<14話 末文より>

(ヤマト国 某所)

 ガガーーーーーン!!!! ズガーーーーーーーン!!!!

 爆撃の轟音が戦場に響き渡っていたのでした。

兵士:ミゥ様! 陸戦型のギア共に、第5防衛ラインを突破されました!
ミゥ:くぅぅ・・・・あと4つしか猶予はないか…
兵士:魔導師の魔力バリアーと、こちらのギアの応戦では、第4ラインも危ないです!
ミゥ:・・・・・・ミズキ、ゆうま、りおん・・・・・早く素材を持ってきて!

 ヤマト国は緊迫の様相を呈していたのでした・・・・・・

<Dear My Friends!第2期 第15話 禁断の魔法陣>

(ライブラリー・スター号 ゆうまの部屋)

 ピー! ピー!

ゆうま:? なんかメールが入っているみたいだな。リンちゃん、レン君、ゲームの途中ですまないけど、メールを確認させて貰うよ?
リン:あ、すみません、熱中していて。リセットボタン、ポチッっとな

 ブーーーン…

レン:あぁぁぁ・・・・ようやく1勝出来るところだったのに・・・・・・

COMP:メールが一件届いてますよ~
ゆうま:開けてくれ
COMP:Ready

 こうしてゲーム画面が消えて、メーラーのウィンドウが開かれました。

COMP:ミゥさんからですね。特別回線経由で送られてきてます
ゆうま:傍受出来ない回線だな、こういうのは確か緊急時に使われるはずだが…

 とりあえずメールを読んでみることにしました。

***

----- Original Message -----
From: "Mew" <*******>
To: "Yu-Ma" <******>
Sent: ******
Subject: 緊急連絡

Mewです。傍受されない緊急回線での緊急連絡です。

現在、こちら、アキバ周辺のカンダ拠点の第5防衛ラインを、テイマー達の陸戦型ギアに突破されました。

こちらの防衛システムでは、次の第4防衛ラインも、いつ突破されるかわからない状況です。

素材は見つかったとの連絡は、こちらにも届いてます。こちらは、かなりヤバイ状況です。出来るだけ早くアキバの私の所まで届けて下さい。

甘く見積もっても、こちらが陥落するまで、5日程度だと思います。

早く素材を! お願い!

***

 読み終わったゆうまは顔面蒼白状態だった。すぐにノートPCのメール画面をそのままにして、本体をそのまま抱えて、ミズキの部屋に駆け込んだのでした。しかし、ミズキ達が不在だったので、メモ書きに書いてあった、“食堂兼会議室”に速攻で移動したのでした。

***

(ライブラリー・スター号 食堂兼会議室)

 ミズキ達8人は、ここで、くつろいで談話をしていたのでした。そこに、ゆうまがノートPCをそのままの状態で持ちながら、駆け込んできたのでした。

ミズキ:あら? ゆうま、どうしたの?
テル:リンとレンは一緒じゃないのか?
りおん:ゆうまも何か食べればいいのだ!

ゆうま:それどころではないです!!!!!

 ゆうまは、怒鳴り声で驚いた8人のリアクションを無視して、ミズキとりおんの前にノートPCを置いて、先ほどのメール画面を見せたのでした。

ミズキ:あら、ミゥからなの。緊急回線経由のメール?
りおん:確かあんまり良いことには使われないはずなのだ

 ミゥからの緊急メールを読んだ二人は、手から食べ物を落とし、同じく顔面蒼白状態になってしまったのでした。

テル:・・・・どうやら、相当ヤバイ状況になったらしいな
ゆうま:やばいどころではないです。すぐに行動に移さないと行けない状況です
ミズキ:・・・・・・あのミゥ様が、こんなに狼狽しているの、初めてだわ
りおん:アチシも初めてなのだ

テル:最上級にヤバイのはわかったから、とにかく、簡潔に説明してくれ

 あのテルですら、表情がこわばってしまった。事態は相当に悪いことが伝わったのだった。

***

ゆうま:うちのメインである“アキバ”周辺の拠点、“カンダ”が制圧されかかっているんだ
イア:あの、もしかして、“カンダ”って、アキバの隣の、あの“神田”ですか?
ミズキ:そうだと思う。イアちゃんは知っていると思うけど、すぐ隣の拠点なのよ

 こちらの時代でも、イアの知っているアキバ周辺は、それほど変わらないようだった。

りおん:昔は、書物の街なんて言われていたらしいけど、こちらではうちらの“情報”を管理している拠点なのだ…
ゆうま:どうやら、ミゥ様が用事でカンダを訪れている情報を傍受したテイマーの連中が、陸戦型ギアで攻めてきたんだと思う。ミゥ様の命が絶たれる事は、俺達の敗北と同義だ
りおん:ど、どうすれば…。あそこは本気でまずいのだ…

 そこへ、血相を変えて飛びだしたゆうまを追ってきたリンとレンも合流した。状況をすぐに飲み込んだ二人は、青ざめてきたのでした。

リン:それってつまり、私の世界近辺だと、法律とか書物が集まっている“クリアン”を制圧される事よね?
レン:まずいよ、これ…

 それを黙って聞いていたテルは、ようやく口を開けたのでした。

テル:愚問だが、この船がサホロに到着するのが一ヶ月後、それから陸路でソコに行く時間を考えて、間に合うと思うか?
ゆうま:それは、言うまでもない事なので言いません
テル:だろうな…

 この渡航の計画を立てた“めぐみ”は、一番青ざめていたのでした。

めぐみ:ど・・・・・どうすれば・・・・、こんな緊急事態、考えてもいなかったし・・・・・・
ミズキ:いえ、めぐみさんが悪いんではないです。私たちだって、こんな緊急事態、考えてもいなかったですし…

 テルは青ざめているアペンドに、冷静になるように耳打ちした後、ゆっくりと立ち上がった。

***

テル:皆さん、これから私が言う事に反対でも、最後までちゃんと聞いてから、反論してください。お願いします

 そういうと、ミズキ達3人の方に目線を向けた。

テル:ミズキさん達、今のこの方法では『間に合わない』、それは確認できました。だから『間に合わせる』事にします
テル以外全員:!?

テル:そのためには、“またしても”になりますが、イアさんの素材が必要になってしまいます。我々の時代の素材では、『間に合わせるための手段』を作ることが出来ません
アペンド:ちょっと! テル! それはだめだっt

テル:アペンド、最後まで聞いてくれ。素材と言っても、イアさんの髪の毛の先から5cm程度切り取った髪の毛の素材くらいあれば事足りる。『間に合わせる手段』である、『空間移動魔法陣』を作るにはね

イアは少し驚いてしまったが、すぐに冷静に戻って、テルに質問したのでした。

イア:前にテルさんに渡した、袋に入れたアレではだめですか?
テル:あれは君も解るとおり、“最終手段”の時に使いたい。今回はイレギュラー案件だから、新規に君から貰いたいのだ

 もう我慢出来なくなったアペンドは、テルの襟首を掴んで、くってかかったのだった。

アペンド:テル! いくら間に合わないからって、また“あの事件”と同じ事をここでやろうっての! だめ! それは絶対だめ!
テル:“あの魔法陣”の製作と処分を一緒に行った君ならわかると思うが、あの魔法陣の派生製品である“空間移動魔法陣”の素材は知っているだろ?

 アペンドは、掴んでいた襟首から手を離し、うなだれながら呼吸を整え、がっくりとして語りだした。

アペンド:・・・・・・・・ルカさんの持ち物の様な“特殊素材”、向こう側の出口を作るための“到着点に由来する素材”、魔法陣そのものを形成するための“数種の形成素材”・・・・・・・・
テル:そう、今回、“特殊素材”を出口用に使わず、形成素材に使うことで、空間移動すら出来てしまう魔法陣を、あの魔法陣の派生製作品として作ることが出来る、処分の時に偶然発見出来た、使い方次第では“世界すら変えてしまえる”、古来の言い方なら“スキマ”と呼ばれる魔法陣だ。だから、今回の渡航の時に、“使わなかった”、のだ。危険すぎるからね
めぐみ:それはわかります。その魔法陣は、あの魔法陣と同じ位、危険すぎます

テル:だが・・・・事態は一刻を争うのだ。我々が到着したときに、我々の目的とミズキさん達の目的、全てを行えない世界になった後で、我々が、“そこに行く”意味はあるのかい? アペンド。

 アペンドは依然、うなだれていた。そして、頭を横に振った。

アペンド:意味無いわ

 ミズキ達3人は、イアの方に目線を向けて、そして、土下座してしまったのだった。

ミズキ:イアさん、申し訳ないです! その素材の力は、私たちもよく知ってます! それでも・・・力を貸して!

 イアは、ミズキの前で座って、そして優しく声をかけました。

イア:ミズキさん、土下座はやめて下さい。立ち上がって、ね?

 ミズキは涙目をこすりながら、立ち上がったのでした。そしてイアは、うなだれているアペンドの所に行き、そして、逆に質問したのでした。

イア:アペンドさん? 私は、“あの魔法陣の事件”の事は、めぐみさんの“まとめ文献”でしか知りませんが、それでも、提案された魔法陣の危険性の事は、よく解ります
アペンド:イアちゃん・・・・・

イア:私の髪の毛の一部、使ってもいいですか?
アペンド:・・・・・・イアちゃん、貴女はそれでいいの?
イア:はい、元々、ミズキさん達に協力するつもりですから

 アペンドは今度は黙って考え、そして、ミズキ達に目線を変えました。

アペンド:・・・・・・わかりました。テル、イアちゃん、一緒に作りましょう。でも、ミズキさん達、あなた達も協力するんですよ? 1個素材が足りませんから

 立ち上がったミズキ達は、勿論と言う言葉と同時に、深々と頭を下げたのでした。そしてテルが、製作に関して口を開けたのでした。

テル:君たちから貰いたい物は1つ。その場所に由来するもの、最低でもヤマト国に関する物品だ。これを魔法陣の出口のために使う。何か持っているかい? 丸々1つ使ってしまうから、君たち本人とか、そのノートPCとか、無くなってしまうと困る物ではダメだ。それと劣化しているものでもダメなんだ

 ミズキ達は、自分達の持ち物のリストをチェックし、その後、自分たちの部屋に戻って、荷物を全部持ってきて、テーブルに開けて、調べ始めました。

ミズキ:あ、あの・・・・下着類は?
テル:うーん、劣化しているし、他の土地の汚れが付いているからだめだ

ゆうま:パソコンのゲームCDはどうですか? これ、アキバで買ったんです
テル:かなり惜しいけど、これも“傷とか劣化”が激しいからだめだ

 二人とも必至に探してはテルに聞いてみるの繰り返しだが、どれも、素材として使えないものばかりでした。長いこと旅をしていたことが裏目に出てしまったのでした。

 その時、りおんが取り出し、テルに聞いてみた物が1つありました。

りおん:あ、あの、アチシの好物のコレ、アキバで買ったチョコ菓子の『漆黒の雷・チョコスナック』なんですが…

 その時、テルとアペンドの目つきが変わったのでした。

テル:りおんちゃん、このお菓子って、この包み紙に入っているんだよね?
りおん:え? は、はい。真空パックされているから、中のチョコ菓子はアキバの製作所の状態のままになってますけど…

テル:よし! 見つかった! それを待っていた!
アペンド:行けるわよ、コレ!
りおん:よ、良かったのだ、買って置いて…

 こうしてテルは、りおんからチョコ菓子を“あるだけ全部”貰うと、アペンドと共に、比較的広い“この”食堂に、禁断の魔法陣を作ることにしたのでした。ちなみに“あるだけ全部”になってしまったのは、チョコ菓子そのものが小さく、魔法陣製作には1個だけでは全然足らなかったからでした。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

Dear My Friends!第2期 第15話 禁断の魔法陣

☆遅ればせながら、明けましておめでとうございます! 今年も宜しくです!

☆オリジナル作品第16弾である、「Dear My Friends!第2期」の第15話です。

☆今回は前回最後に続く“急展開”のお話です。

☆さて、これからは、“戦い”、のお話になりそうですね。

***

私がここに投稿したボカロ小説のシリーズ目次の第1回目です。第1作目の“きのこ研究所”~第8作目の“部室棟”+番外編1作目です。
作品目次(2009/12/25時点):http://piapro.jp/t/5Qsh

同じく、目次の第2回目です。第9作目“鏡音伝”~第15作目“ルカの受難”の途中までです。
作品目次(2010年1月6日~2012年2月7日):http://piapro.jp/t/9GY1

更に、完結した『Dear My Friends! ルカの受難』のみの目次も作りました。
作品目次(Dear My Friends! ルカの受難):http://piapro.jp/t/qj6A

***

hata_hata様が、第1作目のきのこ研究所のイメージイラストを描いて下さいました!。まことに有り難う御座います!。
『「却下します!」』:http://piapro.jp/content/oqe6g94mutfez8ct

☆hata_hata様が、第2作目のきのこ商店街のイメージイラストを描いて下さいました!。本当に有り難う御座います!。
『causality』:http://piapro.jp/content/c0ylmw2ir06mbhc5

☆nonta様も、同じく商店街のイメージイラストを描いて下さいました!。本当に有り難う御座います!。
『ようこそ!、きのこ駅前商店街へ!』:http://piapro.jp/content/dmwg3okh7vq1j8i1

☆あず×ゆず様が、第8作目の部室棟の死神案内娘“テト”を描いて下さいました!。本当に有り難うございます!。
『おいでませ!木之子大学・部室棟へ♪』:http://piapro.jp/content/rsmdr1c3rflgw7hf

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投稿日:2013/01/11 19:42:23

文字数:4,912文字

カテゴリ:小説

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  • tamaonion

    tamaonion

    ご意見・ご感想

    こんばんは。読ませていただきました。

    状況の詳しい把握や、前回までの展開の知識に乏しいので、それはこれからの楽しみにさせて頂きます。

    ひとつ、うなってしまったのは、神田(神保町?)の描写。
    私は古本が好きで、結構よく行くのですが、何やらハイパーな街に描かれていて、すごく新鮮でした。

    考えてみれば、書物や文字、文章は非常に濃濃度な情報ですね。
    今後あの街がどう変化していくのか。
    そんな感覚で読むと、すごく楽しいです。

    それでは、また。

    2013/01/14 20:00:23

    • enarin

      enarin

      tamaonion様、こんにちは! お返事遅くなりましてすみませんでした。

      > それはこれからの楽しみにさせて頂きます

      前回、今回と長編が続いて恐縮です。実は今回のは”第2期”のため、前作も引き続き読まないと、設定がわからないような作りになってしまってます。すみませんです。

      > ひとつ、うなってしまったのは、神田(神保町?)の描写

      本の街ということで、今回は情報集積地という事にしました。昔から有名な街ですし、アキバの隣なので、ちょっと使いやすかったのです。

      > 私は古本が好きで、結構よく行くのですが、何やらハイパーな街に描かれていて、すごく新鮮でした

      有り難うございます! そして、こんな設定で申し訳ないです。もう少し”歴史の残る街”にすべきだったと思ってます。

      > 考えてみれば、書物や文字、文章は非常に濃濃度な情報ですね

      そうなんです?。そこが魅力だったので、このような使い方をさせてもらいました。

      > 今後あの街がどう変化していくのか。そんな感覚で読むと、すごく楽しいです。

      有り難うございます! あんまり長くならない程度にまとめて、頑張ろうと思います!

      このたびのご閲読、コメント、有り難うございます!

      2013/01/18 12:00:03

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