私の顔からは表情がなくなり、心からは感情がなくなった。
一度、本気で愛した人に、こっぴどくフラれてからだ。
どんなことも嬉しくなくなり、どんなことも悲しくなくなった。
ある意味最強になったといえるのかしら。
「君が大好き」
ある時、そう言ってくれる男の子に出会った。
彼は、私が高校時代、写真部に入っていた時の後輩だった。
髪の毛が綿菓子みたいで、穏やかに笑う子だった。
でも、嘘つきだった。
「僕はずっとずっと永遠に君を守るよ」
私は過去の失敗した恋を話し、付き合うつもりはないと言ったけど、彼はこう言った。
馬鹿馬鹿しい、と思った。
私は知ってるの。永遠の愛なんて、あり得ない。
そんなに言うなら勝手に愛してなさい、と告げた。
それ以来、彼は本当に私を愛した。
休日は必ず一緒に出かけさせられた。
私をモデルに、花や海を背景にした何気ない、たくさんの写真を撮った。
特に彼が好きだった紫陽花の花の前では大量に撮っていた。
キスすらすることなく、ただひたすらに私に笑顔を向けた。
私が仕事でミスをすると私の頭を撫でて一晩中過ごした。
「何でも僕に言って。君の涙が見たい」
「何よ、それ。普通、笑顔を見たがるのが優しさでしょ?」
「ううん。涙が君の今の本当の気持ちだと思うから。君はずっと前から、泣いてると思うから。僕が全部受け止める。だから、本当の君を見せてよ」
それでも私は馬鹿馬鹿しい、と思った。
恋なんて始まれば終わるしかないんだから。
そうして春夏秋冬が過ぎ――
本当に彼は行方不明になった。
あんなに毎晩電話をしてきたくせに、ある日を境に、メールも電話も一切通じなくなった。
私は驚かなかった。
悲しくもないし、嬉しくもない。ただ、やっぱりな、という気持ちだった。
所詮人間なんてこんなもの、と。
だけど、夜になると、スマホを手放せない日々が続いた。
何となく、また連絡があるんじゃないかという気がして。
そして三ヵ月後。彼から一通の手紙が届いた。
美しい紫色の便箋に、たった一行、
「約束を守れなくてごめんね。」
と手書きで書いてあった。
私をモデルにした写真も、無数に同封されている。
どれも、あり得ないほど笑顔で驚いた。
途端に胸が騒いだ。
とにかく急いで玄関を飛び出し、私は無我夢中で走った。彼と私のふるさとへ。
――そして今、私は丘に立っている。
彼の墓前に立ち尽くしている。
彼の好きだった紫陽花の花に囲まれている、美しい丘で――
私は一粒の涙を落とした。
彼は余命幾ばくもないことを知り、私を悲しませないよう姿を消したのだ、と彼の母が涙ながらに語っていた。
「約束を守れなくてごめんね。」
あの一行が頭の中で再生される。彼の人懐っこい声で。
私は手の中の手紙を握り締めた。
「馬鹿……」
どうしてもっと早く、この涙を見せてあげていなかったんだろう――
涼しい風が、私の頬の涙を拭っていった。
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