ある日の夜、シェイドがセツナの家をたずねると・・。
「シェイド!いいことがあったの!」
セツナが笑顔で迎えた。

セツナの婚約者は他のお金持ちの家との結婚が決まり、セツナとの婚約はなかったことになった。セツナにとってこれほど嬉しいことはない。これからは普通に暮らしていけるのだ。ただ両親が積極的に助けてくれたわけではないので、両親との間の溝はまだうまらない。
「そうか・・、よかったなセツナ!」
「うん・・!本当に嬉しい、今日は嬉しくて泣いちゃったし・・」
セツナはあることを思い出した。それは先日、悲しくて泣いている時にシェイドに抱きしめられたことだ。いくら悪魔といえど男性に抱きしめられるなんてことは人生で初めてであったセツナにとって、少女漫画のような体験は少し恥ずかしいものになった。それを自分の「嬉しくて泣いちゃった」という言葉で思い出してしまったのだ。
「セツナ・・?なんだか顔が赤くなったように見えるが、私の勘違いだろうか?」
「さ、さっきあったかい飲み物を飲んだからかな!」
とりあえずごまかす。
「本当によかった。もうこれでセツナが悲しくて涙を流すことはないのだな」
「うん、結婚のことで泣くことはなくなったよ!」
「そうか・・」
「シェイド?」
シェイドがまっすぐセツナを見つめる。
「セツナが笑顔でいられると思うと、私も嬉しい」
そう言ってセツナを優しく抱きしめる。
今回は明るい話題であったが、セツナの恥ずかしさは変わらなかった。

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悪魔のレクイエム(3)

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投稿日:2023/10/29 18:02:54

文字数:626文字

カテゴリ:小説

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