「やった!やった!デフォ子さん!」
ルコちゃんが、メールを印刷した紙をひらひらさせながら、飛んできた。

「どうしたの?」
雑貨店「つんでれ」の売場に立っていたデフォ子さんは、
あいかわらず、のんびりした調子で聞いた。

「ほら、これです」
ルコちゃんが見せた紙には、“キッズ・グッド・デザイン賞ノミネート”と書かれていた。

ルコちゃんが印刷した紙は、ゼロジー文具のソニカさんが送ったメールだった。
デフォ子さんと、テトさんがデザインして、ゼロジー文具で発売した文具が、
今年の“キッズ・グッド・デザイン賞”候補に、ノミネートされたのだ。

●デザイン賞にノミネート!

“キッズ・グッド・デザイン賞”は、1年に1度、一般流通の商品に贈られるものだ。
子どものための商品で、すぐれたものに贈られる、大変名誉ある賞なのだ。

さすがの、のんびり屋のデフォ子さんも、
スタッフのモモちゃんとルコちゃんといっしょに、
手を取り合って喜んでしまった。

「キッズ・グッド・デザイン賞なんて、もし取れたらスゴイけれど」
デフォ子さんは、ルコちゃんとモモちゃんに向かって言った。
「でも、ノミネートされただけでもいいわ。それにね...」
デフォ子さんは、モモちゃんに言った。
「あのな、私ね...。つんでれのみんなと、事務所を開きたいな、って思ってるの」


●みんなで、デザイン事務所を...!

「え?事務所?」
モモちゃんは、目を見開いた。
「そう。デザイン事務所なの。名前は“ツイート”。私と、協力してくれるみんなで」
デフォ子さんは、大きな目を見開いて言った。

「もし、賞が取れたら、大きなはげみになるわね。でも、とれなくてもいいわ。ノミネートだけもはげみになるし」
デフォ子さんは、机の上にある、ミク人形のぬいぐるみを手にとって言った。
「決めたわ。私。大変だけど。裸一貫からだけどね」

モモちゃんと、ルコちゃんは、思わずデフォ子さんを見つめた。
ルコちゃんは、おずおずとつぶやいた。
「はだか、いっかん...? デフォ子さん、AV女優になるの?」

「ちがうよ。無理だろ...」
と言おうとして、モモちゃんは口をつぐんだ。...(・・。)ん?

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

玩具屋カイくんの販売日誌 (34) デフォ子さんの事務所 計画

デフォ子さんという方は不思議なものです。
キャラが立つようで、立たないようで...。
でも一歩踏み出してみよう、と本人は思ったようです。w

閲覧数:148

投稿日:2009/12/06 00:32:44

文字数:925文字

カテゴリ:小説

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