白くて赤い目の兎が好きな女の子がいます。
耳の垂れた外国産の小さな兎が好きな女の子がいます。

垂れ耳兎はとある男が好きです。
ですが男は白兎に夢中です。
白兎は孤高です。
でも男は諦めずに白兎に告白します。
白兎は必要以上に人と関わることが苦手です。
何故かというと人と必要以上に関わってしまえば相手に依存し、自分を制御出来なくなるからです。
誰彼構わず依存する訳ではありませんが何度か依存してしまい、人間関係を壊しています。
だから男が告白をしても友人という関係を崩しません。
ですが男は他の人以上に白兎に近付きます。
男は自分をさらけ出します。
白兎は無視することが嫌いなので相手をします。
そんなことをしているうちに白兎の孤高の壁はなくなり、男と付き合うことになります。
白兎は男に甘えることを覚え、どんどん依存していきます。
そうなれば後の祭りです。
白兎は依存により、周りが見えなくなり大きな過ちを犯してしまいます。
男は一緒にいたくないと白兎に言います。
そして責任を取れと言います。
責任は謝って取れるものではありません。
人間関係を壊した罪は重いものです。
男は白兎に罵倒を浴びせます。
責任は簡単に取れるものではないのです。
会社ならクビ、減給で責任は取れます。
ですが人間関係の破壊は何で取れるのでしょう。
死か、失踪。
白兎は男に言われた罵倒と責任で脳のキャパシティーの限界を振り切ってしまい精神的に不安定になります。
鬱状態になった白兎を誰も知りませんし、知ろうともしません。
歩行も困難な足取りで向かったのは近くのマンション。
飛降り自殺を図るつもりです。
ですが白兎を見た人が尋常ではない姿に驚き、人を呼びます。
白兎の自殺は未遂に終わります。
家に帰ると電話で男からまた罵倒を受けます。
更に鬱が酷くなってしまった白兎は何も出来なくなります。
その後何とか鬱状態から回復した白兎は男から責任を取るように言われます。
人格や白兎自身を汚す言葉が白兎を襲います。
白兎は自分を消す事にします。
インターネットや現実世界で男と繋がるものを断ち、男の知り合いがいる場所には行かず、メールアドレスも変え、必要以上インターネットも人間も関わらなくなります。
白兎はまた孤高の道を歩き出しました。
そこに垂れ耳兎が男に告白をします。
男はあっさりと垂れ耳兎と付き合います。
するとすぐに垂れ耳兎は孕みました。
そしてその幸せを唯一白兎が断たなかったSNSで見せつけます。
白兎はそのSNSを退会すれば負かされるようで嫌だったので我慢します。
ですが垂れ耳兎と男の幸せは長くは続きませんでした。
出産直前まで生きていた子がなんと強い力で引き裂かれたかの様に千切れ、バラバラに子宮から出てきたのです。
性別は不明、元の形に戻る事が出来ない死体の子。
追討ちをかけられるように垂れ耳兎は二度と子を作れぬ身体になったことを知ります。
白兎はそれを知らず、両耳を音楽機器で塞ぎ、独り孤高に過ごしています。
そんなある日、いつもと変わらず両耳を塞いで街を歩いていると垂れ耳兎と男にすれ違います。
白兎は離れた距離から二人を振り返り見ます。
白くて赤い目の兎が二人の後を追いかけて行く幻影が見えます。
すると垂れ耳兎が白兎を振り返り見て、何かを叫びます。
両耳を音楽機器で塞いでいる白兎には何を叫んでいるのかわかりません。
一瞬の間の後、白兎は見ず知らずの人に捕まり、警察に連行されます。
捕まったときに白兎は両耳を塞いでいた音楽機器が外れ、状況を知ります。
どうやら垂れ耳兎が白兎を犯罪者だと罵り、周囲の人々が白兎を警察に突出したのです。
直ぐに垂れ耳兎が叫んだ誤解が解け、車で家に送られる事になります。
警察の人には名誉棄損で訴えることが出来ると言われますが白兎は首を横に振ります。
垂れ耳兎と男には腹が立ちますが関わりたくはなかったからです。
家の前で車を降りると初雪がちらほらと降り始めます。
白兎は両耳を音楽機器で塞ぎ、切ないウィンターソングを聴きながら微笑み、空を見上げます。
手を差し出すと雪が掌に触れて溶けていきます。

溶けていく雪を感じながら白兎は家の中に入りました。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

孤高うさぎの恋

とある少女と女性をうさぎに見立てて作った短編小説です。
二度と過ちを犯さないと誓ったはずが、犯してしまう白い毛と赤い瞳を持つうさぎ(少女)。
少女に嫉妬し、少女に恋した男を好きになった垂れた耳のうさぎ(女性)。
そして少女に恋し、少女を捨てた男。

孤高に生きようとするうさぎ(少女)に強く吹いた恋の風。
その終焉とは?

閲覧数:215

投稿日:2009/12/14 22:48:03

文字数:1,747文字

カテゴリ:小説

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