リヌちゃんが歌い始めてからもう2時間近く経っていた。休む事無くずっとずっと歌い続けて、止めても聞こえているのかすら判らなかった。ただ一心に、祈る様に、高い声が施設に響き渡っていた。

「救護班!急げ!」
「危ないから外に出ないで!」

ノアくんは画面の前で動画が差し止められない様にピアノを弾くかの如くキーを叩き続けている。外では【MEM】のBSから守る為に菖蒲さんや捕獲班の人達が必死で戦ってる。救護班の手伝い位しか出来なくてもどかしさを感じていた。

「退避!退避―――っ!」
「陽動部隊!!撤退!!急げ!!」
「りんご?どうしたの?」
「何か、外変じゃない?急に人が…。」

と、そう言い掛けた時、捕獲班の人が数名血相を変えて入り口に走り込んで来た。

「おい!ヤバイぞ!アーム来た!」
「スタンガンは?!」
「無理だ!効いてない!今カラスの兄ちゃんが残って止めてる!」
「羽鉦様か詩羽様はまだ戻らないか?!あいつ等とまともにやりあったら命が幾つ
あっても…!」

心臓がドクンと音を立てた。アームって…この前街で会ったあのヤバさむんむんのメカメカした奴だよね…?あの時確か菖蒲さんは使土君が逃がしてて…。

「りんご…?」

使土君は何故逃がしたの?私達が居たから?ううん、違う、確かあの時菖蒲さんが言ってた。

『悔しいが私では相性が悪過ぎます!さぁ貴女も!』

相性が悪いのに…菖蒲さんが残ってるのって…危ないんじゃないの?あんなの相手に一人で戦ったりしたら…!

「りんご?!りんご!!」
「おいっ!君っ!!止すんだ!!」

使土君も羽鉦さんも詩羽さんもまだ戻らない…ダメだよ…絶対一人で戦ったりしたら危ないよ!!暗い中、音を頼りに走った。途中に【MEM】のBSみたいな人が倒れてたりして凄く恐い。だけど恐いのは無視してひたすら走った。

「うわあああぁっ!!」
「班長!!班長!!…すぐ離脱して下さい!!」
「おい兄ちゃん後ろっ!」
「―――っ!!」
「菖蒲さんっ!」

暗闇に金属音が響いてBSの一人が崩れ落ちた。

「何だ…?!アームが…。」
「菖蒲さん!皆大丈夫ですか?!」
「りんごさん…?!何故貴女が…!」

目が暗いのに慣れていて助かった。はっきりでは無いけど顔形位は何とか判別出来る迄になってた。

「あのメカなら構造ちょっとは判ります!解体すれば無力化出来る筈です!」
「何を…!早く戻りなさい!」
「一人で戦ってたら菖蒲さんも危険です!せめて使土君が戻る迄は…!」
「おい!来たぞ!」

まだ足が震える、恐くない訳じゃない、すっごく恐い!逃げ出して、部屋の中でネムリと守られていたいけど!

「アイドルなめんなぁ――!!」

そんなの私のガラじゃない!

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

BeastSyndrome -103.恐怖なんて無視!-

アイドルなめんな!(`・Д・)

閲覧数:136

投稿日:2010/07/09 02:39:48

文字数:1,145文字

カテゴリ:小説

クリップボードにコピーしました