一週間があっという間に過ぎてとうとう課題当日になった。それぞれ別室でドレスに着替えて、今はメイクやアクセサリを整えている。

「ラビット様?どうしました?」
「や…やっぱり私…こんな可愛いの似合わなくないか?!」
「またそう言う後ろ向きな事を…。」
「わ、私は魔女って呼ばれてたんだぞ?!魔女がこんな可愛い服着たら変だろう?!」
「判ってない、判ってない!魔女って言うのはな?レベルが上がると魔道士とか
 プリーストになって、服や装備が変わるんだって、つまり昔魔女だったなら今の
 ラビットは召還師!召還師の服って可愛いだろ?だから似合う!保証する!な?
 ハートのジャック。」
「俺にそんな濃ゆいをネタ振らないで下さい…。でもよく似合ってますよ、
 ラビット様。」

確かに妙な説得だがラビットは元気になった様だ…。私も何か言った方が良いのだろうか?しかし召還師がどうのと言った類の特殊な用語は判らないし、どう言った物だろうか?そもそも浬音さんのコンプレックスに思っている部分が判らなければ下手な慰めは逆効果だろう。むしろシンプルに『似合う』と言う事を伝えれば良いのだろうか?いや、待て、そもそもドレスは私が選んだのだから似合うかどうかは私の主観と言う事になる。となると『似合う』と言う言葉も一人よがりになるのか?困った…そう言えば誉め言葉を教えて貰ったな。

「あの、ハレルヤさん、おかしくないですか?着方とか…。」
「お持ち帰りしたいです。」
「はっ?!」
「おーい、ハレルヤに変な言葉教えたの誰だー?」
「あ、悪い俺だ。」
「え、えーと…わ、悪くないみたいですね?!」

誉めたかったと言う気持ちだけは伝わった様だが、取り敢えず後で嘘を教えたクラムを説教した方が良いだろう事は判った。そもそも『お持ち帰り』と言う言葉自体問題があるのでは無いだろうか?承諾も無しに持って帰っては誘拐だ。ん?となると私は誘拐の承諾を得ようとしたのか?いや、犯罪の宣言をしたい訳では決して無い、誤解だけでも解くべきだな。

「貴女が一番美しいです。」
「ちょ…!」
「一般的な知識を教え込んだ方が良いんじゃねぇ?」
「何気に失礼よね…あたし達には。」

どうも上手く行かない…。何が悪いんだ?言葉選びだろうか?しかし周りの意見を鵜呑みにしては先程の様に失敗する事も充分にある。女性を誉めるとは何故こんなに難しいんだ…?

「ハレルヤは難しく考え過ぎなんだよ。こーゆー時は、笑顔で『可愛いよ。』
 って言ってあげれば良いんだよ。」
「笑顔…ですか?」
「あ、見たい見たーい、ハレルヤさん、笑ってー。」
「…………………………………………。」

いきなり言われて笑える程器用な表情筋は当然持ち合わせていない、しかし皆は笑えと言う。何故だ?怖い物見たさと言う物だろうか?困ったな、笑顔なんてどうすれば良いのか皆目見当も付かない…。

「ほらほら口角上げてニコーッと。」
「怖い顔になった…。」
「うーん、難しいかしら?」
「まぁ無理強い出来る物じゃないからねぇ。」

笑顔は置いておいて、ここは言うだけでも言って置くべきだろうか?しかし何度も言う物では無いだろうし…。

「ハレルヤさん?大丈夫ですか?」
「…はい。」
「誉めてくれようとしたのは判りましたから…。」
「…なら良いんですが…。」

笑顔か…。


ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

DollsGame-101.山茶花-

(*´∀`)マァ

閲覧数:166

投稿日:2010/09/02 17:12:32

文字数:1,397文字

カテゴリ:小説

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