『はぁ〜〜〜〜〜まーた今年もクリスマスが来たよ!!最低最悪悪夢の日死んでくれ!!!』

「メ、メイコさん…?」

『っていうかクリスマスなんてどうせカップルがイチャイチャ性夜過ごすだけでしょなんで仕事入ってるのなんで外出なきゃいけないの意味わからないんだけど』

「な、なんか恨みでもあるんですか…?」

『クリスマスに仕事入ってて彼氏を他の女に寝取られた、とか?』

「…ごめんなさい、今のは聞かなかったことにします」

『あんたはないの?クリスマスに対する怨念とか』

「別にクリスマス前に出来た彼女が鬱陶しかったっていうのはありますけど嫌な予感したんでクリスマス前に別れましたし」

『あんた意外と敏感なのね』

「クリスマス前なんてそんなもんでしょう、男も女も」

『興味無いのね、』

「まあそういったところですね」

俺が他人からの評価に興味が無いのは昔からだ

そうやって焦ったって他人と比べて優越感に浸ったって結局意味なんて無いのだ

まるでどれだけ人に自慢出来るのかを比べるように競い合う、そんな滑稽な様子を眺めながら少し疎ましいと思いつつ、俺は俺のままに今の仕事に今日も足を運ばせる

ここは嫌いじゃない、そう思う

「メイコさんを捨てるって凄いですねその男、殺されそう」

『アンタ私のことなんだと思ってるの…?まあその程度の男に捕まる私もその程度の女だったってことよ』

「…クリスマスは欲望の塊です、仕方ない」

『魔が差すのかしらね。平凡な人生送ってると』

「俺達は平凡じゃあないと」

『あんたもあのマスターに拾われたんでしょ、平凡じゃないから』

「平凡を嫌うだけです、一番つまらない」

そう、一番つまらない。

そんな味気ない「生」じゃ物足りない

そういう意味ではきっと平凡を願う者より傲慢で強欲だ

でもスパイスならなんだっていい

ある意味、狂気だ。

『無関心もそこそこつまらないと思うけど』

「無関心ってわけじゃないですよ。それより面白いものを好んでいまして」

『…あら、カイトが私に口答え?』

「俺は貴女が思うより面白いと思いますよ、」

演じることにより、たくさんの人格をその身に入れてきた

大人しめで一途な男

五月蝿くて忌み嫌われている可哀想な男

何人もの女をその手にかけ、欲しいものは全て手にしてきた男

彼らの人生は、時に様々なことを教えてくれる

それは教養として知るようなことよりとびきり深く、苦く、濃厚だ

そしてこの身に少しずつ興味の種を残してくれる

それを少しずつ咲かせて、果実を落とし、知識や経験として片隅に宿し、また次の役へと

そうやって既知の事象が増えていくのが何より楽しい

甘い蜜のように

『去年のクリスマスは余裕無さげに手握ってたくせに、可愛くないなぁ』

「可愛くなんてないですよ、色をつけたのはあなただ」

『何のことかしら』

「わりかしここ、人生の中で楽しいですよ」

『あら、それはマスターが喜びそうね』

「…貴女にはまだ、敵わない」

まだ。

『へへへー!でも去年よりたしかに面白いかもね』

「冗談はよしてくださいよ、越えられる気がしない…」

『何を?』

割と成長はしてたつもりだったんだけどなぁ、と少し落ち込む

彼女はやっぱりこう見えて凄い人なのだ

「……やっぱ俺も、クリスマス嫌いです」

『えー、私は好きだけど』

「最低最悪悪夢の日って言い出したの誰でしたっけ」

『こうやってなんだかんだ”仕事”であんたと会えるとことか』

「仕事で、ですか」

『あんたもさっき楽しいって言ってたじゃない』

「そうですね」

実に楽しそうな顔だ。

今年も俺は彼女に一足越されるのか


『あんたらずっと喋ってるけど衣装とメイク入れ!!クリスマスなんだし早く終わらせたいでしょ!!』


マスターの声だ

そう、今日も撮影だ

『あー、すみません。今行きます』

「同じく今行きます」

『ったくーリア充なんだろお前らもどうせ。ハァ〜集中力と気合いは落とすなよ!!』

『リア充じゃないですから、むしろ憎んでますから』

『物騒なこと言うなよメイコ。ちゃんと人殺さずにこここれたのかお前』

『役に入ればちゃんとリア充ですからー!この馬鹿マスター』

『馬鹿は余計だ』

彼女の足が一歩前に進む前に

「メイコさん」

『何?呼ばれたしあんたも早く…』

「今日、夜空いてますか?」

『えっ…あ、空いてるけど』

「ならそのまま空けておいてください」

『ちょっどういうこ』

「…行きましょ、マスター呼んでますし」

撮影で耳元で囁くときに、彼女の肩が少し跳ねるのを知らない訳ない

現に、彼女の耳は隠すこともなく赤い

『狡いわよ、馬鹿』

「…ね、面白いでしょう?」

『…………ばか』

「やっぱり俺クリスマス好きかもしれないです」


まあ、現にこんな彼女が見れるわけですし。

平凡を嫌い平凡とかけ離れたものを食べ尽くしながら平凡なこんな感情を知るなんておかしな話だ

…悪くない。

平凡な毒は甘さとなってこの体に溶け込み、ゆっくりと身を焦がす


蜂蜜の甘さが、緩やかに林檎に染みていくみたいに


彼女という林檎を手に入れるまで、あと━━━━





ーto be cotinue???

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【カイメイ】林檎と蜂蜜【クリスマス】

http://piapro.jp/t/lrY8 の続き。
我が家カイメイafter, on the rocks設定引き継ぎです。

お久しぶりです。
この間久々にピアプロ見たら去年も一昨年もカイメイクリスマスネタを投稿していたことが判明したので使命感で今年も。間に合わなかったのは許して。
久々だったけどちゃんとカイメイしてるかな…

来年も投稿出来ればしたいです。

閲覧数:336

投稿日:2015/12/27 01:47:05

文字数:2,215文字

カテゴリ:小説

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