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0.生徒会長初音ミク誕生
初音、と呼び止めたのは担任の教師だった。
ツインテールにされたくるぶしまで届く青緑色の癖のない髪が、彼女の動きに合わせてふわりと揺れ、美しい波を描く。
「はぇ?」
間の抜けた声を発し、キョロキョロと辺りを見渡して、確認するように自分の鼻先を押す。
痩身の少女の名を、初音ミクという。
「そうだ、お前だ。ちょっと来てくれ」
「は、はいっ!」
深く頷いて歩き出す教師の後ろを、トテトテとついて歩く。
連れて来られたのは生徒指導室。
ピキリ、と音を立ててミクの身体が固まった。
生徒指導室は、問題を起こした生徒が教師と一対一で指導を受ける、別名説教部屋。あわあわと焦るミクの脳裏には、あれやこれやと可能性が駆け巡っていた。
「あ、あの! あの! ごめんなさい! 黒板にネギ男さん描いたまま放って来てしまってごめんなさい! 机にネギ男さんの落書きをしてしまってごめんなさい! ネギ男さんのことばかり考えて先生の授業まったく聞いてなくてごめんなさい!」
怒られる前に自白してしまおうと、ミクは思い当たる節を指折り挙げる。
ごめんなさい、に合わせて頭が上下する度にピコピコと青緑の二つの尾が跳ねた。
「あ、あぁ、いや、そうじゃなくてな」
「ち、違うんですか? じゃあ、じゃあ、先生の教科書で作ってるネギ男さんのパラパラ漫画のことですか?」
「いやぁ、それでもなくて……。っていうか初音、先生の授業はそんなにつまらないか? ちょっと泣きそうだぞ……」
「ご、ごめんなさい……」
ホロリ、眼鏡の奥に光る涙。
しおしおと身体を縮めて、ミクは項垂れる。否定しないことに、担任がさらに傷付いていることには気がついていない。
「あー……、生徒指導室に呼んだが、別にお前を叱るために呼んだんじゃない」
とりあえず入れ、と促されて、ミクは初めての生徒指導室に足を踏み入れる。
狭い教室に置かれた勉強机を挟むようにして担任と向かい合って座ると、コホン、と担任がわざとらしく咳払いをする。
「初音、突然だが、生徒会長やらないか?」
「ふぇ?! 生徒会長ぉ?!」
ミクは大きな目を瞬かせ、素っ頓狂な声を上げる。
高校一年の十月。学校は次期生徒会の話題がチラホラ上がっていた。
この学校の生徒会は、選挙ではなく投票式だ。全校生徒に配られる投票用紙に生徒会会長、生徒会副会長、生徒会書記・会計に推薦する人物名を書き、統計する。
「上位三人のうちの一人の三年がな、駄々をこねたというか、涙ながらに生徒会長は勘弁してくれと言うからな、仕方がないから違う奴に頼んでみようということになってな」
「む、無理です!」
「もう一人の三年に頼んだら、面倒だと一蹴されて、取りつく島もなくてな」
「無理っ! 無理ですぅ!」
「それで、上位三人の最後の一人であるお前が生徒会長に、って話になってな」
「無理ですってばぁっ! わ、私が生徒会長なんて……」
「そう言うな、初音! お前なら出来る! やる前から無理だと言っていては、自分の可能性を潰すことになるぞ!」
「で、でもっ」
「頼む! もうお前しか居ないんだ、初音!」
担任がガタン! と机が大きく揺れるほど勢い良く手をつき、頭を下げる。
「あ、ぅ……」
ミクはオロオロとするばかりだ。
「な、頼む!」
ここで担任によるトドメの一声。
混乱にグルグルと渦を巻く瞳。所在なさげに挙げられた両手の指が何かに縋るように動かされるが、それが捕えるものはない。
担任のゴリ押しにより、ミクの小さな頭がコクン、と上下するのに、そう時間はかからなかった。
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出来立てオスカル
おにゅうさん&ピノキオPと聞いて。
お2人のコラボ作品「神曲」をモチーフに、勝手ながら小説書かせて頂きました。
ガチですすいません。ネタ生かせなくてすいません。
今回は3ページと、比較的コンパクトにまとめることに成功しました。
素晴らしき作品に、敬意を表して。
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