駿河ちゃんは、小さく「え?」と声を上げた。
「ちょっと、リンちゃん、これ。見て」

うなずきながらリンちゃんは、顔を近づけてビンの中を見る。
リンちゃんも、同じものを見ていたらしい。

そして、顔を上げて、部屋の隅に座ってこっちを見ている、サナギちゃんを見た。

「リン。どうしてここにいるの」
軽く、手を振りながら、か細い声で彼女が聞く。

ビンを見ていた駿河ちゃんがまた、「あっ」と声を上げた。
そしてつぶやいた。

「これ、手、振ってるよ」‌


●消えてくよ、ほら

リンちゃんは、ビンをちらっと見たが、すっと席を立って、
サナギちゃんの方に行った。

「ゴメン。後をつけてきたんだ。でもさ」
彼女の横に立って、リンちゃんは聞いた。
「サナギこそ、ここで何してるの?」

サナギちゃんは、気のせいかホッとしたような顔で、にっこり笑った。
「私は、その...。ツクヨミ君とお話をしに来たんだよ。ここに」

リンちゃんは振り返り、ツクヨミ少年の方を見た。
彼は、駿河ちゃんが座っている椅子のそばに立っている。
そして、机の上のビンと、サナギちゃんを、代わる代わる見ているようだ。

「あっ?ちょっと、これ...」
すっとんきょうな声を上げたのは、駿河ちゃんだった。
小さく叫びながら、ビンを指さして言った。

「これ、ほら、消えてくよ、ほら」


●終わりましたね

その声に、リンちゃんたちはビンの中を見た。
中にある、小さな人形のようなものが、次第にすきとおって、影が薄くなっていく。

「あ、ほんとだ」
そう言って、リンちゃんは机の方に寄ってきた。

つられて、座っていたサナギちゃんも、ゆっくりと立ち上がる。すると...

ビンの中の、うっすらとした影も、ゆっくりと立ち上がったように、見えた。
そして、すっと、消えてしまった。

「消えちゃったよ」
また、すっとんきょうにつぶやく、駿河ちゃん。
リンちゃんも、机のそばに来て、不思議そうにビンをのぞきこむ。

すると、部屋の隅で立ち上がったサナギちゃんが、
「ああ~」と言いながら、両手を上げて、大きく「伸び」をした。

その様子を、見守っていたツクヨミ少年は、静かにつぶやいた。

「ああ、終わりましたね。サナギさん、これで元気になるでしょう」 (・_・ )ゝ

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玩具屋カイくんの販売日誌(290)  「小ビンとサナギちゃん」

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投稿日:2017/01/29 12:24:29

文字数:963文字

カテゴリ:小説

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