「~♪」

「……」

「~~~♪……ふぅ」

「…歌、好きなの?」

手を取り合ったまま、二人は道を進んでいった。

「うん、好きだよ。僕は、歌って、それで誰かに喜んでもらうんだ。それが、とっても心地いい」

「やっぱ、同じなのね。…私も、歌が好きで、周りにも「上手い」って言われてた…。この世界に来て、もう、その言葉を貰うことは、最近じゃ少なくなってしまってるけれど」

そういう彼女の顔は、なんだか少し寂しそうだった。

「最近じゃ、ってことは前は言われてたんでしょ?」

「まぁね。…聴いてくれる人を見つけて、好きなだけ歌った。拍手もたくさんしてもらった。けれど、ダメだった私は、それはもう叶わなくなってしまったのよ」

「ダメだった?」

「ええ。……現実のことはよく知らないけど、行方不明事件とかあったんでしょう?」

話を無理やりそらすように、早口で喋ったカイコに、カイトは改めて声が綺麗だな、と思った。

この声で歌ったら、よほど音痴でもない限り、素晴らしく美しくなるだろう。

その曲も、歌う彼女自身も。

「行方不明事件……あ、そういえば最近、5人の中、高生が消える…ってのがあったけど」

「5人…きっと、それ、私達だと思うわ。私高校生だし」

「…え、じゃあほかの4人は?」

「それぞれ別行動だけど?……貴方も、急に眠くなって、そのまま寝ちゃったんでしょう?」

「うん。………じゃあ、僕は行方不明者の仲間入り…ってワケ?」

よくよく考えてみれば、前にいた場所…学校での記憶も途中で途切れ、ここに来た際も自分は眠っていたんだ。

「でも、帰る方法はあるわ。一つだけ、だけれど」

「え、ホントに!?」

つい先ほど出会った少年の通り、好きなことを「いつまでも」やって、帰ることはできないと考えていた。

「ええ、ホントに。…だけどね、今までこの世界には私含めて6人来ているの。その全員が帰れなくなってる……一人は、ある意味「かえれた」のかもしれないけど……」

「じゃあ、難しいんだね…その方法、教えて?」

「その方法は、好きなこと、したい事をする。……それだけよ」

……なんだよ、それ。

好きなこと、したい事をする。

その単純なものに、6人が失敗している。

「……そんなの、間違いじゃない?」

「え?…間違いでは、無いわよ。夢が言ってたはずよ?」

「……あ…」


ー「アリス。あなたには、これからじゆうにしてもらいます。すきなことを、いくらでも、いつまでもしていていいんです。がんばってください。こんどこそ、きたいしていますよ!」ー


自由に、好きなことを、いくらでも、いつまでもしなさい。

頑張ってください。

今度こそ、期待していますよ。


なんの思惑があって夢はそうさせているんだろう?

楽しんでいるだけなのか?

「……思い出した?夢はね、そう簡単には返してくれないわ。そして、貴方がだめだったら、すぐさま次のアリスを用意して、自由にさせる…。いつまで、続くのかしらね。貴女で最後であることを切に願ってるわ」

「はは………。ありがとう…」

「どういたしまして、かしら?……まぁいいわ、そろそろ休憩しましょうか」

そう言って少しペースを速めにして歩くと、ちょっと歩いたところに高い高い崖が見えた。

「ここでいいわ」

カイコはゆっくりと崖の断面に腰かけた。

それにつられるようにカイトも隣に座った。

「…あ、この崖の上のあの花…なんか、綺麗だね」

「あぁ、あれね。そうね、何だか綺麗、というよりも可愛いんじゃないかしら」

「届くかな?よっ……もう、ちょっと…」

花を取ろうと懸命に背を伸ばすカイトは、なんだか少し男らしかった…様な気がした。

「ん……はぁ、ダメだ。届かないなぁ。」

分かってるくせに。

そうカイコは言いそうになった。

あんな高いところ、カイトがジャンプをしてやっと届くか、と言うくらいだ。

それが背伸びだけで、しかも花を摘むなんて出来るはずがない。

「届かなかったよ。ごめんね?」

「謝る必要は無いじゃない。私あの花をとって、なんて一言も言ってないわ」

「でも、あの高い高い崖に咲く花は、なんだか懸命というか、頑張ってる感じがするんだよ」

「………そろそろ行きましょう」

そういってカイコは立ち上がると、崖の奥に少しのぞいて見える木に向けて歩き出した。

手は、いつの間にか離れていた。



いくらか歩くと、大きな噴水が立つ広場に出た。

ついさっきまでは草木が生い茂っていたのに、広場は地面がレンガだった。

「ここは……町?」

「ええ。歌いたいのでしょう?聴いてくれた人に喜んでほしいのでしょう?……ここには、人がたくさんいるわ。と、その前に休むための部屋がほしいわよね。こっちよ」

言われるがままについていくと、賑やかな声がそこかしこから聞こえてくる。

カイコは、一軒の家の前で立ち止まり、ドアを開けると、挨拶もせずに靴を履いたまま土足で踏み込んでいった。

彼女と同じようにして何も言わず土足で入ると、カイコは青い色のドアの前へ行き、カイトの方へ振り向いた。

「この部屋は自由に使っていいわ。中に家具やらなんやらが既に入ってるからあ、靴は部屋の前で脱いで」

「あ、うん。有難う」

言われた場所に靴を脱ぎ、中に入ってみると、机とベッド、そして隅にピアノが置いてあるシンプルな部屋だった。

「ん?」

机の上に紙が置いてあった。

手に取ってみると、それは楽譜だった。

「何だこの曲…知らないな…」

カイトは、、ピアノを少しだが弾けた為、部屋の隅に置かれたピアノに手を置いた。

「メロディーライン聴けば分かるよな…」

ゆっくり譜読みしながら音を紡いでいった。

「えーと、この歌詞に合わせると…?」

何度か弾いているうちに慣れてきたため、一緒に歌うことにした。

「にーばんめあーりーすーはーおーとーなーしーくー、うーたをうたぁってーふしーぎーのーくーにー~~♪……」

カイトは、この曲をとても気に入った。

歌詞がなんだか怖いが、メロディーは嫌いじゃない。むしろ好きだ。

もう一度歌おうか、とピアノに手をかけた瞬間ーーー


ガチャッ

「ねぇ。外に出ましょう?少しだけなら案内してあげる」

カイコが部屋にやってきた。

「あぁ、分かった。行こう」

ピアノから手を下ろし、楽譜をもと合ったテーブルに戻すと、カイコの後ろをついていった。


「ーで、あそこがさっき見た広場。たまーにお店を出したり、イベントやってたりするわ」

「へぇ…」

カイコから町の一通りの説明を受けると、また部屋に戻り、先ほどの歌を歌い始めた。

空は、雲一つない澄んだ青だった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

人柱Alice 4

時間がなかったので切っちゃいました…

早くミク編と鏡音編書きたいのになげぇな兄さん!!←

もう「Alice」って表記なくしたほうがいいかもしれない…(-_-;)

カイコちゃんはめー君に比べると物凄くいい人じゃん
と、友達に言われましたがただめー君は言わないだけでとっても思いやりのあるいーい人なんです…!!!!

あるぇ、改めて読むと誤字ひでぇww

閲覧数:262

投稿日:2011/09/10 22:13:11

文字数:2,805文字

カテゴリ:小説

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  • 美里

    美里

    ご意見・ご感想

    こんばんは!美里です。

    あ、なるほど!行方不明だったのね!私は現実世界で仮の自分が生活しているのかと・・・
    男らしかった・・・様な気がした―ってとこ吹いた。
    カイト編はいつまで続くのでしょうか・・・早くミク編が読みたい気もするけどカイトがこれで終わりかと思うと・・・

    Aliceってあった方がいいんじゃない?なんとなく←


    2011/09/11 19:39:34

    • アストリア@生きてるよ

      アストリア@生きてるよ

      カイト編は次でぜっっっっっっっっっっっっっったい終わらせる!!

      そうそう行方不明になってるのー現実から消えるのよ、あそこで眠るとー
      だから前回夢が「だって、げんじつだもの」って言ったんだ!

      ミク編やリンレン編になったらやる気が出て更新早くなるかもね!ww

      Aliceあったほうがいい?
      そっか…何となくでもあった方がいいのねwwおk分かったありがとー

      2011/09/11 21:13:58

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