どうしよう…タトゥーしてる人って何か恐いし、でもこのままじゃ変な所とか連れてかれて変な事とかされそうだし、どうしよう、どうしよう…あ!そうだ!警察!警察に電話して…!
「あ、携帯貸してよ、メアド入れるからさ。」
「ヤダ!返して!返して!」
「大丈夫だって。」
「ホント可愛いね~。流石アイドル。」
「返して!お願い返して下さい!」
恐い、恐いよ…!何なのこの人達。携帯無いと仕事だって困るし、どうしよう、どうしよう!誰か助けて、恐いよ助けて、お母さん!お父さん!マネージャー…!誰か…誰か…誰か!
「あれ?何泣いてんの?リ~ヌちゃ~ん。」
「ヤダッ!触んないで!もう携帯返して!帰る…帰るの!」
不意に後ろから影が射した。どうやら私に触っていた人の手を引き剥がしてくれたらしい。
「悪い、この子俺の連れなんだ。それ返してやってくれる?」
「あ?」
「…弐拍さん…?」
「何言って…痛っ…いてててててて!!!」
「返してやってくれる?」
「おいテメェ!!」
「おいで。」
弐拍さんは私の携帯を取り返すとそのまま私の手を取って早足で歩き出した。
「ど、何処へ…!待っ…弐拍さん!」
「取り敢えずあいつら撒くから。」
「は、はい!」
早足が何時の間にか小走りになって、その小走りも何時の間にか走りになっていて、段々と息が切れて来た。
「ちょっとゴメン。」
「へっ?…きゃっ!!」
「しぃーっ…静かに…。」
ビルの隙間に引っ張り込むと、弐拍さんは私を隠す様に抱き締めた。明るい路地に背を向けてやり過ごすつもりみたい。腕の中には私がすっぽりと納まってしまう。非常事態だから仕方無いのは判ってるんだけど…判ってるんだけど…!
「はぁ…やっと諦め…おわっ?!」
「……………。」
「ちょ、顔赤過ぎだろ…それ。」
「…走ったからです…。」
「悪かったって、けど…!」
「走ったからです!」
助けて貰ったお礼を言うべきだったんだろうけど、どうしても素直にはなれなかった。心の中で密かにゴメンナサイと言うのが精一杯。弐拍さんは軽く溜息をつくと辺りを見回して言った。
「翡翠!居るんだろ?翡翠!」
「はい。」
「この子家迄送ってやって。」
「判りました。」
恐っ!!闇から湧いて出た翡翠さんが妙に似合ってて恐い!じゃなくて!絶対怒らせたよね?
「ご、ごめんなさい!」
「別に…。悪かったな、連れ回して。」
「啓輔さん、どちらへ?」
「帰る。そいつ頼むわ。」
「仰せのままに。」
「あの…ありがとうございました!」
弐拍さんは私を振り返らなかった。
BeastSyndrome -23.どっちが泥棒?-
大事な物を盗んだのはどっちなんでしょうね?
※次ページはネタバレ用の為今は見ない事をオススメします。
菖蒲翡翠氏好きは張り切ってどうぞ。
コメント0
関連動画0
ご意見・ご感想