【第十話】OPERATIONS

 ―――カツ…カツ…

 綺麗に掃除され、埃の一つも許さないような部屋中に、私の歩く、ヒールの音が響く。
部屋、なんてモノじゃない。
「広場」や、「講堂」、「宮殿」と言ったほうが相応しいのかもしれない。

 しかし、ここは「部屋」。

 ある一人の女の子のための。

 「話って何?ミク」

 「あ、ルカ。来たのね、ちょっと待って。今お茶を用意させるわ」

 政府の黒幕、秘密組織として、長年隠し通されてきた組織の、『長』。
18歳にしてこの日本の頂点に立つ少女。

 ミクは、メイドを呼び私のお茶を用意させた。

 こんな子が、政府の権力を乱用したなんて、信じられない。
普通にしていれば、ちゃんと年頃の女の子。

 笑顔が可愛い、声が綺麗なふつうの、女の子だ。

 「今日は…、ダージリンティーなのね」

 「うん。私、ダージリンって飲んだことないんだ―、本場から取り寄せてもらったの―」

 うれしそうに話す、みく。

 「……で、ミク…。話っていうのは……」

 私がそう切り出すと、急にミクは人が変わったような顔をした。
目にさっきまで宿っていた光は消え失せ、笑顔はなくなった。

 『長』の顔になった。

 「ディフェクトの、あの子のことなの」

 「ああ、集めさせた情報によると、名前は鏡音リン、性別は女、誕生日は12月27日。16歳、高校1年生、てところよ」

 「ふーん…。どうにかして、あの力は欲しいの………。きっと、あんな【欠陥品】の中に居ちゃいけない存在だわ。――――でね、それは私がやりたいの。リンを取り込んでみせるわ」

 『長』にそう言われたら、反論の余地はない。

 「ミクがしたいなら、いいわよ」

 「ありがと。それでね、ルカ。お願いがあるの―――」

 『長』の言われたら、反論の余地はない。
『長』が考える時間や、少しの期間をくれない限り。

 『お願い』は、いいことなのか、それとも、悪いことなのか。




 「ディフェクトの誰かを――――殺してほしいの―――」




 「―――え…?」

 絶句。

 そもそも、組織とディフェクトの間には規則がある。
大それたものではない、ほとんどがミクが独断で決めたものだ。

 その中で唯一、ディフェクトのリーダーである、グミが意見してできた規則。

 “人を殺める及びその類に匹敵するような行為は認めない”

 というものがある。

 先ほどのミクのお願いは、それに、あからさまに匹敵する。


 「時間をあげるわ。―――10日。それ以内に返事を頂戴?断った時のことは、その時考えるわ。殺すのは―――誰でもいいから」

 動けない。

 言葉が出ない。

 人ヲ殺ス―――。

 私が……。


 「失礼…しました…」

 
 私はミクの部屋を出て、自分の部屋へ。

 ミクほどではないが、普通では考えられない広さの、『一人部屋』。



 タイムリミットは…………、10日。



 誰も…、殺したくない。



 残酷なことを、いつもしているのは、わかってるわ。
とっくの昔にわかってる。

 私だって、好きでこんなことしてるんじゃない。

 できるなら、組織にだっていたくないわ。

 私がこの家系に、生まれなかったら……。

 好きな仕事について、好きな所に住んで、好きな人と自由に結ばれることは――できたのかしら。

 わからない。


 ―――けど…







 誰も殺したくない―――。




 

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

CrossOVER NoIsE.

ルカさんの、心の中。

ミクさんの、企み。

閲覧数:127

投稿日:2012/08/09 10:51:50

文字数:1,470文字

カテゴリ:小説

  • コメント3

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  • しるる

    しるる

    ご意見・ご感想

    ダークミク、かわいい
    ゾクゾクするww

    そして、思いのほか、ルカさんが優しいのかな

    2012/09/26 16:56:56

    • イズミ草

      イズミ草

      この話の、黒ミクは
      結構好評ですねwww

      ルカさんの根はやさしいって言うか、何というか……ああ。

      2012/09/26 17:46:35

  • Turndog~ターンドッグ~

    Turndog~ターンドッグ~

    ご意見・ご感想

    (ダメだダメだリンちゃんなう想像したらダメだダメダメだ㎡デマd前あ㎡だえs)

    少し精神を落ち着けていました。

    ミクさん。あんた何を考える。
    とりあえず殺るなら私を殺r(おい

    抗いとは。
    強き力を持つものと、強き意志を持つものに許される危険な手段。
    ルカさんはそれを選べるのかっ!?

    2012/08/09 11:34:08

    • イズミ草

      イズミ草

      ダメですよダメですよ、雰囲気が一気に軽く、チャラくなっちゃいますからwwww

      ではとりあえず今日ミクさんにTurndogさんを殺れという命令を私から出しまs(おいww
      冗談ですよ、冗談wwww

      乞うご期待!!!!!

      2012/08/09 19:43:25

  • つかさ君

    つかさ君

    ご意見・ご感想

    なんか、どっきどきの展開ですねΣ
    ミク怖い...

    あぁっ、次が気になりますっ!

    2012/08/09 11:31:29

    • イズミ草

      イズミ草

      そうなんです!
      こんな感じにしようとは思ってましたが、まさかこんなシリアスになるとは……。
      思ってもみなかったわけでですね、はいww

      焦らしますよ――ww

      2012/08/09 19:40:27

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