「我が名はアイル・ゴート・シュヴァルツ。この界隈の魔王だ」
そして、魔王は両手を掲げた。
その姿は魔王、とは程遠い。威厳のかけらもない。ただ、大層なマントが揺れる。
ただのコスプレ野郎だ、と理解した不良たちは畳み掛ける。
「おーい、コスプレ野郎。そんな格好してびびってんだろうが、あぁっ!」
次つぎと罵声を浴びせられた魔王は一歩下がる。
「やっぱりびびってんじゃねぇか」
ハハッと笑い転げる不良達。
先ほどから絡まれていた金髪の少女も、その光景を心配そうに見つめている。
不良達は残忍な目をギラギラさせて、魔王に殴りかかった。
なすすべもなく袋叩きにあう魔王。魔王は思った。
なぜだ、なぜ俺はこんなにも弱いんだ。
魔王城から追い出されて、柄でもない人助けしようとした挙句にこんなことになるなんて最悪だ。
その時、パタリと不良達は一斉に倒れた。
その気配を感じ取った魔王は驚いて言った。
「ついに俺の魔王の真価が発揮されて…」
途中、口を挟んできたのは金髪の少女であった。肩まである髪をなびかせながら一言。
「違ぇよ、馬鹿。私がやったんだよ」
そう言った少女の手には黒い塊が浮かんでいる。
「ゼロ・クラウド、雷雲を生み出して電撃を発生させる。それが私の能力」
続けて言った。
「誰かを助けようとする意志は大したもの。でも、あんたみたいなコスプレ野郎相手に名乗る名も無い、じゃあな」
そして、金髪の少女は去っていった。
魔王の心に残ったのは、虚しさだけだった。
助けようとした相手に逆に助けられる。
人々に恐れられるはずの魔王が、飛んだ笑い者だ。
先代に申し訳ない。魔王最強時代を作り上げた先代はきっと泣いているだろう。俺も…俺も泣きたい。
そう、俺は魔王、アイル・ゴート・シュヴァルツ。
その実は、歴代最弱魔王。
今はただのコスプレ野郎である。

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気晴らしで書いたもの、第一話「ダメダメ魔王の人助け」

同じ作品書くの疲れたんで、ぱっと思いついたものを書いてみました。続き書くか未定。内容的に長く書けば長くなりそうだから、どちらにせよ今は続き書きません。

しばらくふざけた感じで色んな話を書いていく感じになりそうです。若干最後韻踏んでて吹き出しそうになりました。感想もらえたら嬉しいです。他作品についても絶賛感想受付中!

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投稿日:2019/05/08 10:03:31

文字数:793文字

カテゴリ:小説

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