ねぇ Dear、
隣の家で最近、小さな仔猫を飼い始めたんだ
まだ人見知りもしない、片手に乗るような三毛猫で
生まれつき胸に病気があって、きっと大人にはなれないらしい

ねぇ Dear、
その子はとても温かくて、柔らかくて小さくて、
真っ赤な口をいっぱいに開けて、小鳥みたいにピィって鳴くんだ
名前を貰えないままで、「ねこちゃん」って呼ばれて暮らすその子を
僕はこっそり、君の名で呼んでる

ねぇ Dear、
ごめんね、変な意味はないんだ
こんな話をするつもりもなくて
ただその子が、この世界にいたことを
今日も隣の家の庭で、無邪気に駆け回っていたことを
誰かに、出来れば君に伝えたくて
もし叶うならほんの少しでも、覚えておいて欲しくて

そんな身勝手な僕のエゴや感傷を、君に押し付けて良いわけがないのに

ねぇ Dear、そんな顔をしないで
君を困らせたかったんじゃないんだ
ただ僕は、余りにも我儘で
優しい君が、僕のために言葉を選んでくれたことに、
申し訳ないと思うのに、どうしようもなく満たされていて
ねぇ Dear、ごめんね、大丈夫だよ
今日も僕は、こんなにも卑怯で醜いまま、
したたかに幸福に生きていける

ねぇ Dear、
自分のものでない仔猫を救えないのと同じように、
僕が僕の生き方を選べないことを話したら、君は滑稽だと思うのかな
君は確かに僕にとって、ガラスの外のあの小鳥で
僕は夜明けの短い夢に、もう届かない空を見ている

ねぇ Dear、ごめんね、忘れてくれていいんだ
ほんの少し、夢に憧れすぎているだけで
明日も僕は、君の名の隣の仔猫を探しながら
きっとしたたかに鈍感に、この世界を生きていける

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
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Dear,

閲覧数:166

投稿日:2019/07/29 01:31:57

文字数:708文字

カテゴリ:歌詞

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