-走って-
 しばらくそれを眺めていたリンだったが、はっとしてそれらを机の上におくと、走り出した。
 写真たてに隠されていたのは、小さなタオルの切れ端と手紙と、赤い押し花のしおりだった。タオルにはいくつかのシミがあって、どうも子供がよく使うタオルのように見えたが、そのタオルの端のほうは茶色く焦げたような跡が見られた。そして手紙には碧いボールペンの少し角張った癖字で、三枚ほどに渡って謝罪の文が綴られていた。
『この子は両親をなくして親戚の私が預かっていなしたが、私も育てることができなくなりました。この子をお願いします』
 そうかかれた他はほぼ、『スミマセン』『よろしくお願いします』『ごめんなさい』…と、そんな言葉が延々と三枚分。うんざりしてしまいそうだ。そして、文中に出てくる『この子』とはおそらく――。
 そんな時、リンの携帯電話がなった。急いで通話ボタンを押して応える。
「はい、もしもしっ?」
「――リン、廊下の大きな本棚のところへ走って。…爆弾の解除方法はわかったよな?」
「レン?…勿論、調べ終わったよ。本棚…わかった、見つけたよッ」
 そう言って少しずれたままの本棚を恐る恐る覗き込むと、中からは異様なにおいが立っていた。兎に角解除方法を書き写した紙を持って中に入ると、中でレンが険しい表情でリンを睨みつけた。少し驚いていたリンも、レンの腕が手錠で止められていることに気がつくと、レンのほうによって行って、声をかける。
「大丈夫?」
「大丈夫だよ。解除方法、最初っから言えよ。一つでも狂ったら大爆発だからな」
 そういったレンの足元には時限爆弾と思われる箱があった。赤いライトで残り時間が表示されている。残り時間は三分二十八秒。その手にはペンチが握られていた。
「…わかった」


「――へえ、俺が気絶している間に、そんなことがあったとはな」
 そういうメイトは、まさに包帯だらけ、ぐるぐる巻きであった。
「悪かったな。けど、カイコの事は責めないでやってほしい」
「貴方が謝ることじゃないわ」
「いや、俺にも責任がある。後先考えずに軽率な行動をした」
 励まそうとするメイコの言葉に、メイトは少し表情を柔らかくしたが、すぐにうつむいて少し悲しげな微笑を浮かべた。
「…カイコちゃん、ここに来る前に何かあったの?普通じゃないくらいの偏愛主義者ね」
「アイツは…カイコは、『愛情』を知らないんだ。心からの愛情を受けたこともないし、ましてや人を愛したこともない」
「どういうこと?」
「アイツはここに来る前、孤児院にいた。両親を火事でなくしたらしい。すぐに親戚に預けられたが、その親戚ともなじめずに孤児院へ。孤児院でも両親と一緒に暮らしていたときからの気に入っていたタオルと、親戚から孤児院への手紙を持って、なじむことはできずに、十六歳になった。十六歳になれば孤児院を出ることになる。院長から俺のところを紹介されたとかでウチに来たんだが、その院長もしばらくしてなくなった。まだ、俺たちと同じくらいの若い奴だ。カイコも院長にだけはなついていたらしくて、酷く落ち込んでいた」
「そう…。まあ、そんなことを言ってるメイトだって昔は虐められっこだったんだもの、彼女はすぐに立ち直れるわよ」
「そう、かな」
「女は案外強いものよ」
「そう…だな」
 似たような言葉だったが、メイトの表情は明るくなっていた。

 数日後、カイコは自ら警察に自首し、世を騒がせた爆弾犯は未成年の少女だったということで、さらに世間は沸き立った。勿論、その少女の婚約者であるメイトの情報は一体どこから漏れたんだか、一週間もしないうちに教会はマスコミだらけになってしまった。
「…悪かったな」
「…ホントね」
「…ここはメイトさんが謝るべきところですわね」
「…学校、どうしようか」
「…一応、電話入れておく?」
 会話からも想像できるだろうとは思うが、ものの見事に四人はメイトとともに教会に閉じ込められてしまった。だらだらといやな汗を流しながらメイトが謝っているのをみて、なんだかんだというのはルカとメイコ。その横で学校についてを悶々と考えているリンとレンは携帯電話を片手にメールをしていた。勿論、リンはミクと、レンはレオンとである。
 時折嬉しそうに笑うリンの横で、レンがずっと苛々したように返信している(勿論、アドレスはレンが自ら教えたわけではない)。
 そうしてメイトを含む五人は、少しばかり親交を深めることになる。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

鏡の悪魔Ⅳ 9

こんばんは、リオンです!
テストも終わり、点数が大変なことになっていまして。
…まあ、鏡の悪魔Ⅳもおわりですが、明日はおまけです♪
コメントでレオンを出してほしいとのことなので、頑張って出してやろうかと。
それでは、また明日!

閲覧数:467

投稿日:2009/11/18 22:10:49

文字数:1,863文字

カテゴリ:小説

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  • リオン

    リオン

    その他

    こんばんは、返事が遅れてしまいました!
    Ж周Жさん
    レンは苛々してリンになだめられながらいちゃいちゃしてればいいと思います(笑

    おまけも頑張りますね!
    遅れたらどんな目に合うかわかりませんね!ダッシュで逃げなきゃ!!(書け)
    では、今日の投稿もよろしくお願いしますね!

    みずさん
    きっと、あれです。レンがいない間にレンのバッグをあさって勝手に通信しちゃったんですよ。
    しかも、レオンのことだからレンの携帯に自分のアドレスを入れたとき、『レオン君(ハート)』とかって登録させてるんですぜ。
    もしかしたら勘かもしれませんね!
    だとしたら、レオン凄いよ!!私も尊敬しちゃうよ!!

    そりゃあ、ハッピーにしなかったらレンから苦情が来るんですもん。
    レ「…お前が考えることといったら、俺とレオンの絡みだろ…!!」
    あははー★

    何かレオンとリオンって似てますね。
    レウォンて…凄くかっこいいですね!(そうか?)
    レオンでもレウォンでもどっちでもいいです。レンが泣きそうですから…。
    じゃあ、今日も頑張りますね!!

    2009/11/19 18:39:12

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