「…まだ来ない…もう3ヶ月だよ…」
女の子なら一度は悩まされる生理が来ない。
中学生のときは不規則で2ヶ月止まっていたことがあるけど、私は高校生で、ましてや3ヶ月。
何かの病気を抱えているんじゃないか、と心配になってくる。
どうして?
「…ご馳走様」
「ミク、もういらないの?」
「なんか気持ち悪い・・・行ってきます」
食欲もわかないし。
どうして?
「うわっミク大丈夫?」
「うん…ゴメングミ」
グミは訝しげに私を見た。
大丈夫だから、と彼女を諭して学校に急ぐ。
「ミク、帰りに病院寄るんだよ。付き添ってあげるから」
「うん…」
「ミク、おはよう」
「クオ…」
私は確かにクオのことが好き。
だけど、それに対する向き合い方は遊んでいるときと何ら変わりはなかった。
何も変わっていない。
私自身が変わってしまったから。
どうして?
*
大分気持ち悪さは治ったと言うのにグミは私を病院へ引っ張っていった。
その結果はとんでもないものだった。
「妊娠しています…おめでとうございます」
にんしん?
訳が分からない。
なんで?どうして?
クオと・・・・私の子供?
グミは口をパクパクさせている。
私は16歳で、赤ちゃんを養えるわけがない。
親も賛成するわけがない。
今はクオが好きだけど、遊びで付き合い始めた仲だし…
産みたかった。
でも私の中にある冷静さがそれを許さなかった。
*
「お母さん」
「なぁに?」
「私妊娠したの」
お母さんの顔から血の気が引いていく。
「冗談はやめなさい…ミク」
「中絶しなくちゃならないの」
「・・・・・・ミク!」
お母さんはアイロンの手を止めて私を引っ叩いた。
お母さんにぶたれるのは初めてだった。
「いつから…そんな悪い子になったの!?」
やめて、お母さんは悪くないよ。
父さんが居なくなっても、お母さんは良くしてくれたよ。
「全部…私が悪いのお母さん。私はもう悪い子になっちゃったの」
お母さんは泣いていた。
自分を責めているのかもしれないし、私に絶望しているのかもしれない。
*
「クオ…どうしよう、私、妊娠しちゃったの」
「え」
「中絶しようと思うけど…お金とか、どうしよう」
「ミク…おめでとう。オレ…責任取るから。逃げたりしないから」
これがクオの優しさであり、同時に弱さでもあると思う。
私が言えた事ではないけれど。
「手術費…いくら?」
「17万…私も出すよ。私が悪いんだから」
「ミクは悪くないよ…オレ、バイトの金あるから今は半分だけ払うよ。ミク、一時期でいいから半分貸してくれ。ちゃんと返すから」
私はごめんねとおなかにいる赤ちゃんに言った。
ダメな人間でごめんね…
ちゃんと産んであげられなくてごめんね…
手術の日、クオは花束を手向けていた。
私は赤ちゃんにサヨナラをした。
どうして下ろしてしまったんだろう・・・
罪悪感が絶えなかった。
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