリヨにて
刹那にナく　古のウツワ
ウツセミに　フシギは　雀の涙ほどでいい
カノ笛　今はカクリヨにて
刹那にナく　古のウツワ
鳥の跡　一粒　かわいて消えた