#92「真相」



叫ぶハクさんを僕は無言で見ていた

嫌悪でも、軽蔑でも、同情でもない……自分でもよくわからない感情で……


「うるさい……うるさい……あの女が、そいつらが、私を……」


ハクさんの髪が乱れ、長い髪の間からあやしく目だけがのぞける


「ハクさん!目を覚ましてください!こんなことをしても、あなたのお母さんも義妹さんも喜びません!」

「…………義妹……そうだ!義妹!そいつが殺したんだ!そして、そこの女王が命令をした!これは本当なんだ!これこそ、復讐だ!」


ハクさんは、完全に我を忘れている

そして、ハクさんが指さしたのはルカさんとメイコさんだった


「そいつらだけでも……殺さないと……」

「……やはり、それも知ってたんですね……」


今のハクさんをみていると、心が張り裂けそうで辛い






「仕方なかったんです……クチハテになった彼女はもう……」


彼女はクチハテとなって亡くなった……

そして……僕はルカさんがどんな想いだったか、知っている





「でも…‥義妹は……ネルは!……ネルはそいつらに殺された!」





ネルさん……彼女がハクさんの義母の本当の娘だった……


ネルさんはハクさんという義姉がいたことは知らなかっただろう……

でも、別れた時、すでに物心がついていたハクさんにとっては忘れられない義妹だったはず……



「ルカさんは!ルカさんは……クチハテになって人を殺めてしまいそうになったネルさんを……仕方なく……」

「嘘よ!そいつは心の冷たい魔女よ!きっと、ネルのことも簡単に……」

「違います!!!」


僕は今出せる精一杯の声で否定した


「誰が仲のよかった幼馴染みを平気で殺せますか!誰がなんにも想っていなかった子のために涙を流せますか!ルカさんは苦しんでいました!いえ、今も……」

「……だって……そんな……あの子は……まだ、これからで……」


そういったハクさんの目には涙があった



「……ハクさん、あなたは本当にとても優しい方だ。それを知った上で、もう一度言います。目を覚ましてください……あなたがやろうとしていることは、お母さんにも、ネルさんにも、そして先代の意志にも反するということに気づいてください」

「…………」


ハクさんは何もいわなかった

ただ、その場に崩れ落ちて両手で顔を隠していた

彼女の両肩は震え、そして、とても小さく見えた……








彼女は、全て、最初からわかっていた……

それでも、抑えきれなかったのは、いままで、母親から先代やリンちゃんに恨みの対象を思いこみで変えて、抑えこんできたが、ネルさんの一件で抑えきれなくなったためであり、これが今回の事件の真相だと思う


間違いなんてなかった……

でも、あえて間違って、自分が正しいと証明したかった……それだけ……


誰も悪くなかった……

母親も、ただ自分の気持ちに正直に親友に娘を託しただけ

先代も、女の子を想って嘘をついていただけ

リンちゃんも、メイコさんも、ルカさんも……そして、ハクさんもみんな悪くなかった


ただ偶然、全てが裏目に出てしまったということであった


ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

妖精の毒#92

そう……だれも悪くなかった

そして、消えていく恨みの念……

閲覧数:574

投稿日:2012/12/05 21:06:05

文字数:1,344文字

カテゴリ:小説

  • コメント2

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  • 雪りんご*イン率低下

    雪りんご*イン率低下

    ご意見・ご感想

    ホントは、ネルちゃんがハクさんの義妹なんじゃ……? とか思ってましたよ。
    しるるはそういうところ伏線はってるからね←

    ハクさん……!! あれ、なんでですかね。がめんがにじんでみえない

    2012/12/05 21:41:10

    • しるる

      しるる

      いえすw

      !?
      ま、まじですか!?

      2012/12/05 22:41:43

  • イズミ草

    イズミ草

    ご意見・ご感想

    偶然と運命ほど、残酷な物はないですね。
    ルカさん、メイコさん、リンちゃん、ハクさん。
    みんな、残酷な程に偶然が重なった。
    重なってしまった……。
    「偶然」というと偽善にも聞こえる。
    「運命」というと、皮肉だ。
    どうしようもない、やっぱり偶然から、ルカさんは深く傷ついて、ハクさんは復讐の念に、我を忘れてしまった……。

    それをいまからでも、遅くない!
    カイト!! 君の腕の見せどころだぜ!?

    2012/12/05 21:19:45

    • しるる

      しるる

      偽善と優しさは、紙一重だと思います

      少しでも、人によく見られよう、見返しがほしいと思った時、それは偽善になる
      正直、私には、本当の優しさを手に入れられる自信がありませんww

      この後どうなるかは……言いたいが言えないww

      2012/12/05 22:37:13

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