「・・・マジで」

「うん、ごめんね。嘘ついてたの」

もっと私を見て欲しかったから。

結ばれないと楽しくないでしょう？

「レン君の中の・・・1番になりたいです」

レン君はそっと頭を撫でてくれた。

「もう1番だけど」


＊


「レン君をちゃんとお父さんに紹介したいから、帰ったら家に来て欲しいな」

コソコソするのは苦手だから、ちゃんとお父さんやお母さんに認めてもらいたい。

幸い、お父さんは出張から帰って昼間でも家にいる。

お父さんなら分かってくれる。

私は嬉しさで甘い考えを抱いていただけで。



―――――運命は捻じ曲がっていた―――――


「帰れ！」


バシッッ


お父さんが頬を叩いた。


しかも叩いたのは私ではなく、レン君・・・


「レン君！」


「大丈夫だよ」


「でもっ」


レン君に近寄ったけど、強い力で引き剥がされる。


「リン、こっちに来なさい」


「やだっ」


「あなた！」


お母さんの制止の声。


お母さんだけは分かってくれた。でも・・・


「二度と娘に近寄るな！」


扉が、レン君と私の間の壁のように音を立てて閉まった。


「お父さん！どうして、ねぇ、どうして！？」


お父さんは返事をしてくれなかった。


「レン君・・・」


涙が止まらなかった。



＊


私は学校に行く気がなくて、サボった。

こんな腫れた目で学校行ったらどうしたのって言われるし。

お父さんは朝早くから仕事。

「リン、ちょっといらっしゃい」

お母さんが優しく声をかけてきた。

「何？」

「レン君のことよ」

ああ、昨日のことか。

どうせお父さんに言われて説得するんでしょ？

結局はお母さんだってお父さんの味方なんだし。

「お父さんがレン君を追い出したのはね、深い意味があるのよ」



お父さんの仕事は、大きい会社の専務。

レン君のお父さんも、別の大きい会社の専務だったそうだ。

二つの会社は、ずっと対立していたという。

そして、お父さんもレン君のお父さんに向けて、敵対心を抱いていた。

なぜなら、レン君のお父さんは、気楽で、緊張感が無くて、全く専務になど向いていないのに、仕事のときだけ頼れる上司になり、いつも真面目なお父さんをイライラさせたのだそうで。

挙句の果てに会社のお偉いさんに、「向こうの専務はお前と違って優秀だな」とバカにされる始末。

レン君のお父さんが亡くなってから、次の専務は誰か決めかねているらしい。



「レン君のお母さんもレン君のお父さんと一緒に働いてたキャリアウーマンだから、夫の跡をついで専務になるかもしれないという噂もあるようね」

「それって・・・会社の事情と、お父さんの勝手な妬みじゃない！」

「お父さんは、最近ストレスがたまっているのよ。だからリンにも強く当たってしまうの。」

「ストレス・・・？私だってどんなにたまっているか分かってるの？」

「大人も大変なのよ。仕事が特にね」

どうして私がそんなことを気にしなくちゃならないの？

私は私なのに。

「大人の事情なんて・・・わかんない」

「会社の敵対心は怖いのよ、リン。」

「そんな・・・子供まで巻き込まれるなんて、嫌！」



「まるでロミオとジュリエットね」



ロミオとジュリエットの話なら私も知ってる。

ロミオとジュリエットは恋に落ちるけど、親の猛反対で結ばれなかった。

私の大嫌いな話。




「私の恋を悲劇のジュリエットにしないで・・・！」