「マスター、じゃんけんしーましょ」
薄緑色の足元まで伸びる長いツインテールを揺らしながら、ミクは私に話しかけてきた。
「急にどうしたの?」
私は唐突の質問に、焦りながら聞き返した。
「退屈だとみんな“じゃんけん”というモノをするらしいです。とさっきマスターに教えてもらった、インターネットで知りました」
そう言いながらニコニコとこちらを見上げてくる。
初音ミクを購入した時は、ただのディスクだった。しかしPCにインストールをすると、初音ミクはいきなり画面から出てきた。
そんな非科学的な事がある訳がないと誰もが思うだろうけど、実際に目をすると信じざるを得ない。
「ねえ、マスター?じゃんけんしーましょ?」
さっきとは違い、細々とか弱い声で質問するように聞いてきた。
どうやら考え事をしている私が返事をしなかったので、無視されたと思ってしまったようだ。
「あー、ごめんね」
私は泣きそうなミクを見て、また焦りながら答えた。するとミクは「えへへ」と嬉しそう微笑んだ。
「じゃあ、じゃんけんぽん」
私はチョキを出した。一方、相手のミクはその小さな手に変化は見られなかった。
「あれ?どうしたの?」
「へ?」
ミクはキョトンとしていた。
「え?じゃんけんするんじゃないの?」
私がそう聞くと、ミクはまたもやキョトンとしていた。どうやらミクの情報は“暇つぶしにじゃんけんをする”というだけで、遊ぶ方法などは知らないようだった。
体の大きさが手のひらサイズしかないミクの手はとても小さく、私が触ると折れてしまいそうで、三種類しかないパターンでも無駄に時間がかかったがなんとかできるようになった。
「よーし、じゃあいくよー」
私はそう言って、構えた。
「どんとこい、です」と意気込んだ。そのチョイスもインターネットで得た知識だろうか、と少し不安になりつつもミクとのじゃんけんは始まった。
『じゃんけん、ぽん』
結果は私がグーで、ミクはチョキだった。
ミクは私の出した手と自分の手を何度か見比べて、少し考えるような顔から段々と眉を下げて泣きそうな顔になった。
「よしよし」と私は最新の注意を払いながら、人差し指で頭を撫でてあげる。どうやら負けず嫌いらしい。
こうやってまたミクの新たな部分を知ることが出来ると、嬉しくてつい頬が緩んでしまう。
「な、なに笑ってるのっ!」
そう言いながらミクは地団駄を踏む。
どんな理屈でミクが私の前に現れたのかは分からないけれど、ずっとこうやって一緒に楽しい時間を過ごしていければいいと思った。
「マスター!私の話を聞いてますっ?!」
あ、涎出てきた。
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